中途覚醒が続く方へ|不眠症だと思っていたら睡眠時無呼吸症候群(SAS)かもしれません
「寝つきは悪くないのに、夜中に何度も目が覚める」「朝まで眠った感じがしない」。こうした中途覚醒は、ストレスや加齢だけでなく、睡眠中の呼吸障害が背景にあることがあります。
近年は、不眠症と閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)が併存する状態を COMISA と呼び、独立した臨床課題として重視する考え方が広がっています。睡眠外来の睡眠時無呼吸患者では約30〜50%に不眠症状がみられ、OSAの人では睡眠維持困難、つまり中途覚醒が特に多いことが報告されています。COMISA は、単なる「不眠」と「いびき」の足し算ではありません。最近の報告では、COMISA の患者は、OSA単独や不眠単独に比べて、睡眠の質や日中機能などでより不利になりやすいことが示されています。
なぜ睡眠時無呼吸によって中途覚醒が頻発するのか
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)では、眠っている間に上気道が狭くなり、無呼吸や低呼吸が起こります。すると脳は呼吸を再開させるために短い微小覚醒を起こし、これが一晩に何度も繰り返されます。この反復する覚醒によって睡眠は細かく分断され、本人には「夜中に何度も目が覚める」「深く眠れない」という中途覚醒として感じられやすくなります。
さらに、OSAに伴う睡眠断片化と間欠的低酸素は交感神経活動を高め、夜間の過覚醒を助長します。つまり、呼吸の乱れが覚醒を生み、その覚醒しやすさがまた睡眠の質を悪くするという負の連鎖が起こりやすいのです。
日中の強い眠気がなくても睡眠時無呼吸は否定できない
睡眠時無呼吸症候群(SAS)というと「日中の強い眠気」を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、実際のOSAは症状の出方が多様で、エプワース眠気尺度(ESS)などの質問票だけでは拾いきれないことが知られています。強い眠気が出ない患者でも、「エネルギーが出ない」「何度も目が覚める」「十分に眠れていない感じがする」といった訴えを持つことがあります。
そのため、「昼間はそこまで眠くないからSASではない」と自己判断するのは危険です。中途覚醒が主訴の患者のなかにOSAが隠れていることは珍しくありません。
中途覚醒と併せてチェックしたい睡眠時無呼吸のサイン
中途覚醒が続く人で、以下の症状に心当たりがある場合は、睡眠時無呼吸を積極的に疑うべきです。2025年のガイドライン(VA/DoD)でも、睡眠の分断に加えて、いびきや夜間頻尿、日中の疲労などが主要な症状として挙げられています。
| 時間帯 | 注意すべき症状 |
|---|---|
| 睡眠中 | いびき、睡眠中の呼吸停止(家族による指摘)、息苦しさやむせ込みによる覚醒 |
| 起床時 | 頭痛、口の渇き |
| 日中・その他 | 夜間頻尿、日中の強い疲労感、集中力の低下 |
睡眠時無呼吸症候群の検査:在宅検査とPSGの違い
OSAが疑われる成人の標準的な検査は ポリソムノグラフィー(PSG) です。合併症が少なく、中等症から重症の可能性が高い場合には在宅睡眠時無呼吸検査(HSAT)も選択肢になりますが、判定が不十分な場合はPSGが必要となります。
| 検査の種類 | 特徴と推奨されるケース |
|---|---|
| ポリソムノグラフィー(PSG) | 入院して行う詳細な検査。重い不眠がある場合は、睡眠構造そのものを評価できるためPSGが推奨されます。 |
| 在宅睡眠時無呼吸検査(HSAT) | 自宅で行う簡易的な検査。合併症が少なく、典型的な症状がある場合に選択されます。 |
無呼吸と不眠の両面から進める治療アプローチ
OSA由来の中途覚醒が主な原因であれば、CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)などで呼吸イベントを減らすことが治療の柱になります。実際に、治療によって夜間の覚醒が有意に低下したという研究報告があり、呼吸の乱れを整えるだけで中途覚醒が改善する患者は少なくありません。
一方で、入眠困難や早朝覚醒は残りやすい傾向があり、こうした症状は治療の継続を妨げる要因にもなります。COMISA の場合は「CPAPだけで全て解決する」とは限らず、不眠そのものへの介入も並行して検討する必要があります。
不眠症治療の第一選択となる認知行動療法(CBT-I)
慢性不眠症の第一選択は、不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)です。睡眠衛生の説明だけでなく、以下の手法を組み合わせて行います。
- 刺激制御法(寝室と睡眠を結びつける)
- 睡眠制限法(寝床で過ごす時間を調整する)
- 認知的介入(睡眠に関する誤った思い込みを修正する)
- リラクゼーション法
COMISA 患者を対象にした試験では、CPAP開始前に CBT-I を行った群で、機器の使用時間が長くなり、初期の受け入れ率も良好であったと報告されています。不眠症状の改善と治療の継続に好影響が期待できます。
睡眠薬の使用は医師の管理下で適切に行う
COMISA では、睡眠薬の選び方に注意が必要です。ベンゾジアゼピン系薬は睡眠中の呼吸調節に悪影響を及ぼす可能性があり、OSA患者への投与は慎重さが求められます。観察研究では、急性呼吸不全のリスク上昇と関連した報告もあります。
一方で、オレキシン受容体拮抗薬などは、軽症から中等症のOSA患者において、呼吸状態を大きく悪化させなかったというデータがあります。ただし、これらも個人差があるため、最小有効量での使用が基本です。睡眠薬は自己判断で増量せず、睡眠医療に精通した医師の管理下で調整しましょう。
睡眠の質を左右する生活習慣の改善ポイント
睡眠時無呼吸がある人で肥満や過体重がある場合、減量や運動、行動支援を組み合わせた包括的な生活習慣の改善が強く推奨されます。体重管理は、無呼吸の重症度だけでなく、生活習慣病のリスク軽減にもつながります。
- 体位療法:仰向けで症状が悪化する場合、横向き寝を促すことで一定の効果が得られます。
- アルコールの制限:飲酒はいびきや無呼吸、酸素飽和度を悪化させます。就寝前の飲酒を控えることが、正確な評価と治療への第一歩です。
中途覚醒や不眠が続く場合の適切な受診先
「夜中に何度も目が覚める」「いびきを指摘される」「朝から体がだるい」といった症状が続く場合は、睡眠外来、呼吸器内科、耳鼻咽喉科など、睡眠呼吸障害を専門に扱う医療機関を受診しましょう。特に不眠が強い人ほど、簡易検査だけでなく PSG(ポリソムノグラフィー) による詳細な評価を受けることが大切です。
よくある質問(FAQ)
Q. 中途覚醒だけでも睡眠時無呼吸症候群の可能性はありますか?
十分にあり得ます。OSA患者の多くに睡眠維持困難がみられ、繰り返される微小な覚醒が中途覚醒として自覚されるためです。
Q. 日中の眠気がなければSASではないと考えて良いでしょうか?
そうとは限りません。OSAの症状は多様で、強い眠気よりも「慢性的な疲労感」や「エネルギー不足」「夜中の目覚め」が前面に出るケースがあります。
Q. 不眠が強い場合も家庭用の簡易検査で診断できますか?
不眠が重い場合は、簡易検査(HSAT)よりも、入院して睡眠構造を詳しく調べる PSG(ポリソムノグラフィー) が推奨されます。
Q. CPAP治療を始めれば中途覚醒はなくなりますか?
呼吸の乱れが原因の覚醒は改善が期待できます。ただし、入眠困難などが残る場合は、CBT-I などの不眠治療を組み合わせるのが効果的です。
まとめ
中途覚醒は単なる不眠として見過ごされがちですが、その裏に睡眠時無呼吸が隠れているケースは少なくありません。いびき、起床時の頭痛、日中の倦怠感を伴う場合は、呼吸と睡眠の両面から評価することが不可欠です。専門医療機関で適切な検査を受け、治療機器(CPAP)や認知行動療法、生活習慣の改善を組み合わせることで、質の高い睡眠を取り戻すことが可能です。
執筆・監修:山形県米沢市 きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)
