【医師が解説】肺炎球菌とは?原因・症状・重症化リスク・予防法まで徹底解説
【医師が解説】肺炎球菌とは?原因・症状・重症化リスク・予防法まで徹底解説
こんにちは、きだ内科クリニックです。
当院は呼吸器疾患の専門ではありませんが、**高齢者や基礎疾患を持つ方にとって重篤な病気を引き起こす「肺炎球菌感染症」**について、自学の一環として情報をまとめました。
肺炎球菌は、肺炎だけでなく髄膜炎や敗血症など命に関わる重篤な感染症を引き起こす細菌です。特に高齢者や免疫力の低下した方では、感染・重症化のリスクが高く、適切な予防が重要となります。
肺炎球菌とは?|日常的に存在しながらも危険な細菌
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)は、球状の形をしたグラム陽性の細菌で、気道や鼻・のどに常在しています。
-
健康な人でも保菌していることがあり、小児で20〜40%、成人で10%程度
-
普段は無害でも、風邪や疲労などで免疫が落ちると発症することがある
-
外側には**分厚い莢膜(きょうまく)**があり、白血球の攻撃を回避しやすい=重症化しやすい
現在までに90種類以上の血清型が知られており、中には抗菌薬の効きにくい耐性菌も存在するため、治療の難しさが年々増しています。
肺炎球菌が引き起こす主な感染症
肺炎球菌は、感染した部位によって以下のような病気を引き起こします。
● 局所感染症(比較的軽度だが日常的に多い)
-
肺炎:最も頻度が高く、市中肺炎の主要原因菌。せき、発熱、黄色や茶色のたん、呼吸困難などの症状。高齢者では典型症状が出にくいことも。
-
中耳炎:特に乳幼児に多く、耳の痛みや発熱が主な症状。
-
副鼻腔炎:顔面の痛み、膿性鼻汁など。
● 侵襲性感染症(全身に菌が広がる重篤な感染)
-
敗血症・菌血症:菌が血液に入り込んだ状態。発熱、意識障害、ショック症状など。
-
髄膜炎:発熱、頭痛、首の硬直、意識障害など。進行が速く、死亡や後遺症のリスクが高い
-
日本での報告では、侵襲性肺炎球菌感染症の致死率は約19%
肺炎球菌感染症が重症化しやすい人とは?
以下の条件に当てはまる方は、感染・重症化リスクが特に高いとされています。
-
65歳以上の高齢者
-
乳幼児(特に4歳以下)
-
慢性疾患がある方(糖尿病、心臓・腎臓・肺・肝疾患など)
-
免疫力が低下している方(がん患者、免疫抑制剤使用中、HIVなど)
-
脾臓を摘出した方(莢膜菌に対して特に弱い)
-
喫煙者、栄養不良、過労、集団生活者
肺炎球菌感染症の予防方法
● 最も効果的な予防法=ワクチン接種
日本では以下の2種類の肺炎球菌ワクチンが使用されています:
✅ 23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)
-
商品名:ニューモバックスNP
-
成人で多い血清型23種類に対応
-
65歳以上を対象に定期接種
-
感染予防効果:約4割とされる
✅ 肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13/15/20)
-
商品名:プレベナー13、プレベナー20、バクニュバンス
-
少ない型数に対応だが、免疫反応が強い
-
小児の定期接種、また高齢者や免疫不全者にも使用されることがある
● 高齢者の定期接種(ニューモバックスNP)
-
対象:65歳の方と、60〜64歳で特定の障害を持つ方
-
1回接種で公費助成が受けられます
-
再接種する場合は5年以上空けることが推奨
● ワクチンの副反応
-
注射部位の腫れ・痛み・赤み
-
発熱、倦怠感、筋肉痛など(軽度)
-
稀にアナフィラキシーなど重篤な副反応もあり
ワクチン以外の日常的な予防策も大切
ワクチンだけでは全ての型をカバーできないため、以下の基本的な感染対策が重要です。
-
手洗い・うがい
-
バランスの取れた食事、十分な睡眠で免疫維持
-
口腔内のケア(歯磨き・うがい) → 誤嚥性肺炎の予防に有効
-
体調不良時のマスク着用
-
人混みを避ける・換気を行う
まとめ|肺炎球菌ワクチンと予防で重症感染を防ぐ
-
肺炎球菌は肺炎だけでなく、髄膜炎や敗血症など重症化しやすい細菌
-
高齢者や基礎疾患のある方、免疫低下中の方は特に感染・重症化リスクが高い
-
予防にはワクチン接種が最も有効。65歳の定期接種対象者は接種を検討しましょう
-
日常の体調管理や衛生習慣も、重症化を防ぐ鍵になります
きだ内科クリニックでは、肺炎球菌ワクチンのご相談も受け付けております。
「接種対象かどうか分からない」「持病があるが接種できるか心配」など、気になることがあればお気軽にご相談ください。