認知行動療法(CBT)とは?効果・仕組み・内科診療での活用法を医師監修で解説|きだ内科クリニック
【医師監修】認知行動療法(CBT)とは|仕組み・適応・内科診療での活用法までわかりやすく解説
認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy: CBT)は、私たちのものの受け取り方・考え方(認知)と行動に焦点を当て、そこへ働きかけることでストレスや不安、抑うつなどのつらい症状を軽減する、エビデンスが最も蓄積された構造化心理療法です。うつ病・不安症・強迫症はもちろん、過敏性腸症候群(IBS)や慢性痛など心身相関の不調にも応用が広がっています。
Ⅰ. CBTの基礎:理論とエビデンス
CBTは、エリスの論理療法、ベックの認知療法を起源に、行動療法と統合して発展しました。ガイドラインでも第一選択として推奨されることが多く、短期・目標志向・構造化が特徴です。専門的トレーニングを要しつつも、内科など非精神科領域でも基礎概念を取り入れて診療の質を高めることが可能です。
Ⅱ. 診断を越えて使えるCBT:統一プロトコル(UP)
近年は、疾患カテゴリーを横断する**Trans-diagnostic(診断横断)**の考え方が注目されています。
**統一プロトコル(Unified Protocol: UP)**は、うつ病・不安症などを「感情に圧倒され生活が立ち行かない状態」と捉え、感情との付き合い方のスキルを鍛えることで改善を図ります。
内科外来でも、IBS・慢性痛・慢性疾患に伴う不安/抑うつなどに有用と報告されています。
Ⅲ. 内科診療で実践しやすいCBTの導入法
短時間診療でも活用できる簡易形式を組み合わせると効果的です。
1) 心理教育/CBTアプローチ(教育的介入)
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何が起きているかを図解で説明(出来事→認知→感情→身体→行動の悪循環)
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「考え方のクセ」が気分や行動を増幅する仕組みを共有し、患者の主体的な理解と納得を促します。
2) アシスト付きセルフ・ヘルプ
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書籍・ワークブック・デジタル教材(C-CBT)を自習+外来で短い助言
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軽度~中等度の抑うつ・不安に適し、医師の負担を増やさず継続を支援できます。
Ⅳ. 日常診療で使えるCBTの基本技法
1) 行動活性化(Activity Scheduling)
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活動記録表で1週間の行動と**快・達成感(P/M)**を可視化
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「できたこと」を増やす小さな行動目標を設定し、悪循環を反転させます。
2) 認知再構成(自動思考の同定)
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症状が強まった場面(状況)/気分(0–100%)/自動思考を3コラムで記録
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証拠と反証を検討し、よりバランスのとれた考えを育てます。
3) リラクセーション(腹式呼吸・筋弛緩)
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息苦しさ・筋緊張など身体の不安反応を下げ、
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**「自分でコントロールできる」感覚(自己効力感)**を高めます。
4) 薬物療法との併用
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治療効果の増強/服薬アドヒアランス向上/再発予防に寄与。
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副作用への不安も認知面への介入で低減できます。
Ⅴ. CBTが機能する理由:認知行動モデル
CBTの中核は認知行動モデル。出来事に対する自動思考が感情・身体反応・行動へ波及し、悪循環をつくります。
認知(見方)と行動は変えやすいため、ここに介入して感情や身体反応の二次的改善を狙います。
治療は、協働的経験主義(一緒に検証)と導かれた発見(ソクラテス式問答)、そしてホームワークで構造化します。
Ⅵ. 第三世代のCBT:プロセス重視とマインドフルネス
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MBCT/ACT/DBTなどは、認知内容より認知プロセスと機能に注目。
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マインドフルネスで「今ここ」に注意を向け、とらわれから距離をとる練習を行います。
Ⅶ. 対象・形式・アクセス
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個人CBT:最も効果が高い(30分~、6–20回が目安)
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併用:薬物療法+CBTで再発予防・離脱防止
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セルフ・ヘルプ/オンライン(C-CBT):提供資源が限られる地域でも実施可能
当院では、心身相関が疑われるケースで内科的評価と併行し、必要に応じて心療内科への紹介を行い、適切な心理療法(CBTなど)につなぐ体制を整えています。
まとめ|CBTは「再現性が高いストレス対処スキル」
認知と行動への小さな介入が、気分・身体反応・生活機能を好転させます。
内科外来でも導入可能な心理教育・セルフモニタリング・行動活性化・簡易認知再構成から始め、必要時は専門の心理療法へ。
エビデンスに基づくCBTで、再発しにくいセルフマネジメント力を育てましょう。
