大腸ポリープの病理結果を解説|腺腫・高度異型・粘膜内がん(Tis)の違い
【病理結果の見方】腺腫・高度異型・粘膜内がんの違い(大腸ポリープ)
大腸内視鏡でポリープを切除した後、病理結果に「腺腫(アデノーマ)」「高度異型(High-grade dysplasia / High-grade atypia)」「粘膜内がん(mがん / Tis)」と書かれていて、不安になった方も多いと思います。
結論から言うと、これらの違いは主に①細胞の乱れ(異型)の強さと②深く入り込んでいるか(浸潤の有無)です。多くのケースでは、内視鏡で病変を取り切れていれば治療が完結することも少なくありません。※最終的な方針は、切除の状態(取り切れているか等)も含めて主治医と確認しましょう。
腺腫(アデノーマ / Adenoma)とは
腺腫の定義
腺腫は良性腫瘍で、大腸ポリープでよく見られるタイプです。放置すると年単位で大きくなり、将来的にがん化する可能性があるため「前がん病変」として扱われます。
腺腫の特徴(病理用語での位置づけ)
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Group分類:日本の生検組織診断分類ではGroup 3に相当することが一般的です。
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異型度(=がんに近い度合い)で2つに分類
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低異型度腺腫(low grade):乱れが軽度。進行は比較的ゆっくりなことが多い。
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高異型度腺腫(high grade):乱れが強く、がんに近い境界領域として扱われます。
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高度異型(High-grade atypia / High-grade dysplasia)とは
高度異型の定義
「高度異型」は、細胞の形や構造の乱れが強い状態を示す病理学的な表現です。腺腫の中でもがんに近いもの、または「がんを強く疑うが確定が難しい」など、境界領域の意味合いで用いられることがあります。
高度異型の特徴
- Group分類:Group 4(がん疑い)に相当することが多い一方、施設によっては「高異型度腺腫(Group 3の範囲)」として表現される場合もあります。
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臨床的な扱い:実際の診療では、粘膜内がん(非浸潤のがん)と同等に慎重に扱うことが一般的です。
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Vienna分類(国際分類):高度異型腺腫や上皮内癌(粘膜内がん相当)などをまとめてカテゴリー4(非浸潤性高度異型腫瘍)と扱います。
粘膜内がん(mがん / Intramucosal carcinoma / Tis)とは
粘膜内がんの定義
がん細胞が粘膜(m)にとどまり、その下の粘膜下層(SM)へ入り込んでいない早期の段階を指します(Tis)。
粘膜内がんの特徴
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Group分類:一般にGroup 5(がん)
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転移リスクの考え方:大腸では、がんが粘膜内に限局している限り、リンパ節転移はきわめて起こりにくいと考えられています。そのため、内視鏡で完全切除できていれば追加手術が不要となることが多いです。
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日本と欧米での用語差:日本は細胞の異型が強ければ浸潤がなくても「がん」と診断する一方、欧米では浸潤して初めて「がん」とする傾向があり、日本の「粘膜内がん」が欧米では「高度異形成(High-grade dysplasia)」と表現されることがあります。
3つの違い早見表
| 用語 | 良性/悪性の位置づけ | Group分類(目安) | 状態のイメージ | 転移リスクの目安 |
|---|---|---|---|---|
| 腺腫 | 良性(前がん) | Group 3 | 異型は軽度〜中等度 | 基本的に問題になりにくい |
| 高度異型 | 境界領域(がんに近い) | Group 3〜4 | 異型が強い/がん疑い | 多くは低い(病変の条件で評価) |
| 粘膜内がん(Tis) | 悪性(早期) | Group 5 | がん細胞はあるが粘膜内に限局 | 原則として極めて低い |
治療方針への影響
腺腫・高度異型・粘膜内がんは、いずれも内視鏡的切除(ポリープ切除、EMR、ESDなど)の対象になります。重要なのは病名だけでなく、病理結果に記載される次の点です。
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取り切れているか(切除断端)
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深く入り込んでいないか(粘膜下層SMへの浸潤)
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脈管侵襲(リンパ管・血管への入り込み)の有無
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病変の大きさ・形、分化度 など
これらを総合して、「内視鏡治療で完結できるか」「追加治療や経過観察はどうするか」を判断します。結果の説明で分からない点は、遠慮なく医師に確認してください。
執筆・監修:山形県米沢市 きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)
