クローン病
若年者に好発する原因不明の肉芽腫性炎症性腸疾患です。現在、日本には、約7万人のクローン病の患者さんがおり、その数は年々増加しています。クローン病は10ー20歳代の若年者に好発し、男女比は約2:1と、男性に多くみられます
消口腔から肛門までの消化管のあらゆる部位に起こります。症状は病変の部位や範囲によって多彩です。特にクローン小腸や大腸、肛門の周りに炎症がよくみられます。発熱、栄養障害、貧血などの全身症状や関節炎、虹彩炎、肝障害などの全身性合併症も伴うことがあります。
腸管外の合併症としては、関節、皮膚や眼の病変などがあります。関節の病変は30%以上の患者さんに、皮膚の病変は2%程度の患者さんに、眼の病変は1−2%の患者さんにみられます。そのほかにも、アフタ性口内炎、肝胆道系障害、結節性紅斑などがみられることがあります。
クローン病は、「指定難病」の1つです。
指定難病とは、原因不明で患者数が少なく治療法も確立していない、いわゆる「難病」のうち、厚生労働大臣が定めた疾患のことをいいます。
クローン病の発症原因はいまだ不明ですが、何らかの遺伝的な因子を背景として、腸に潜んでいる免疫を担当する細胞(リンパ球など)が食事や腸内細菌に過剰に反応して、クローン病の発症に至ると考えられています。
検査診断
クローン病では小腸や大腸などに炎症が生じ、病変部からはじわじわと出血が生じるため貧血が引き起こされます。また蛋白質の吸収障害、漏出による低栄養や炎症の状態を見るため採血が行われます。
上部消化管の検査としては、胃カメラを行います。口、喉のアフタ性病変の有無や、胃十二指腸病変の有無、特徴的な竹節状所見の有無などで診断します。小腸病変を含めた腹部全体の精査としてはCT検査が有用です。小腸狭窄の有無など内視鏡検査の前に行うことが有用です。他、小腸内視鏡やカプセル内視鏡、大腸内視鏡検査は重要です。
確定診断のためには内視鏡検査で病変部の一部を採取し、病理検査を行う必要があります。
治療
薬物療法
5-アミノサリチル酸製剤(5ASA) 、ステロイドなどの内服、免疫抑制剤、生物学的製剤の抗TNF-α抗体製剤の使用があります。抗TNF-α抗体製剤は、潰瘍の完全消失が期待できますが、免疫が低下するためリスクがあります。
他に血球成分除去療法など。
栄養療法
内服薬による治療に加えて、栄養療法を行うことがあります。脂肪の多い食品は控えて、栄養剤という高カロリーの液体を飲んで栄養を補うことにより、腸の炎症を抑え、症状の改善が期待できる方法です。
栄養療法の方法には、専用のチューブを鼻から挿入して寝ている間に栄養剤を摂取する方法があります。この治療をきちんと続ければ、クローン病の症状の改善が期待できることが知られています。また抗TNFα抗体を使用している患者さんでは、栄養療法を一緒に行うと抗TNFα抗体の効果がより長く持続すると報告されています。
外科手術
保存的治療(栄養療法、ステロイド、 5-ASA 、免疫抑制剤、モノクローナル抗体治療)によっても小腸、ないし大腸の狭窄症状がよくならない方。治療に抵抗する(難治性)、瘻孔や膿瘍がある方。複雑痔ろうやこれによる肛門狭窄のある方。経過中に悪性腫瘍や、悪性腫瘍に近い病変が指摘された方。
クローン病は、寛解(症状が落ち着いている状態)と再燃(症状が悪化している状態)を繰り返しながら慢性の経過をたどりますが、命に大きな影響を及ぼす疾患ではないと考えられています。適切な治療をして症状を抑えることができれば、健康な人とほとんど変わらない日常生活を続けることが可能です。