【医師監修】心身症と身体症状症の違いとは?ストレスが身体に現れるメカニズムと最新治療法を徹底解説|きだ内科クリニック(山形県米沢市)
【医師監修】心身症と身体症状症の違い|ストレスが「体の不調」として現れるメカニズムと治療法を解説
心と身体は密接に関わり合っています。
特に、心理的なストレスが体の不調として現れる病態には、**「心身症」と「身体症状症」**という2つの概念があります。
どちらも「心の問題が身体の症状に関係している」という点では共通していますが、
定義・診断基準・治療の焦点が異なります。
ここでは、その違いをわかりやすく整理し、現代医学における最新の理解と治療法を紹介します。
1. 心身症とは:心理的ストレスが「身体疾患」を悪化させる病態
**心身症(Psychosomatic Disease)**は、
日本心身医学会により「身体疾患の発症や経過に心理社会的な因子が深く関与する状態」と定義されています。
つまり、心身症はあくまで身体疾患であり、うつ病や神経症などの精神障害とは区別されます。
🔹心身症の代表例
-
過敏性腸症候群(IBS)
-
胃潰瘍、逆流性食道炎
-
高血圧、片頭痛
-
緊張性頭痛、気管支喘息 など
これらの疾患では、ストレス・不安・緊張などの心理的要因が、
発症・悪化・再発に深く関わっています。
🔹治療の基本
心身症の治療は、
-
**身体的治療(薬物療法・生活改善)**と
-
心理的治療(ストレスマネジメント・認知行動療法など)
を並行して行うことが原則です。
2. 身体症状症とは:症状への「過度なとらわれ」を特徴とする精神疾患
身体症状症(Somatic Symptom Disorder: SSD)は、
アメリカ精神医学会のDSM-5で定義された「精神疾患」です。
以前の「身体表現性障害(Somatoform Disorder)」が改訂され、
より現実的かつ包括的な診断概念となりました。
🔹診断の特徴
身体症状症では、実際に身体症状が存在し、その症状に対して
-
過剰な不安や恐怖
-
「病気ではないか」という思い込み
-
繰り返し検査や受診を求める行動
が6ヶ月以上続くことが特徴です。
DSM-5では、従来のように「医学的に説明できるかどうか」は診断要件ではありません。
つまり、症状の原因が明確であっても、「とらわれ」が強ければ身体症状症と診断されます。
🔹患者の苦痛は「現実のもの」
身体症状症の症状は、「気のせい」ではなく、
ストレスや不安が自律神経やホルモンバランスを通じて身体に影響した結果として現れる本当の苦痛です。
頭痛・腹痛・倦怠感・しびれなどが代表的な症状です。
3. 心身症と身体症状症の違いを整理
| 項目 | 心身症 | 身体症状症 |
|---|---|---|
| 定義 | 身体疾患に心理社会的要因が関与する状態 | 症状への過度なとらわれを特徴とする精神疾患 |
| 定義基準 | 日本心身医学会 | DSM-5(精神医学的診断基準) |
| 診断条件 | 身体疾患の存在が必須 | 医学的説明の有無を問わない |
| 中心となる病態 | 心理的ストレスが身体の病気を悪化 | 思考・感情・行動の過剰反応(とらわれ) |
| 代表的疾患 | IBS、胃潰瘍、緊張性頭痛、高血圧など | 全身の痛み、倦怠感、吐き気、しびれなど |
| 治療の主軸 | 身体+心理治療(心身医療) | 精神療法+認知行動療法(CBT) |
4. 現代の治療アプローチ:心と身体をつなぐ統合医療
🔹 心理療法
-
認知行動療法(CBT):最も有効とされる治療法。
症状に対する「破局的思考」や「回避行動」を修正し、症状へのとらわれを緩和します。 -
森田療法・ACT:症状を「なくす」より「共に生きる」ことを目指す心理的受容の治療。
🔹 薬物療法
併存する不安・抑うつにはSSRIなどの抗うつ薬を慎重に使用。
副作用への敏感さを考慮しながら少量から開始します。
🔹 セルフケア・生活改善
-
深呼吸・漸進的筋弛緩法・瞑想などのリラクゼーション法
-
ウォーキングなど軽い運動で自律神経を整える
-
感情や症状を日記に記録して客観視する
5. 総括:心と身体の境界を超えた医療へ
心身症は「身体の病気に心が影響を与える」病態、
身体症状症は「心の過剰反応が身体の苦痛を増幅する」病態です。
両者に共通するのは、心と身体が不可分であるという事実です。
医学の進歩により、心と身体の両面を治療するリエゾン医療(科を超えた連携)が今後ますます重要になります。
