IBSと診断されたけど改善しない…長引く・油っこい食事で悪化する“胆汁性下痢”の可能性と対策を徹底解説
胆汁性下痢とは?――長引く下痢の意外な原因とその対策
「長年下痢に悩んでいる」「食事をするとすぐにお腹が痛くなる」「下痢止めが効かない」――そんな症状に心当たりがある方は、「胆汁性下痢」の可能性があります。
あまり知られていない病態ですが、正しく理解し、適切に対処することで、症状を改善し日常生活の質(QOL)を取り戻すことが可能です。
胆汁性下痢とは?―その仕組みと発症のメカニズム
胆汁は肝臓で作られ、胆嚢に蓄えられる消化液で、特に脂肪の消化・吸収に欠かせない役割を担っています。脂っこい食事を摂ると胆嚢から胆汁が小腸に分泌され、脂肪を乳化して吸収しやすくします。
通常、胆汁酸の約95%は小腸の終末部(回腸)で再吸収され、肝臓に戻されて再利用されます。しかし、何らかの原因でこの再吸収がうまくいかない、あるいは胆汁酸が過剰に分泌されると、大腸に大量の胆汁酸が流れ込みます。
胆汁酸は大腸粘膜を刺激し、水分分泌を促進、また腸の運動を活発にするため、結果として水分量の多い下痢が引き起こされます。これが胆汁性下痢の主な発症メカニズムです。
胆汁性下痢の主な症状
胆汁性下痢では、以下のような慢性的な症状が特徴です。
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長期間にわたる下痢
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食事のたびに下痢になる
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特に朝食後や脂っこい食事の後に悪化
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一般的な下痢止めや整腸剤、過敏性腸症候群(IBS)の薬が効きにくい
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脂っぽい便、悪臭の強い便が出る
腹痛や膨満感を伴うこともあり、長期化すると栄養吸収不良による体重減少や倦怠感が生じることもあります。
「体質だから」と長年あきらめている方もいますが、正しく対処すれば症状は改善可能です。
胆汁性下痢の主な原因
胆汁性下痢の背景には、以下のような要因があります。
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胆汁酸の過剰分泌:胆嚢摘出後や膵機能低下、腸内細菌の異常などにより胆汁酸の分泌調節が乱れる。
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胆汁酸の再吸収不全:腸炎や回腸の切除などにより再吸収機能が低下。
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腸粘膜の過敏性:胆汁酸への反応が過敏な体質。
形態的な異常がなく、機能的な問題として発症する場合もあります。
胆汁性下痢の診断と鑑別疾患
診断は、患者さんの症状や病歴を詳しく聞き取ることから始まります。特に以下のポイントが診断のヒントになります。
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長年続く下痢
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食事との明確な関連
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一般的な治療薬で効果が乏しい
必要に応じて、血液検査や**内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)**が行われます。これは、大腸がんや潰瘍性大腸炎など、似た症状を呈する重大な疾患を除外するためにも重要です。
胆汁性下痢の治療と日常でできる対策
胆汁性下痢の治療は、薬物療法を中心に、食事や生活習慣の見直しを組み合わせて行います。
薬物療法
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胆汁酸吸着剤:腸内の過剰な胆汁酸を吸着し、大腸への刺激を軽減します。
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抗下痢薬:症状に応じて併用されることがあります。
※薬の使用には副作用のリスクもあるため、医師の指導のもとで行うことが必須です。
食事療法
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脂質の摂取制限:脂っこい食事を控えることが重要です。
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腸に優しい食品の選択:バランスの取れた食事を心がけましょう。
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食物繊維・プロバイオティクスの活用:腸内環境の改善にも有効です。
生活習慣の改善
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水分補給や適度な運動
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ストレス管理も重要です。消化管はストレスの影響を受けやすいため、メンタルケアも対策の一環となります。
胆汁性下痢に関連する最新の知見
近年では、便中の胆汁酸を測定する新たな診断法や、**胆汁酸の再吸収を調整する新薬(例:エロビキシバット)**の研究も進んでいます。
これは主に便秘治療薬として使われていますが、胆汁酸と排便との関係を調整するという点で、将来的に胆汁性下痢への応用も期待されています。
「長年の下痢」から解放されるために――医療機関への相談を
胆汁性下痢は、放置しても自然に改善することは少なく、専門的な診断と治療が必要です。特に、長年の下痢や、薬が効かない下痢に悩まされている場合は、早めの受診が大切です。
近年では、オンライン診療に対応しているクリニックも増えており、遠方からでも相談可能な環境が整いつつあります。
「体質だから仕方ない」とあきらめる前に、一度専門医に相談してみましょう。