大腸ポリープ
大腸ポリープとは
大腸の内腔、表面を粘膜といいます。この粘膜から、イボの様に隆起したものをポリープと呼びます。
ポリープには、癌ないし将来的に癌に変わる可能性のある腫瘍性のポリープと、癌にならない非腫瘍性のポリープがあります。腫瘍性のポリープには、腺腫 (adenoma)とSSL (sessile serrated lesion:鋸歯状病変)とがあります。非腫瘍性のポリープには、過形成ポリープ、炎症性ポリープ、若年性ポリープなどがあります。当院では、内視鏡検査時、発見されたポリープごとに、拡大観察と特殊光観察を行い、良性悪性の見極めをし適切な治療を選択するよう努めております。
大腸癌は腺腫か大きくなるにつれ、悪性に変わり、一部が癌化した腺腫内癌、早期癌を経て進行癌へとなります。中には、腺腫を経ずに、一気にがんが生じることもあります。このタイプはポリープの形態ではなく、平坦陥凹の形態で、早期から浸潤転移する悪性度の高い大腸がんです。大腸がんの9割は腺腫から生じると考えられています。
SSLは、以前まで過形成ポリープとの見分けが難しいこともあり、経過観察とすることが多かったのですが、今では癌に変わるものと分かっています。
大腸内視鏡検査で多く見つかるポリープは腺腫になります。腺腫およびSSLを、早めに見つけ切除することが、大腸がんを予防する最大の方法と考えられます。そのため当院では、多くの方に安全安心な大腸内視鏡検査を受けていただくこと、そして大腸ポリープの無いクリーンコロンを目指すべく日々診療にあたっています。
大腸ポリープの症状、原因
大腸ポリープは、あってもほとんどの場合、無自覚、無症状です。肛門に近い部位のポリープでは、出血や肛門から飛び出すことで気づかれることもありますが、それは多くはありません。大腸カメラを受けて初めて気づかれることが、ほとんどです。
大腸ポリープの原因として、遺伝的素因も考えられます。例えば、遺伝性大腸がんでは、がんが発生しやすい家系があり、家族性大腸腺腫症ではたくさんのポリープが発生しますし、リンチ症候群ではポリープの数は少ないですが大腸がんが家族内に多く発生します。他に、高年齢、アルコール、肥満、喫煙などが原因としてあげられます。予防法はほとんどなく、適度の運動ぐらいかと考えられます。親子兄弟などの血縁関係者に大腸ポリープや大腸がんと診断された方がいる場合は、一度は大腸カメラをお受けいただくことをお勧めします。
大腸がん検診(便潜血検査)と内視鏡検査
大腸がん検診で行われる便潜血検査は簡便な検査で、お受けになったことのある方は多いと思います。2日間の便を調べて1日でも陽性と判定されれば、一般に内視鏡による精密検査を行います。便潜血検査により、進行がんの90%以上、早期がんの約50%、腺腫などのポリープの約30%を見つけることができ、その結果、大腸がんの死亡率を約60%、大腸がんになるリスクを46~80%下げることが報告されています(日本消化器病学会及び検診学会より)。
便潜血検査はどなたでも受容できる簡便な検査である一方、大腸ポリープ発見の感度特異度の点では、大腸内視鏡検査がはるかに優れています。他に注腸バリウム造影検査や、最近では大腸CT検査があります。ポリープやがんの位置の確認には有用ですが、被曝の問題、組織検査や切除治療はできない点で内視鏡検査が主流となっています。
海外では5−10年に1回は大腸カメラを受けることを推奨しています。その上で、大腸ポリープの無いクリーンコロンを目指すことが、最近では日米ともに消化器内視鏡医の主眼となっています。