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大腸カメラ前の薬はどうする?糖尿病薬・血液サラサラの薬・サプリの注意点を医師が解説

[2026.05.16]

大腸カメラ、正式には大腸内視鏡検査を安全かつ正確に受けるためには、検査前の食事制限や下剤だけでなく、普段飲んでいる薬の管理がとても重要です。

 

大腸カメラでは、検査前から食事量が減り、当日は絶食となり、さらに腸管洗浄剤によって一時的に脱水傾向になることがあります。また、検査中にポリープが見つかった場合、その場で切除を行うこともあります。つまり、普段は必要な薬であっても、検査当日には低血糖や脱水、腎機能低下、出血、血栓などのリスクに関わることがあります。

 

特に注意が必要なのは、糖尿病薬、抗血栓薬、鉄剤・サプリメント、市販の痛み止めです。この記事では、大腸カメラ前に薬をどう扱うべきかを、患者さんにもわかりやすく解説します。

 

薬の中止・再開は、必ず医師の指示に従ってください。自己判断で薬を中止すると、脳梗塞・心筋梗塞・重度の高血糖・ケトアシドーシスなど、重大な合併症につながることがあります。

 

 

 

大腸カメラの精度を高めるために薬の確認が必要な理由

 

大腸カメラでは、通常の観察だけで終わる場合もあれば、組織を少し採取する生検、ポリープ切除、内視鏡的粘膜切除などを行う場合もあります。日本消化器内視鏡学会のガイドラインでは、通常の下部消化管内視鏡や粘膜生検と、ポリープ切除などの出血高危険度処置が区別されています。ポリープ切除は出血高危険度の内視鏡処置に分類されます。

 

そのため、薬の扱いは大腸カメラを受けるかどうかだけでなく、観察だけなのかポリープ切除を行う可能性があるのかによって変わります。検査前の診察では、お薬手帳、薬の実物、サプリメント、市販薬の情報を必ず持参しましょう。

 

糖尿病薬の服用における注意点:低血糖や脱水のリスク

 

糖尿病の薬は、大腸カメラ前に最も慎重な調整が必要な薬のひとつです。検査前日は食事内容が制限され、当日は絶食になります。この状態で普段どおりに血糖を下げる薬を使うと、低血糖を起こす可能性があります。一方で、薬を完全に中止すればよいという単純な話でもありません。特に1型糖尿病やインスリン治療中の方では、インスリンを不適切に中止すると高血糖やケトアシドーシスのリスクがあります。

 

糖尿病患者さんの大腸カメラ準備では、低血糖、乳酸アシドーシス、糖尿病性ケトアシドーシスなどが問題になり得るため、薬剤ごとの細かな調整が必要とされています。

 

検査当日の糖尿病薬は原則として医師の指示で中止・調整

 

食事をしない時間帯に、速効型インスリン、超速効型インスリン、スルホニル尿素薬、グリニド薬などを普段どおり使用すると、低血糖を起こす可能性があります。多くの医療機関では、検査当日の朝の経口血糖降下薬や食事に合わせて使うインスリンは中止または減量を指示します。

 

ただし、持効型インスリンや基礎インスリンは、患者さんの糖尿病のタイプによって扱いが異なります。特に1型糖尿病の方は、自己判断でインスリンを完全に中止してはいけません。必ず糖尿病主治医または検査担当医に確認してください。

 

SGLT2阻害薬による正常血糖ケトアシドーシスへの対策

 

SGLT2阻害薬は、尿から糖を排出して血糖を下げる薬です。代表的な薬には、フォシーガ、ジャディアンス、カナグル、スーグラ、ルセフィなどがあります。心不全や慢性腎臓病の治療にも使われることがあり、近年使用が増えています。

 

しかし、大腸カメラ前の絶食、糖質制限、下剤による脱水、身体的ストレスが重なると、血糖値がそれほど高くなくてもケトアシドーシスを起こす正常血糖ケトアシドーシスが問題になります。日本糖尿病協会の指針では、手術予定時には術前3日前から休薬し、十分に食事が取れるようになってから再開することが示されています。

 

内視鏡領域でも、ASGEはSGLT2阻害薬を予定内視鏡の3〜4日前から休薬することを提案しています。大腸カメラでは施設ごとの方針がありますが、SGLT2阻害薬を服用している方は、予約時点で必ず申告してください。

 

メトホルミンの服用と脱水・腎機能低下時のリスク

 

メトホルミンは2型糖尿病で広く使われている薬です。通常は安全性の高い薬ですが、下剤による脱水や腎機能低下が重なると、まれに乳酸アシドーシスが問題になることがあります。

 

大腸カメラ前の糖尿病薬管理に関する実践的な資料では、メトホルミンは透明な液体食を開始した時点で中止し、通常の食事が再開できたら再開するという対応が示されています。医療機関によっては前日から、腎機能が悪い方や高齢の方ではさらに早めの休薬を指示する場合があります。

 

GLP-1受容体作動薬使用時の胃内容物残存への注意

 

オゼンピック、リベルサス、トルリシティ、ビクトーザ、マンジャロなどのGLP-1関連薬は、血糖を下げるだけでなく、胃の動きを遅くする作用があります。そのため、検査前に絶食していても胃の中に内容物が残る可能性があり、鎮静剤を使用する場合には誤嚥リスク、また大腸カメラでは腸管洗浄不良に関わる可能性があります。

 

2024年以降の周術期GLP-1薬の取り扱いでは、多くの患者は継続可能とする考え方が出ていますが、胃腸症状がある方、増量中の方、高用量の方、胃排出が遅れやすい病気がある方では、24時間の液体食や検査延期などが検討されます。

 

以前のように一律で週1回製剤は1週間前に中止とする施設もありますが、現在は施設ごとに方針が分かれています。GLP-1関連薬を使用している方は、自己判断で中止せず、検査予約時に必ず薬剤名と最終使用日を伝えましょう。

 

血液をサラサラにする薬(抗血栓薬)の適切な管理

 

抗血栓薬とは、血栓を防ぐ薬の総称です。抗血小板薬と抗凝固薬に分かれます。日本消化器内視鏡学会のガイドラインでも、抗血栓薬は抗血小板薬と抗凝固薬を合わせた総称として扱われています。

 

代表的な薬には、以下があります。

分類 代表例
抗血小板薬 アスピリン、バイアスピリン、クロピドグレル、プラビックス、シロスタゾールなど
抗凝固薬 ワルファリン、イグザレルト、エリキュース、プラザキサ、リクシアナなど
EPA製剤など エパデール、ロトリガなど

 

これらの薬は、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症、心房細動、心臓弁膜症、ステント留置後などで処方される重要な薬です。中止すると出血リスクは下がるかもしれませんが、血栓ができて脳梗塞や心筋梗塞を起こす危険があります。

 

観察や生検のみであれば継続可能なケースが多い

 

日本消化器内視鏡学会の追補版では、通常の消化器内視鏡ではワルファリンやDOACを休薬せず施行可能であり、生検や出血低危険度処置でも条件を確認しながら休薬なしで行える場合があるとされています。

 

つまり、血液をサラサラにする薬を飲んでいるから大腸カメラができないというわけではありません。観察だけであれば継続可能なことも多くあります。

 

ポリープ切除を行う場合は薬剤ごとの休薬判断が必要

 

ポリープ切除は出血高危険度処置に分類されるため、抗血栓薬の扱いは慎重に決める必要があります。DOACでは、出血高危険度の内視鏡処置において、前日まで内服を継続し処置当日の朝から中止するという方針が示されています。ただし、腎機能や血栓リスクによって調整が必要です。

 

アスピリンやチエノピリジン系薬剤、ワルファリンを内服している場合も、薬の種類、併用薬、ステント留置後の期間、既往歴などによって方針が変わります。自己判断での休薬は危険ですので、必ず処方医と内視鏡医の両方に確認してください。

 

鉄剤や鉄分サプリメントが検査の視界に与える影響

 

鉄剤や鉄分入りサプリメントは、便を黒くし、腸管内に黒い残りを作ることがあります。これにより大腸粘膜の観察がしにくくなり、小さなポリープや病変の発見に影響する可能性があります。

 

複数の大腸カメラ前処置の案内では、鉄剤や鉄を含む薬・サプリメントを検査前に中止するよう案内されています。たとえば英国NHS系の案内では、検査5日前から鉄剤の中止が推奨されています。また、米国のガイドラインでも、鉄サプリは腸管洗浄の妨げになるため7日前から中止とされています。

 

日本の医療機関でも、鉄剤は検査3〜7日前から中止を指示されることが多いです。貧血治療中の方は、自己判断ではなく、検査担当医に確認してください。

 

腸に残りやすい食物繊維・青汁・炭サプリ・種子類

 

大腸カメラでは、腸の中をきれいにすることが検査精度を左右します。食物繊維が多い食品やサプリメントは腸に残りやすく、下剤を飲んでも完全に排出されにくいことがあります。

 

海外の医療機関の案内でも、検査3日前から低残渣食を開始し、全粒穀物、ナッツ、種子、生野菜、食物繊維を含む栄養補助食品などを避けるよう推奨されています。

 

特に注意したいものは、青汁、食物繊維サプリ、難消化性デキストリン、オオバコ、チアシード、ゴマ、キノコ、海藻、こんにゃく、炭サプリなどです。炭サプリは腸内を黒くすることがあり、観察の妨げになる可能性があります。検査前は健康によいから続けるよりも、検査のために一時的に控えることが大切です。

 

魚油(EPA/DHA)やビタミンEなどのサプリメントも申告が必要

 

EPA/DHA、魚油、クリルオイル、亜麻仁油、ビタミンEなどは、施設によって検査前の中止を指示されることがあります。米国の前処置案内では、検査3日前からビタミンEや魚油を中止するよう記載されている例もあります。

 

サプリメントは食品扱いのものも多いため、患者さん自身が薬として認識していないことがあります。しかし、出血リスクや腸管洗浄の質に関わることがあるため、サプリメント、健康食品、漢方薬、市販薬もすべて申告しましょう。

 

市販の頭痛薬や痛み止めに含まれる成分にも注意

 

市販薬の中にも、大腸カメラ前に注意が必要な薬があります。特に、バファリンAなど一部の解熱鎮痛薬にはアスピリンが含まれています。アスピリンは抗血小板作用を持つため、ポリープ切除を行う可能性がある場合には、医師が服用状況を把握しておく必要があります。

 

ただし、アスピリンを自己判断で中止すると血栓リスクが高まる方もいます。市販薬だから関係ないと考えず、必ず薬剤名を医師または看護師に伝えましょう。

 

自己判断で中止してはいけない重要な薬

 

大腸カメラ当日でも、一般的に継続が必要な薬があります。代表的なものは、降圧薬、心臓の薬、抗不整脈薬、抗てんかん薬、喘息の薬、甲状腺の薬などです。

 

多くの大腸カメラ前処置案内では、血圧の薬を含む通常の朝の薬は、検査の数時間前までに少量の水で服用するよう案内されています。海外の事例でも、血圧の薬は検査4時間前までに服用するよう記載されています。また、抗てんかん薬などを当日も継続するよう案内している医療機関もあります。

 

ただし、利尿薬、腎機能に影響する薬、一部の降圧薬は施設によって扱いが異なることがあります。必ず検査前の説明書と医師の指示を確認してください。

 

検査を安全に受けるために医師へ必ず伝えるべき項目

 

検査前の診察では、次の情報を必ず伝えましょう。

伝えること 理由
お薬手帳・薬の実物 薬剤名、用量、服用回数を正確に確認するため
糖尿病の有無 絶食・下剤で低血糖やケトアシドーシスのリスクがあるため
インスリン使用の有無 完全中止が危険な場合があるため
血液をサラサラにする薬 ポリープ切除時の出血と休薬時の血栓リスクを判断するため
サプリ・健康食品 出血や腸管洗浄不良に関わることがあるため
腎臓病・心臓病 脱水や薬剤調整に影響するため
過去の梗塞・ステント留置 抗血栓薬の中止が危険な場合があるため
鎮静剤希望の有無 GLP-1薬などによる誤嚥リスク評価に関わるため

 

大腸カメラと薬に関するよくある質問(FAQ)

 

大腸カメラ当日の朝、薬は飲んでよいですか?

薬の種類によります。降圧薬、心臓の薬、抗てんかん薬などは少量の水で服用することが多いですが、糖尿病薬や一部の抗血栓薬は調整が必要です。検査前に渡された説明書を確認し、不明な場合は必ず医療機関へ連絡してください。

 

血液をサラサラにする薬を飲んでいると大腸カメラは受けられませんか?

受けられることが多いです。観察のみであれば継続できる場合もあります。ただし、ポリープ切除を行う場合は出血リスクが上がるため、薬剤ごとの判断が必要です。自己判断で中止するのは危険です。

 

サプリメントも伝えた方がよいですか?

必ず伝えてください。鉄分、食物繊維、青汁、魚油、EPA/DHA、ビタミンE、漢方薬などは、腸管洗浄や出血リスクに関わることがあります。

 

糖尿病薬をうっかり飲んでしまった場合はどうすればよいですか?

すぐに検査先へ連絡してください。低血糖を防ぐために血糖測定や対応が必要になる場合があります。自己判断で糖分を摂ると検査に影響することもあるため、必ず指示を受けましょう。

 

薬を中止したあとの再開はいつですか?

薬の種類と処置内容によって異なります。観察のみなら検査後に再開できることもありますが、ポリープ切除後は出血リスクを見ながら再開時期を決めます。糖尿病薬などは、食事や水分が十分に取れるようになってから再開するのが原則です。

 

まとめ:薬の管理は自己判断せず事前に相談を

大腸カメラ前の薬の管理は、検査の安全性と精度を大きく左右します。糖尿病薬は低血糖やケトアシドーシス、抗血栓薬は出血と血栓、鉄剤やサプリメントは観察不良や出血リスクに関わります。

 

一方で、降圧薬や心臓の薬など、中止しない方が安全な薬もあります。大切なのは、自己判断で飲まない・やめない・迷ったら必ず相談することです。

 

大腸カメラを受ける前には、お薬手帳、市販薬、サプリメント、健康食品の情報をすべて持参し、検査担当医に正確に伝えましょう。それが、見落としの少ない正確な検査と安全なポリープ切除につながります。

 

執筆・監修:山形県米沢市 きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)

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