2026年の麻疹(はしか)流行に注意|ワクチンを受けるべき人・年代別リスクを医師が解説
2026年、日本国内で麻疹(はしか)の報告数が急増しています。麻疹は昔の子どもの病気ではなく、現在は10代から40代の活動世代にも広がっており、通勤・通学・旅行・職場・学校・医療機関などを通じて感染が拡大する可能性があります。国立健康危機管理研究機構(JIHS)の速報では、2026年第16週時点で362例と増加しており、4月時点で2025年の年間累計をすでに上回っています。
2026年の麻疹流行状況:海外からの持ち込みと国内感染の拡大
2026年の流行で重要なのは、海外からの輸入例だけでなく国内での感染症例が多いという点です。第16週時点の報告数のうち、推定感染地域が国内とされた症例は全体のおよそ7割を占めています。一方で、国外感染例ではインドネシア、ニュージーランド、インドなどを推定感染地域とする報告がみられます。
年齢別では、2026年第16週時点で15〜49歳が全体の83%を占めています。今回の麻疹流行は乳幼児だけの問題ではなく、学校、職場、家庭、旅行先で人と接する機会が多い活動世代に強く関係しているのが特徴です。
麻疹(はしか)の基礎知識:感染力と重症化のリスク
麻疹は、麻疹ウイルスによる急性の全身感染症です。感染経路は空気感染、飛沫感染、接触感染で、免疫を持たない人が感染するとほぼ100%発症するとされています。発症前から強い感染力があり、発症日の1日前から解熱後3日間を経過するまで周囲に感染させる可能性があります。
症状は、感染から約10日後に風邪に似た症状で始まります。その後、2〜3日発熱が続き、いったん熱が下がりかけた後に39℃以上の高熱と発疹が出現します。肺炎や中耳炎を合併しやすく、脳炎や死亡に至るケースも1,000人に1人程度の割合で存在します。
麻疹の怖さは急性期だけではありません。感染後は一時的に免疫機能が低下し、他の感染症にかかりやすくなるほか、数年〜十数年後に亜急性硬化性全脳炎という重い中枢神経疾患を発症することもあります。
麻疹予防の基本:MRワクチン2回接種の重要性
麻疹は、手洗いやマスクだけでは十分に予防できません。最も有効な予防策は、麻疹含有ワクチンであるMRワクチンを合計2回接種することです。1回の接種で95%程度の人が免疫を獲得できますが、2回接種により、1回目で免疫がつかなかった人にも確実に免疫をつけることができます。
2回接種には、免疫の獲得、時間の経過による免疫低下の防止、接種機会の補完という3つの意味があります。2回接種後に感染することはまれですが、万が一発症しても症状が軽くなり、周囲へ感染を広げるリスクを下げることが期待されます。
2026年に麻疹ワクチンを受けるべき対象者
以下の条件に当てはまる方は、母子健康手帳や接種記録を確認してください。2回接種が確認できない場合は、医療機関に相談して追加接種を検討しましょう。
| 対象カテゴリー | 詳細と対応 |
|---|---|
| 1歳児・小学校入学前 | 定期接種の対象期間内です。第1期(1歳)および第2期(入学前1年間)を逃さず、早めに接種してください。 |
| 2000年4月1日以前生まれ | 2回の定期接種が行われていない可能性がある世代です。10代〜40代を中心に流行しているため、接種記録の確認が特に重要です。 |
| 海外渡航を予定している方 | 海外では大きな流行が報告されている国があります。渡航の2週間前までに接種を検討することが推奨されます。 |
| 対人接触の多い職業 | 医療・保育・教育・交通・観光業などに従事する方は、不特定多数と接触するため、2回接種の確認が必須です。 |
| 妊婦や乳児の同居家族 | 妊婦はワクチンを接種できません。家庭内への持ち込みを防ぐため、周囲の家族が免疫を持つことが重要です。 |
年代別に見る麻疹ワクチン接種状況とリスク
日本の麻疹ワクチン制度は時代によって変化してきたため、出生年によって接種機会が異なります。以下の表を参考に、自身のリスクと対応を確認してください。
| 生年月日 | 2026年時点の目安 | 制度上の接種機会 | リスクと対応 |
|---|---|---|---|
| 1972年9月30日以前生まれ | おおむね53歳以上 | 定期接種なし | 自然感染で免疫を持つ人も多い一方、感染歴が不確実な人は免疫がない可能性があります。 |
| 1972年10月1日〜1990年4月1日 | おおむね36〜53歳 | 定期接種1回のみ | 1回接種世代です。2回目の機会がなかったため、現在の流行で特に注意が必要です。 |
| 1990年4月2日〜2000年4月1日 | おおむね26〜36歳 | 1回接種+特例追加あり | 中学・高校時代に追加機会がありましたが、実際に2回受けたかどうかの個人差が大きいです。 |
| 2000年4月2日以降生まれ | おおむね26歳以下 | 定期接種2回 | 予定通り2回接種していればリスクは低めですが、受け忘れがないか記録を確認してください。 |
接種歴が不明な場合の対応
過去にはしかにかかったという記憶があっても、検査で確認された記録がなければ他の疾患の可能性があります。確実な記録がない場合は、医師と相談して抗体検査またはワクチン接種を検討してください。
過去に麻疹にかかったことがある人が重ねて接種しても、副反応が増強するわけではありません。そのため、履歴があいまいな場合は、検査を省いて直接ワクチンを接種するという選択も可能です。
妊娠中・免疫抑制中の方の注意点
MRワクチンは弱毒生ワクチンであるため、妊娠中の方や免疫機能に異常がある方、免疫抑制治療を受けている方は接種できません。妊娠を予定している女性は、接種後2か月程度の避妊が必要です。
自身が接種できない状況にある場合は、同居家族がワクチンを接種して家庭内の防波堤となることが、最も確実な感染予防対策となります。
麻疹患者と接触した可能性がある場合
麻疹患者と接触した可能性がある場合、特にワクチン未接種や1回接種のみの方は、速やかに医療機関または保健所へ連絡してください。接触から72時間以内にワクチンを接種することで、発症を予防できる可能性があります。
MRワクチン供給不足に伴う特例措置
ワクチンの供給制限により、令和6年度内に定期接種を受けられなかったお子さんを対象に、接種期限の延長が行われています。令和9年3月31日まで公費で受けられる特例があるため、対象となる方は自治体の情報を確認してください。
麻疹を疑う症状があるときの受診方法
発熱、発疹、咳、鼻水、目の充血などがあり、麻疹が疑われる場合は、以下の手順で受診してください。
-
医療機関へ電話相談
直接クリニック等へ行かず、必ず事前に電話で症状を伝え、受診の可否を確認してください。 -
受診指示の確認
感染力が非常に強いため、指定された時間や入り口を利用するなど、医療機関の指示に従ってください。 -
移動手段の確保
周囲への二次感染を防ぐため、公共交通機関の利用は可能な限り避け、自家用車等を利用してください。
よくある質問
大人でも麻疹ワクチンは必要ですか?
必要になることがあります。特に2000年4月1日以前生まれで2回接種の記録がない方は、MRワクチンの追加接種を検討してください。対人業務に従事している方は優先度が高いです。
1回接種していれば十分ですか?
1回だけでは免疫がつかなかったり、時間の経過で免疫が弱まったりすることがあります。確実な予防のためには、2回接種が推奨されています。
2回接種していても感染しますか?
まれに感染することもあります。ただし、2回接種済みであれば発症リスクや重症化リスクが大幅に軽減され、周囲へ感染を広げる可能性も低くなります。
妊娠中にMRワクチンは打てますか?
いいえ、打てません。胎児への影響を考慮し、妊娠中の接種は禁止されています。妊娠を希望する場合は妊娠前に接種を済ませるようにしてください。
接種費用はどのくらいですか?
子どもの定期接種は原則公費(無料)です。大人の任意接種は自費となりますが、自治体によっては抗体検査や接種費用の助成を行っている場合があるため、お住まいの地域の保健所へ確認してください。
まとめ:2026年の麻疹対策は2回接種の確認から
2026年の流行では、成人も自分は大丈夫とは言えない状況です。最も重要な対策は、母子手帳などでMRワクチンの2回接種記録を確認することです。麻疹には特効薬がありません。ワクチンによる予防こそが、自分自身と大切な家族を守る唯一の手段です。
執筆・監修:山形県米沢市 きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)
