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その抗生剤、必要ですか?|“効かない理由”と“使うべきタイミング”を医師が解説

[2025.05.28]

【医師が解説】かぜ・インフル・コロナに抗生剤は必要?

~使うべき症状・使わない方がよい理由をわかりやすく~

こんにちは、きだ内科クリニックです。
風邪や発熱で受診されたとき、こんなご質問をよくいただきます。

「抗生物質を出してもらえますか?」
「前に飲んだら治った気がするので、今回もお願いします」

でも、実はほとんどの風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症では、抗生剤は必要ありません
むしろ、「使わなくていいときに使ってしまう」ことのほうが、体にとってリスクになることもあるのです。

今回は、なぜそうなのか、そしてどんなときに抗生剤が本当に必要なのか、医学的根拠にもとづいて、わかりやすくご説明します。


🔶 そもそも抗生剤(抗生物質)は“細菌”にしか効きません

抗生剤は「細菌」による感染症を治療する薬です。
たとえば肺炎、膀胱炎、中耳炎、細菌性の扁桃炎などがそうです。

一方、風邪・インフルエンザ・新型コロナの原因はウイルス
ウイルスに対して抗生剤はまったく効果がありません

✅ 抗生剤が「効く/効かない」主な病気の一覧

病名 原因 抗生剤の効果
かぜ ウイルス ❌ 効かない
インフルエンザ ウイルス ❌ 効かない
新型コロナ ウイルス ❌ 効かない
扁桃炎 細菌/ウイルス ⭕ 症状と所見で判断
肺炎 細菌 ⭕ 効果あり
膀胱炎 細菌 ⭕ 効果あり

⚠️ 抗生剤を「必要ないとき」に使うと、体に悪いこともあります

抗生剤を“予防”のつもりで飲む方もいますが、これはおすすめできません。
理由は以下のとおりです。

❶ 腸内環境が乱れて下痢・腹痛の原因に

抗生剤は悪い菌だけでなく、腸内の「善玉菌」も殺してしまいます。
これによって下痢・便秘・食欲不振・腹部不快感などが起こることがあります。

❷ 耐性菌ができてしまう

抗生剤を不必要に使うと、体内に**効かない菌(耐性菌)**が増える恐れがあります。
将来、重い感染症になったときに「効く薬がない」という事態になるリスクも。

❸ アレルギーや副作用のリスク

発疹やかゆみ、吐き気、めまいなどの副作用、まれにアナフィラキシーショックといった重篤な症状を引き起こすこともあります。


🔶 それでも「飲んだら治った気がする」のはなぜ?

「以前、抗生剤を飲んだら治った気がする」というご経験があるかもしれませんが、これは、

  • ちょうど自然に回復するタイミングだった

  • 飲んだ薬は実は解熱剤や咳止めだった

  • もしくはそもそも抗生剤が必要な細菌感染だった

という可能性がほとんどです。
「なんとなく効いた気がする」ではなく、医師の診断が必要です。


🔶 では、どんなときに抗生剤が“必要”なの?

症状の種類と続いている期間から、ある程度の目安があります。

✅ 抗生剤が「原則不要」な症状と経過

症状 経過 抗生剤の必要性
のどの痛み、鼻水、咳 発症~7日目まで ❌ 不要
38℃前後の発熱 2~3日以内 ❌ 不要
咳が1~2週間残る 改善傾向あり ❌ 不要
味覚・嗅覚の異常(コロナ) 数日~数週間 ❌ 不要

⚠️ 抗生剤が「必要かもしれない」症状と経過

症状 経過・状況 考えられる疾患例
高熱が3日以上続く/いったん下がった熱が再上昇 インフル・コロナ後の二次感染 細菌性肺炎、気管支炎など
のどの腫れ+膿・飲み込めないほどの痛み 強い扁桃炎症状 細菌性扁桃炎
咳・痰が2週間以上続く/痰が黄色・緑・血混じり 息切れ・胸痛あり 細菌性気管支炎・肺炎
鼻水が濁って顔や頭が痛い 改善なく1週間以上 副鼻腔炎(蓄膿症)
排尿時の痛み・頻尿・血尿 急に悪化 膀胱炎、尿路感染症

🔶 まとめ:抗生剤は「必要なときに正しく使う」薬です

抗生剤は素晴らしい薬ですが、誰にでもいつでも使える万能薬ではありません。
風邪・インフルエンザ・コロナなどウイルス感染には基本的に必要なく、
「必要な場面で、適切な量を、適切な期間だけ使う」ことが大切です。

きだ内科クリニックでは、患者さん一人ひとりの症状や経過を丁寧に見極め、不要な抗生剤は処方せず、必要なときにはしっかりご説明して処方します。

不安なことがあれば、遠慮なくご相談ください。

お大事になさってください。

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