「大腸憩室出血とは?原因・症状・治療法を専門医が解説!」
[2025.02.24]
大腸憩室出血とは?
大腸憩室とは?
大腸憩室とは、大腸の壁の一部が外側に膨らんでできた小さな袋状の構造のことです。内視鏡検査では、くぼみとして観察されます。憩室には**生まれつきのもの(先天性)**と、**加齢や生活習慣が原因でできるもの(後天性)**があります。
大腸憩室出血の原因
大腸憩室ができる主な原因は、以下のようなものです。
- 食物繊維不足:便が硬くなり、大腸の圧力が高まる。
- 慢性的な便秘:腸内圧が上昇し、憩室ができやすくなる。
- 血管の脆弱化:憩室の底にある血管が破れやすくなることで出血する。
憩室ができやすい場所と人種差
- 欧米人:S状結腸に多く発生。
- 日本人:従来は右側結腸(盲腸・上行結腸)に多かったが、近年はS状結腸憩室も増加。
- 日本人の約30%が大腸憩室を持っているとされ、加齢とともに増加傾向。
大腸憩室出血の症状
大腸憩室出血の特徴は、痛みを伴わない突然の血便(下血)です。
- 腹痛や発熱はないことが多い。
- 便の色:鮮血や赤黒い血便が特徴。黒い便の場合は胃や十二指腸からの出血の可能性あり。
- 貧血症状:立ちくらみ、めまい、動悸、頻脈などが現れることもある。
大腸憩室出血のリスク要因
- 抗血栓薬(アスピリン・ワーファリン・DOACなど):少量の出血が大量出血につながるリスク。
- 糖尿病・高血圧・心疾患:血管がもろくなりやすい。
- 鎮痛薬(NSAIDs):出血を引き起こす可能性あり。
- 肥満:腸の圧力が上昇し、憩室ができやすくなる。
大腸憩室出血の診断方法
1. 問診とバイタルチェック
- 血便の有無、出血の程度、持病、服薬状況を確認。
- 血圧が低下し、脈が速い場合は緊急検査が必要。
2. 画像検査(CT・内視鏡)
- 造影CT検査:出血部位を特定し、活動性の出血を確認。
- 大腸カメラ(内視鏡検査):出血源の特定と同時に止血が可能。
- 血管造影(必要に応じて):内視鏡で止血が困難な場合に実施。
大腸憩室出血の治療方法
1. 軽症の場合(自然止血)
- 禁食・点滴:腸を休ませ、出血の自然止血を待つ。
- 経過観察:多くのケースで72時間以内に止血する。
2. 内視鏡的止血(出血が続く場合)
- クリップ法:出血点を専用のクリップで挟んで止血。
- 開口部縫縮:出血点の同定が困難な場合に憩室の入り口を閉じる。
3. 血管塞栓術・手術(重症例)
- 血管造影で動脈塞栓術:内視鏡で止血困難な場合に選択。
- 手術:大量出血や再発を繰り返す場合に、出血部位の切除を行う。
大腸憩室出血の予後と注意点
- 70〜80%は自然に止血。
- 3〜5%は重篤な出血に発展。
- 出血が続く場合は救急病院を受診することが重要。
大腸憩室出血が疑われたら?
出血が続いている場合や大量出血がある場合、ショック状態に陥る可能性があり、一刻を争う状況となることが考えられます。そのため、出血部位の特定や治療を迅速に行うためにも、クリニックでは対応が難しく、速やかに救急病院を受診することを強くおすすめします。