アニサキス症
アニサキスとは寄生虫の一種で、その幼虫がサバ、アジ、イワシ、カツオ、サケ、イカ、サンマなどの魚介類の内臓に寄生します。寄生している魚介類が死亡し、時間が経過すると内臓から筋肉に移動することが知られています。幼虫は、長さ2~3cm、幅は0.5~1mmくらい。白色の少し太い糸のように見えます。アニサキスが寄生している魚介類を、生でまたは加熱不十分な状態で食べると、人間の体内で数日から1週間生き続けて強い胃痛などの症状を起こし食中毒(アニサキス症)が起こります。
なお、日本における食中毒の発生件数は、アニサキス原因が2018年以来4年連続1位となっています。
流通の発達と複雑化によってアニサキスが生きたまま食卓に到達する機会が増したことなどが、指摘されています。
寄生部位により、胃アニサキス症、腸アニサキス症、腸管外アニサキス症に分けられる。幼虫の多くは消化管壁を貫通できないが、貫通した場合は穿孔性腹膜炎や寄生虫性肉芽腫を発症することもある。なお、激痛の原因は即時型アレルギーによるものとする説がある。
- 胃アニサキス症:魚介類の生食後数時間して,激しい上腹部痛,悪心,嘔吐をもって発症するのが胃アニサキス症の特徴で,人体症例の大半がこの症状を呈する(劇症型胃アニサキス症).食歴に関する問診と臨床症状から劇症型胃アニサキス症が疑われる場合は,胃内視鏡検査で虫体を検索し(虫体1匹の穿入で発症することも多い,),検出虫体の形態と遺伝子配列から確定診断する.しかし健康診断時等の内視鏡検査で,胃粘膜に穿入する虫体が見つかる無症候例もある(緩和型胃アニサキス症).
- 腸アニサキス症:食後、十数時間後から数日後に、激しい下腹部痛、腹膜炎症状を生じます。虫体が腸に穿入する腸アニサキス症では,腹痛,悪心,嘔吐などの症状が見られ,時に腸閉塞や腸穿孔を併発します。
- 腸管外アニサキス症:膵アニサキス症。寄生虫性肉芽腫。
治療について
治療は、胃カメラでの虫体除去につきます。
内視鏡で虫体を確認し、摘出することで痛みは治まります。
アニサキスが胃の壁に刺入すると激痛に見舞われますが、摘出されれば痛みは消えます。
生の魚介類を食べていないか、寿司屋に行ってないかなど重要になります。
サバ、サケ、イカ、イワシ、サンマ、ホッケ、タラ、マスなどを非加熱、解凍以外の生に近い状態で摂取し、
数時間後(多くは8〜10時間以内)に腹痛が出現しアニサキス症が疑わしい場合、緊急内視鏡をお受けいただきます。
胃カメラをして、アニサキスを確認します。炎症による粘膜隆起と白い糸状の虫体を目安に探します。その後、内視鏡用の鉗子を使用してアニサキスを除去します。
除去においては、胃壁に刺入している、頭部をしっかり除去することが重要です。これが、アレルギー反応を起こし腹痛の原因だからです。数匹いることもあり、十分な観察も要します。アニサキス症が疑わしい場合は、できるだけ空腹の状態で来院していただくようお願いいたします。
アニサキスの疑いがあれば、我慢せずに速やかに内視鏡検査を受けることをお勧めします。
当院では専門の内視鏡医が、緊急内視鏡対応いたします。希望時には鎮静下での胃カメラもお受けいたします。
内視鏡以外の治療としては、ステロイド薬、抗ヒスタミン薬で経過を見ることもあります。
胃以外の場合は、対症療法となることが多いです。
予防方法
- 新鮮な魚を選び、丸ごと1匹で購入した際は速やかに内臓を取り除くこと
- 魚の内臓は生で食べないこと
- 十分加熱すること(60℃では1分、70℃以上で瞬時に死滅します)
- 冷凍すること(-20℃で24時間以上冷凍すると感染性が失われる)