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原因不明の腹痛・脇腹痛・背中の痛みは神経の圧迫かも?ACNES・LACNES・POCNESをわかりやすく解説

[2026.03.11]

「CTもMRIも異常なしと言われたのに、お腹の同じ場所だけずっと痛い」「脇腹が刺すように痛むのに腎臓には異常がない」「背中の一点だけ強く痛む」。こうした原因不明に見える体幹の痛みの一部は、皮神経絞扼症候群(ACNES・LACNES・POCNES)で説明できます。

 

これらは下位胸椎由来の肋間神経の皮枝(主にT7〜T12)が、筋肉や筋膜を貫く部位で圧迫・刺激されて起こる神経障害性疼痛です。検査で見逃されやすい一方、正しく診断がつけば治療が可能な病気です。

 

 

 

ACNES・LACNES・POCNESの種類と違い

 

いずれも体幹の皮神経の絞扼という共通の病態を持ちますが、痛みの発生場所によって名称が異なります。

 

ACNES 前腹壁(お腹の前面)の痛み
LACNES 側腹部・フランク(脇腹)の痛み
POCNES 背骨の外側3〜5cm付近(傍脊柱・腰背部)の痛み

 

神経障害が起こる原因とメカニズム

 

これらの症候群は、神経が方向転換して線維性トンネルや筋膜の開口部を通過する際に、機械的な刺激を受けることで生じます。これにより神経に腫れや血流障害が起こり、痛みが生じると考えられています。

 

特にACNES(前腹壁皮神経絞扼症候群)では、神経が腹直筋の近くでほぼ90度向きを変えるため、圧迫や牽引の影響を強く受けます。手術、妊娠、運動、腹圧の上昇が引き金になることもありますが、半数以上は原因不明の特発性として発症します。

 

各症候群における症状の詳細

 

ACNES:前腹壁の指1本で示せる痛み

 

ACNESの典型的な症状は、前腹部のごく限られた範囲に生じる鋭い痛みです。患者様がここですと指1本で示せるほど痛みの場所がはっきりしており、起き上がる動作や咳、身体をひねる動きで悪化します。

 

また、腹部膨満感や吐き気、便通の変化といった偽内臓症状を伴うことがあり、一見すると消化器系の疾患(IBSなど)のように見えるため注意が必要です。

 

LACNES:脇腹からフランクにかけての限局痛

 

LACNESは、脇腹の特定の一点に集中する痛みが特徴です。体幹の回旋(回す動き)や側屈(横に曲げる動き)で痛みが増し、仰向けに寝ると軽くなる傾向があります。腎結石や肋間神経痛と間違われることも多く、原因不明の脇腹痛として長期間悩まれる方が少なくありません。

 

POCNES:背骨の外側に現れる一点の背部痛

 

POCNESは、背骨の突起から外側へ3〜5cmほど離れた場所に鋭い痛みが生じます。立位や動作で悪化しやすく、2cm四方の狭い範囲に強い圧痛(押した時の痛み)があるのが特徴です。若い女性に多く、ACNESを合併しているケースも報告されています。

 

画像検査(CT・MRI)で異常が見逃される理由

 

ACNES・LACNES・POCNESは、血液検査やCT・MRIなどの一般的な画像検査では直接映し出すことができません。現在の医療では臨床診断(身体診察)が中心であり、画像検査だけに頼ると「異常なし」と判断されてしまいます。

 

消化器や泌尿器、産婦人科、脊椎の病気を除外する過程で、これら皮神経由来の痛みの検討が後回しになりやすく、診断までに1年半以上の時間を要するケースも珍しくありません。

 

診断における4つの重要なチェックポイント

 

診断においては、画像よりも詳細な病歴の聞き取りと、丁寧な身体診察が不可欠です。

 

痛みの局在性 痛む場所を指1本でピンポイントに指し示せるかどうか。
Carnett徴候 圧痛点を押したまま腹筋に力を入れた際、痛みが変わらないか増強する場合は陽性。
ピンチテスト 痛む部位の皮膚と皮下組織をつまみ、左右差や感覚過敏があるか確認。
診断的ブロック 圧痛点に局所麻酔薬を注射し、痛みが半分以下に改善するかどうか。

 

治療の流れ:段階的なステップアップ治療

 

治療は体への負担が少ない方法から順に進めていく、ステップアップ型のアプローチが推奨されます。

  1. 局所麻酔注射(トリガーポイント注射)
    第一選択の治療であり、診断を確定させる役割も持ちます。1回の注射で長期的な改善が得られる場合もあります。
  2. パルス高周波療法(PRF)
    注射の効果が一時的な場合に行われる低侵襲な治療です。神経の興奮を抑え、手術を回避できる可能性があります。
  3. 神経切除術(外科的治療)
    保存的治療で十分な効果が得られない難治例に対して検討されます。長期的に見て高い有効性が報告されています。

 

何科を受診すれば良いのか

 

腹痛であれば消化器内科、背部痛であれば整形外科をまず受診するのが一般的です。しかし、検査で異常がないにもかかわらず特定の場所が痛む場合は、ペインクリニックや麻酔科、総合診療科での評価が推奨されます。

 

これらの疾患は、診察する医師が「その存在を知っているか」が診断の大きな分かれ目となります。

 

まとめ

ACNES・LACNES・POCNESは、腹部や背中の限局した痛みを引き起こす末梢神経の絞扼症候群です。「内臓に異常がないから気のせい」と諦める必要はありません。皮神経由来の痛みという視点を持つことが、適切な治療への第一歩となります。

 

よくある質問

 

ACNESは自然に治りますか?

自然に軽快する例もありますが、診断がつかないまま不要な検査を繰り返してしまうことが多い病気です。痛みが長引いている場合は、診断的注射による評価を検討してください。

 

CTやMRIでこれらの病気はわかりますか?

CTやMRIは、他の重大な疾患(内臓疾患など)を除外するために重要ですが、絞扼症候群自体を証明することは困難です。あくまで身体所見と麻酔への反応が診断の基本となります。

 

手術は必ず必要になりますか?

いいえ、必ずしも必要ではありません。まずは局所麻酔注射から開始し、効果が不十分な場合にのみ、低侵襲治療や手術が選択肢として浮上します。

 

IBSや椎間板ヘルニアとの違いは何ですか?

最大の共通点は痛みの範囲が非常に狭いことです。指1本で示せるほどの明確な圧痛点があることや、皮膚をつまんだ時の感覚異常は、内臓疾患や脊椎疾患とは異なる大きな特徴です。

 

執筆・監修:山形県米沢市 きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)

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