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下の血圧が高い原因とは?拡張期血圧だけ高い人が注意すべき病気と下げる方法

[2026.05.31]

「上の血圧は正常なのに、下の血圧だけ高い」「健康診断で拡張期血圧が高いと言われた」――このような状態は、医学的には孤立性拡張期高血圧と呼ばれることがあります。

 

拡張期血圧とは、心臓が拡張して血液を貯めているとき、つまり心臓が休んでいる瞬間に血管へかかる圧力のことです。下の血圧が高いということは、心臓が休んでいる間にも血管に強い圧力がかかり続けている状態を意味します。

 

日本高血圧学会の基準では、高血圧の診断基準は診察室血圧140/90mmHg以上、または家庭血圧135/85mmHg以上です。つまり、家庭で測った血圧で「下が85mmHg以上」が続く場合は、軽視せず血圧管理を始める必要があります。JSH2025では、降圧目標は原則として診察室血圧130/80mmHg未満家庭血圧125/75mmHg未満を目指す方向に整理されていますが、年齢・体調・腎機能・立ちくらみなどを考慮して個別に判断されます。

 

 

 

拡張期血圧が高い状態の定義と基準

 

血圧には2つの数字があり、それぞれ異なる意味を持っています。

 

血圧の種類 意味
収縮期血圧(上の血圧) 心臓が血液を送り出すときの圧力
拡張期血圧(下の血圧) 心臓が休んでいるときの血管内の圧力

 

たとえば血圧が「128/92mmHg」の場合、上の血圧は140mmHg未満であっても、下の血圧が90mmHg以上のため、診察室血圧では高血圧の範囲に入ります。家庭血圧では、下が85mmHg以上であれば高血圧域と考えます。

 

特に20代から50代の若年・中年層では、上の血圧はまだ正常でも、下の血圧だけが高くなることがあります。これは、太い血管の弾力は比較的保たれている一方で、手足や内臓に広がる細い血管、つまり末梢血管の抵抗が高まっている可能性を示します。

 

なぜ下の血圧だけが高くなるのか

 

下の血圧が高くなる大きな原因は、末梢血管抵抗の増加です。

 

末梢血管とは、心臓から離れた場所にある細い血管のことです。これらの血管が硬くなったり、ストレスや自律神経の影響で収縮したりすると、血液が流れにくくなります。その結果、心臓が休んでいる間も血管の中に圧力が残り、拡張期血圧が上昇します。

 

下の血圧だけが高い状態は、単なる一時的な数値異常ではなく、血管が硬くなり始めているサインであることがあります。とくに若い人や働き盛りの世代では、生活習慣、ストレス、睡眠不足、肥満、喫煙、飲酒などが複数重なって起こることが少なくありません。

 

拡張期血圧が高くなる主な原因

 

1. 塩分の摂りすぎ

 

塩分を摂りすぎると、体は血液中のナトリウム濃度を薄めるために水分をため込みます。その結果、血液量が増加し、血管にかかる圧力が高くなります。

日本高血圧学会は、減塩の目標として1日食塩6g未満を掲げています。外食、麺類の汁、加工食品などは塩分が多くなりやすいため注意が必要です。

 

2. 肥満・内臓脂肪

 

肥満、特に内臓脂肪型肥満は、拡張期血圧を上げやすい要因です。内臓脂肪が増えると、インスリン抵抗性や交感神経の活性化が起こりやすくなり、血管が収縮しやすくなります。

 

日本ではBMI25以上が肥満とされ、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの原因の一つとされています。

 

3. 運動不足

 

運動不足になると、血管のしなやかさが低下し、筋肉量も減少します。筋肉は血液を全身へ戻すポンプの役割を持つため、筋肉量が少ないと血流が悪くなり、末梢血管抵抗が上がりやすくなります。

厚生労働省の情報では、高血圧に対する運動療法として、毎日30分以上の中等度の有酸素運動が推奨されています。

 

4. ストレス・睡眠不足・自律神経の乱れ

 

慢性的なストレスや睡眠不足が続くと、交感神経が優位になります。交感神経が過剰に働くと、血管が収縮し、心拍数も上がりやすくなります。

特に、仕事の緊張や就寝前のスマートフォン使用が続いている人では、下の血圧が高く出ることがあります。

 

5. 喫煙・過度な飲酒

 

喫煙は血管を収縮させ、血管内皮を傷つけ、動脈硬化を進めます。ニコチンによる一時的な血圧上昇だけでなく、長期的にも血管の老化を早める要因になります。

 

飲酒も量が多いと血圧を上げやすくなります。厚生労働省は飲酒量を純アルコール量で把握することを示しており、ビール500mL(5%)は純アルコール約20gに相当します。

 

6. 睡眠時無呼吸症候群

 

いびきが大きい、睡眠中に呼吸が止まる、日中に強い眠気がある場合は、睡眠時無呼吸症候群が隠れていることがあります。

これは二次性高血圧の重要な原因の一つであり、夜間の低酸素や交感神経の活性化によって、血圧上昇を引き起こします。

 

7. 腎臓病や内分泌疾患

 

生活習慣を改善しても下の血圧が下がらない場合は、腎臓病、原発性アルドステロン症、甲状腺疾患などの背景疾患があることがあります。

また、痛み止めの一部や漢方薬、ステロイド薬などが血圧を上げる原因になることもあるため、注意が必要です。

 

下の血圧が高い場合に潜むリスク

 

「上の血圧が正常なら大丈夫」と考えるのは危険です。下の血圧が高い状態が続くと、血管の内側に負担がかかり、動脈硬化が進行しやすくなります。

 

家庭血圧が135/85mmHg以上になると、脳卒中や心筋梗塞の発症率が高くなることが示されています。特に若年者では、心血管イベントや脳卒中との関連が報告されています。

 

放置した場合に問題となる主な病気は以下の通りです。

起こり得る病気・障害 内容
動脈硬化 血管が硬く狭くなり、将来は上の血圧も高くなりやすい
脳卒中 脳出血、脳梗塞のリスクが上がる
心筋梗塞・狭心症 心臓の血管が詰まりやすくなる
心肥大・心不全 高い圧に耐えるため心臓が肥大し、機能が落ちる
慢性腎臓病 腎臓の細い血管が傷つき、腎機能が低下する
眼底出血 眼の細い血管に障害が起こり、視力障害の原因となる
認知機能低下 脳の微小血管障害が関与することがある

 

拡張期血圧を下げるための具体的な手順

 

家庭血圧を正しく測定するステップ

 

下の血圧は変動しやすいため、正しい方法で継続的に測定することが重要です。

  1. 適切な血圧計の準備
    信頼性の高い上腕式血圧計を用意します。
  2. 決まったタイミングでの測定
    朝(起床後1時間以内・排尿後)と夜(就寝前)の1日2回測定します。
  3. 安静状態の確保
    椅子に座って1〜2分間、リラックスした状態で安静にします。
  4. 正しい姿勢で測定
    会話をせず、足を組まず、2回測定してその平均を記録します。
  5. 継続と医師への相談
    5日以上、できれば1〜2週間記録し、受診時に医師へ提示します。

 

食生活の改善(減塩とDASH食)

 

拡張期血圧を下げる基本は1日6g未満の減塩です。以下の工夫を取り入れましょう。

  • 麺類の汁は残すようにする
  • 調味料は「かける」のではなく「つける」
  • だしや香辛料を活用して塩分を減らす
  • 加工食品(ハム、練り物など)を控える

 

また、血圧改善に有効なDASH食(高血圧予防食)を積極的に取り入れましょう。

 

食品群 おすすめの食品例
野菜・果物 ほうれん草、ブロッコリー、バナナ、キウイ(カリウムが豊富)
たんぱく質 魚、鶏むね肉、大豆製品(豆腐、納豆)
主食 玄米、全粒パン、オートミール
乳製品 低脂肪ヨーグルト、低脂肪牛乳

 

※腎臓病などでカリウム制限がある方は、必ず事前に医師へ相談してください。

 

運動習慣と体重管理

 

ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動を1日30分程度行うことで、血管の柔軟性が高まり、末梢血管抵抗の低下が期待できます。

 

また、BMI25未満を目指すことも重要です。体重が減ることで、血圧だけでなく血糖値や脂質の状態も改善します。

 

薬物療法が必要になるケース

 

生活習慣の改善を続けても、家庭血圧で下が85mmHg以上、診察室血圧で90mmHg以上が続く場合は、薬物療法が検討されます。

JSH2025に基づき、年齢や合併症(糖尿病、腎臓病など)に合わせて、カルシウム拮抗薬やARB、β遮断薬などが処方されます。特にストレスが強く交感神経が緊張している場合には、β遮断薬が有効なこともあります。自己判断で服用を中止せず、医師の指導に従いましょう。

 

受診を検討すべき目安

 

以下のような症状や状況がある場合は、循環器内科や内科を受診してください。

  • 家庭血圧で下が85mmHg以上の日が頻繁にある
  • 20代や30代で高血圧を指摘された
  • 頭痛、めまい、動悸、息切れなどの自覚症状がある
  • いびきが激しく、日中に強い眠気を感じる
  • 糖尿病や腎臓病の持病がある

 

※激しい胸の痛み、突然の激しい頭痛、手足のしびれ、ろれつが回らないといった症状がある場合は、直ちに救急医療機関を受診してください。

 

よくある質問

 

Q. 下の血圧だけ高いのは本当に危険ですか?

はい、危険です。上の血圧が正常でも、下が常に高いと血管への負担が蓄積され、将来的な脳卒中や心不全のリスクを高めます。

 

Q. 下の血圧をすぐに下げる方法はありますか?

一時的に高い場合は深呼吸をして安静にすることで落ち着くことがありますが、根本的な改善には継続的な生活習慣の見直しが不可欠です。

 

Q. 何科を受診すればよいですか?

まずは一般内科や循環器内科を受診してください。睡眠時無呼吸が疑われる場合は、睡眠外来のあるクリニックも選択肢となります。

 

まとめ

拡張期血圧(下の血圧)が高い状態は、心臓が休んでいる間も血管に強い圧力がかかっているという体からの警告サインです。「上は正常だから」と見過ごさず、まずは家庭での血圧測定と生活習慣の改善から始めましょう。

早期に適切な対策を講じることが、将来の重大な病気を防ぎ、大切な健康を守る第一歩となります。数値が気になる方は、お早めに医療機関へご相談ください。

 

執筆・監修:山形県米沢市 きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)

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