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GLP-1作動薬使用中の胃カメラは要注意|オゼンピック・リベルサス・マンジャロ使用中の方へ

[2026.05.07]

近年、糖尿病治療や肥満症治療のために、GLP-1受容体作動薬GIP/GLP-1受容体作動薬を使用している方が増えています。代表的な薬には、リベルサス、オゼンピック、ウゴービ、ビクトーザ、トルリシティ、マンジャロ、ゼップバウンドなどがあります。日本で使用されるGLP-1関連薬として、KEGG MEDICUSにもセマグルチド製剤のウゴービ、オゼンピック、リベルサス、チルゼパチド製剤のマンジャロ、ゼップバウンドなどが掲載されています。

 

これらの薬は、血糖コントロールや体重管理に有効な一方で、胃の動きをゆっくりにする作用があります。そのため、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)を受ける際に、通常の絶食だけでは胃の中が空になっていないことがあります。

 

特に鎮静剤を使った胃カメラでは、胃の中に食べ物や液体が残っていると、検査中に内容物が逆流して気道に入る誤嚥のリスクが問題になります。また、胃内に食物残渣があると胃粘膜を十分に観察できず、検査の中止や再検査につながることがあります。

 

 

 

GLP-1作動薬使用者が胃カメラを受ける際の重要事項

 

GLP-1作動薬やGIP/GLP-1作動薬を使用中の方が胃カメラを受ける際に大切なのは、次の3点です。

  • 薬品名を必ず医療機関に伝えること
  • 検査前日の食事指示を守ること
  • 自己判断で薬を止めないこと

 

とくに鎮静剤を使う胃カメラでは、検査前24時間の透明な液体食が安全対策として重要になることがあります。2024年の米国多学会ガイダンスでは、多くの患者さんはGLP-1受容体作動薬を継続できる一方、消化器症状などのリスクが高い患者さんでは24時間の液体食や麻酔計画の調整を行うとされています。

 

GLP-1作動薬が胃カメラに影響する理由

 

GLP-1受容体作動薬は、インスリン分泌を助け、食欲を抑え、血糖値や体重管理に役立つ薬です。その一方で、薬理作用として胃排出遅延、つまり食べ物が胃から腸へ移動するスピードを遅くする作用があります。

 

この作用により、患者さんが「前日の夜から何も食べていない」「検査前の絶食を守った」と思っていても、胃の中に食べ物が残っていることがあります。

 

2025年の上部消化管内視鏡に関するメタ解析では、GLP-1受容体作動薬使用者は非使用者に比べて胃内残渣が有意に多く、オッズ比5.56と報告されています。また、検査中止や再検査も多い傾向が示されました。一方で、誤嚥や有害事象の発生率には明らかな差が示されていません。

 

別の2025年のシステマティックレビュー・メタ解析でも、GLP-1受容体作動薬使用者では胃内残渣と内視鏡の早期中止リスクが上昇する一方、誤嚥性肺炎のリスクには有意差が認められなかったと報告されています。つまり、誤嚥はまれでも、胃内残渣による検査の質低下は現実的な問題として考える必要があります。

 

胃カメラで問題になる胃内残渣のリスク

 

胃内残渣とは、検査時に胃の中に食べ物、飲み物、薬、液体などが残っている状態です。

 

胃カメラでは胃の粘膜を直接観察しますが、胃内に残渣があると、胃がん、胃潰瘍、ポリープ、萎縮性胃炎、ピロリ菌感染後の変化などを十分に観察できなくなる可能性があります。特に早期胃がんは小さな色調変化として見つかることもあるため、胃内残渣が多いと病変の見落としにつながる可能性があります。

 

また、胃内の内容物が逆流すると、鎮静中の患者さんでは咳反射や飲み込み反射が弱くなっているため、気道へ入りやすくなります。オーストラリア・ニュージーランド麻酔科学会(ANZCA)は、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬使用者では、鎮静や麻酔中の胃内容物残留と肺誤嚥が報告されており、誤嚥はまれでも高リスクで致命的になり得る合併症と説明しています。

 

胃カメラ前に必ず申告すべき薬剤一覧

 

胃カメラの予約時、問診時、検査当日には、以下のような薬を使用していることを必ず伝えてください。

薬品名 一般名・成分 主な使い方
リベルサス セマグルチド 飲み薬・1日1回
オゼンピック セマグルチド 注射・週1回
ウゴービ セマグルチド 注射・週1回・肥満症治療
ビクトーザ リラグルチド 注射・1日1回
トルリシティ デュラグルチド 注射・週1回
マンジャロ チルゼパチド 注射・週1回・GIP/GLP-1
ゼップバウンド チルゼパチド 注射・週1回・肥満症治療
ソリクア インスリン グラルギン+リキシセナチド インスリン+GLP-1
ゾルトファイ インスリン デグルデク+リラグルチド インスリン+GLP-1

 

ソリクアはインスリン グラルギンとGLP-1受容体作動薬リキシセナチドを含む配合剤、ゾルトファイはインスリン デグルデクとリラグルチドを含む配合剤です。これらはインスリンの薬と認識されていることがありますが、GLP-1関連成分を含むため、内視鏡前には必ず申告してください。

 

検査の質を高めるための前日の食事調整

 

GLP-1作動薬使用中の胃カメラで、安全性と検査の質を高めるために重要なのが、検査前日の食事内容です。

 

近年の多学会ガイダンスでは、多くの患者さんではGLP-1作動薬を継続できる一方、リスクが高い患者さんでは検査前24時間の液体食や麻酔計画の調整が推奨されています。米国の多学会ガイダンスでも、ほとんどの患者は手術や消化管内視鏡前にGLP-1受容体作動薬を継続できるが、高リスク例では24時間の液体食や麻酔計画の調整を行うと説明されています。

 

さらに2026年に発表されたランダム化比較試験では、GLP-1/GIP関連薬を継続した群では、1回分を休薬した群に比べて、臨床的に問題となる胃内残量が多いことが示されました。ただし、胃カメラと大腸カメラを同日に行い、前日に透明な液体食を行った患者さんでは、問題となる胃内残量は認められませんでした。この結果からも、前日の食事調整は非常に重要と考えられます。

 

推奨される食事対応

 

安全性を重視する場合、GLP-1作動薬を使用中の方は、検査前日の朝から検査まで、できるだけ固形物を避けることが望ましいと考えられます。

 

特に以下の方では、検査前日の食事制限が重要です。

  • 鎮静剤を使う胃カメラを受ける方、深い鎮静を希望する方
  • 過去に胃内残渣を指摘された方
  • 吐き気・胃もたれ・腹部膨満・便秘がある方
  • GLP-1作動薬の開始直後または増量直後の方

 

透明な液体食とは、一般的には以下のようなものです。

 

摂取しやすいもの 避けるもの
水、白湯、お茶 ごはん、パン、麺類
具のない透明なスープ、だし 肉、魚、卵、野菜、海藻、きのこ
透明なスポーツドリンク 牛乳、乳製品、ヨーグルト
果肉のない透明なジュース 野菜ジュース、スムージー、果肉入り
指定された検査食や液体食 アルコール、固形物入りのスープ

 

ANZCAは、GLP-1関連薬使用者では前日から24時間の透明な液体食を行い、その後に標準的な絶食時間を設けることを推奨しています。ただし、24時間の透明液体食を行っても空腹胃が保証されるわけではなく、胃内残渣を安全なレベルに減らす可能性があるという位置づけです。

 

GLP-1作動薬の休薬判断について

 

ここは患者さんが最も迷いやすいポイントですが、自己判断で中止してはいけません。

 

以前の米国麻酔科学会(ASA)の2023年ガイダンスでは、毎日投与のGLP-1作動薬は検査・手術当日に、週1回投与の薬は1週間前から休薬を考慮する方針が示されました。

 

しかし、その後のデータ蓄積により、現在は全員が一律に休薬するよりも、症状、投与開始時期、増量直後かどうか、鎮静の深さ、治療目的(糖尿病か肥満症か)を踏まえて個別に判断する流れになっています。2024年の米国多学会ガイダンスでは、ほとんどの患者はGLP-1受容体作動薬を継続できるとしつつ、高リスク例では24時間の液体食、麻酔計画の調整、まれに延期を検討するとされています。

 

糖尿病治療目的でGLP-1作動薬を使用している方が自己判断で休薬すると、血糖値が悪化することがあります。インスリンやSU薬などを併用している方では、食事制限中の低血糖にも注意が必要です。処方医または糖尿病担当医への相談が大切です。

 

休薬や食事制限の強化を検討すべきケース

 

次のような方では、医師が休薬、検査延期、食事制限の強化、鎮静方法の変更を検討することがあります。

 

投与開始・増量直後 吐き気、胃もたれ、腹部膨満、便秘などの症状が出やすく、胃排出遅延が強く出ることがあります。
消化器症状がある 吐き気や強い便秘がある場合、胃の中に内容物が残っている可能性が高くなります。
深い鎮静を希望 鎮静が深いほど気道を守る反射が低下し、誤嚥への備えが重要になります。
過去の指摘事項 過去の検査で「胃の中に食べ物が残っていた」と言われた方は、より慎重な制限が必要です。
その他の要因 糖尿病、肥満症、胃不全麻痺、パーキンソン病、オピオイド使用などがある場合。

 

胃カメラ当日の安全確認プロセス

 

検査当日は、受付や看護師の問診で次の点を確認します。

 

確認する内容
GLP-1作動薬の薬品名、最後に使用した日時、開始時期、最近の増量の有無
前日の食事内容(透明な液体食が守られたか)
当日の吐き気、嘔吐、腹痛、胃もたれ、腹部膨満、便秘の有無
併用薬(インスリン、SGLT2阻害薬、抗血栓薬など)の有無
鎮静剤の使用希望

 

症状がなく、指示された絶食や食事制限を守れている場合は、予定通り胃カメラを行えることが多いです。一方、強い胃もたれや腹部膨満がある場合は、検査延期や鎮静方法の変更を検討します。

 

鎮静剤を使用する場合の特別な配慮

 

鎮静剤を使用する胃カメラは、苦痛が少なく受けやすいというメリットがあります。一方で、鎮静が深くなると、咳をする力や気道を守る反射が弱くなります。

 

そのため、医師は次のような対応を検討することがあります。

  • 鎮静を浅めにする、または最小限の鎮静で行う
  • 検査を延期し、後日再調整する
  • 胃超音波で胃内容を確認する
  • 高次医療機関や麻酔管理下での実施を検討する

 

胃カメラと大腸カメラを同日に受ける場合

 

GLP-1作動薬使用中の方では、大腸カメラ前の腸管洗浄にも注意が必要です。胃排出が遅れると、腸管洗浄剤が胃に停滞し、吐き気や嘔吐が出やすくなることがあります。

 

一方で、胃カメラと大腸カメラを同日に行う場合、大腸カメラのための前日食や腸管洗浄により、結果として胃内残渣が少なくなる可能性があります。2024年の研究でも、同日検査では胃内食物残渣が認められなかったと報告されており、24時間透明液体食の効果が示唆されています。

 

患者さんが守るべき3つのステップ

  1. 薬剤情報の正確な伝達
    胃カメラの予約時や当日の受付で、使用している薬品名を伝えてください。お薬手帳や薬の箱、注射ペンの写真を持参すると確実です。
  2. 指定された食事制限の遵守
    通常よりも厳しい食事制限が指示されることがあります。特に、前日24時間の透明液体食を指示された場合は、安全のために必ず守ってください。
  3. 医療従事者による指示の確認
    自己判断で薬を止めず、休薬の是非については必ず処方医と内視鏡担当医の指示に従ってください。

 

よくある質問

 

Q1. オゼンピックを使っています。胃カメラは受けられますか?

多くの場合、事前に申告し、食事制限や絶食指示を守れば可能です。ただし、症状が強い場合や最近増量した場合は、検査延期を検討することがあります。

 

Q2. リベルサスは飲み薬ですが、注射薬と同じように注意が必要ですか?

はい。リベルサスも同様の成分を含むため、胃排出遅延に関係する可能性があります。必ず事前に申告してください。

 

Q3. マンジャロはGLP-1作動薬ですか?

マンジャロはGIP/GLP-1受容体作動薬ですが、胃内残渣の観点では、GLP-1関連薬として同様に慎重な対応が必要です。

 

Q4. 胃カメラ前に1週間休薬すれば安全ですか?

必ずしもそうとは限りません。休薬しても胃が確実に空になる保証はなく、糖尿病の方は血糖管理が乱れるリスクがあります。医師が個別に判断します。

 

Q5. 鎮静なしの胃カメラなら問題ありませんか?

誤嚥リスクは下がりますが、胃内に残渣があれば観察不良による見落としのリスクは残ります。鎮静の有無にかかわらず事前申告が必要です。

 

まとめ:安全な内視鏡検査のために

GLP-1作動薬やGIP/GLP-1作動薬を使用中の方は、胃の動きが遅くなり、通常の絶食を守っていても胃の中に食べ物が残ることがあります。安全に胃カメラを受けるために、薬品名の申告適切な食事調整、そして医師による個別判断を大切にしてください。

 

執筆・監修:山形県米沢市 きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)

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