【医師監修】残便感(便が出切らない)原因と治療|大腸内視鏡による精密検査とストレス性便秘への対応【きだ内科クリニック】
【医師監修】残便感とは?便が出切らない原因と考えられる病気・治療法を徹底解説
「トイレに行ってもスッキリしない」「まだ便が残っている気がする」——
その不快な症状は**残便感(ざんべんかん)**と呼ばれます。
残便感とは、排便を終えた後も便が出し切れていないように感じる状態を指し、
単なる便秘だけでなく、過敏性腸症候群(IBS)や大腸がんなどの病気が隠れている可能性もあります。
早期に原因を特定し、適切に対処することが大切です。
1. 残便感の主な原因とメカニズム
残便感は、「便が実際に直腸内に残っている場合」と「脳が誤って“残っている”と感じる場合」の2つの原因に分類されます。
🔹 A. 機能性・精神的な要因(IBS・ストレス関連)
1. 過敏性腸症候群(IBS)
IBSは腸に明確な異常が見られないにもかかわらず、腹痛や便通異常、残便感を引き起こす機能性疾患です。
-
便秘型IBS(IBS-C):ストレスで腸の動きが低下し、硬い便が出にくくなる。排便してもスッキリせず、残便感を伴うことが多い。
-
混合型IBS(IBS-M):下痢と便秘を繰り返すタイプで、便秘期に残便感が強く現れます。
-
心因性要因:緊張や不安が腸の神経を刺激し、排便リズムが乱れる「脳腸相関」の乱れによって残便感が増悪します。
2. 痙攣性便秘・直腸の知覚過敏
腸がけいれんするように収縮して便がうまく排出されない「痙攣型便秘」も、残便感の典型的な原因です。
また、直腸の感覚が過敏になると、実際には便が残っていなくても「残っている」と感じやすくなります。
🔹 B. 器質的・解剖学的な要因(病気が隠れている場合)
1. 大腸がん・直腸がん
直腸にがんができると、通過障害によって便が出にくくなるため、残便感が強く出ます。
「出し切れない」「便が細くなった」「血便がある」といった症状を伴う場合は、大腸内視鏡検査が必須です。
2. 痔(内痔核・脱肛)
いぼ痔が進行して膨らむと、便の通り道を物理的に狭め、排便後も便が残っているように感じます。
3. 直腸瘤(特に女性)
出産や加齢で直腸の壁が弱くなり、膣側へ突出した部分に便が溜まるため、排便後も残便感が続きます。
4. 直腸手術後の排便障害
直腸がん手術後は、便をためる機能が低下するため、残便感や頻回の排便が起こりやすくなります。
2. 残便感の診断と検査
残便感の原因は多様なため、器質的疾患を除外する検査が重要です。
🔹 主な検査項目
-
大腸内視鏡検査:大腸がんや炎症性疾患の有無を確認
-
腹部超音波・CT:腸閉塞や腫瘍などの構造異常を評価
-
直腸指診:肛門・直腸の腫瘤や脱肛の確認
これらの検査で異常が見つからない場合、IBSや機能性便排出障害の可能性が高まります。
3. 残便感の治療法と改善アプローチ
🔹 A. 機能的・心因性の残便感への治療
1. 心理療法・ストレスケア
-
認知行動療法(CBT):ストレスや不安による腸の過敏反応を抑える
-
リラクゼーション療法・深呼吸法:自律神経の安定に効果的
2. バイオフィードバック療法
肛門や骨盤底の筋肉をセンサーで可視化しながらトレーニングし、正しい排便リズムを再学習します。
特に、排便協調運動障害や直腸過敏に効果が証明されています。
3. 排便感覚訓練
直腸内にバルーンを入れて便意を我慢する訓練を繰り返し、
「直腸の過敏性」を改善して便をためる力を取り戻す方法です。
4. 漢方薬の併用
腸の緊張を和らげる**桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)**などが、
「しぶり腹」や残便感の改善に有効とされています。
🔹 B. 器質的疾患が原因の場合の治療
-
大腸がん・直腸瘤:内視鏡治療や手術が必要
-
痔核・脱肛:軟膏・注射・手術で治療可能
-
直腸術後の排便障害:食事指導・リハビリ・薬物療法を組み合わせて改善を図ります。
4. 医療機関を受診すべきサイン
以下のような症状を伴う場合は、大腸疾患の早期発見のためにも早めの受診が必要です。
-
残便感が2週間以上続く
-
血便や便の形の変化(細い便など)がある
-
腹痛・腹部膨満感が続く
-
体重減少や夜間の腹痛を伴う
-
家族に大腸がんの既往がある
5. まとめ:残便感は「放置せず」原因を見極めることが大切
残便感は、単なる便秘やストレスのサインにとどまらず、
大腸がんなど命に関わる疾患の初期症状であることもあります。
まずは、大腸内視鏡検査で原因を明確化することが第一歩。
そのうえで、IBSや機能的要因が考えられる場合は、
生活習慣・ストレスケア・専門的訓練を組み合わせた総合的な治療が有効です。
当院では、大腸内視鏡検査で器質的疾患の有無を精密に確認し、問題がなければ下剤・整腸薬・生活指導による排便コントロールを行います。機能性・心因性の関与が疑われる場合は、必要に応じて心療内科(連携医療機関)へ適切にご紹介し、症状改善まで一貫してサポートします。
