【医師が解説】大人のマイコプラズマ肺炎とは?症状・感染経路・治療法・予防策をわかりやすく解説
【医師が解説】大人のマイコプラズマ肺炎とは?症状・感染経路・治療法・予防策をわかりやすく解説
こんにちは、きだ内科クリニックです。
当院は呼吸器の専門ではありませんが、**大人にも感染する「マイコプラズマ肺炎」**について、自学・情報整理のために内容をまとめました。
マイコプラズマ肺炎は、子どもに多い病気という印象を持たれがちですが、大人でも十分に感染・発症する可能性があり、長引く咳の原因としても重要な疾患です。特に20〜40代の働き盛り世代での感染も多く、風邪と見分けにくいことから発見が遅れるケースもあります。
マイコプラズマ肺炎とは?
マイコプラズマ肺炎は、「肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)」という細胞壁を持たない特殊な細菌が原因の呼吸器感染症です。
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通常の細菌性肺炎とは異なり、ペニシリン系・セフェム系抗生物質は無効
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免疫のない人は年齢に関係なく繰り返し感染する可能性があります
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気管支炎や風邪のような症状で済む場合もありますが、一部で肺炎に進展し、咳が長引くことが特徴
大人のマイコプラズマ肺炎の症状とは?
● 潜伏期間:
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通常2~3週間程度
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発症まで時間がかかるため、「いつ・どこで感染したのか」がわかりにくい
● 初期症状:
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発熱(微熱〜38℃台)、倦怠感、頭痛、咽頭痛など、風邪に似た症状
● 特徴的な症状:
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**乾いた咳(乾性咳嗽)**が3~4週間、長いと1か月以上続く
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夜間や早朝に激しく咳き込むのが特徴
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時間が経つと湿った咳に変化することもある
● その他の可能性のある症状:
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弛張熱(一日の中で熱が上がったり下がったりする)
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胸の痛み、息苦しさ
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発疹、耳の痛み、中耳炎などの合併症
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稀に心筋炎・脳炎・ギランバレー症候群を起こすこともあり注意が必要です
咳が長引く場合は受診を|風邪との違いは?
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咳が1週間以上続く
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風邪が治ったのに咳だけ残っている
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夜中に咳で眠れない
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発熱はないのに咳とだるさが抜けない
これらに当てはまる場合は、マイコプラズマ肺炎の可能性も考慮して、早めの医療機関受診をおすすめします。
感染経路と感染のしやすさ
● 主な感染経路:
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飛沫感染:咳やくしゃみによるしぶき
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接触感染:ドアノブやタオルなどを介したウイルスの付着
● 感染しやすい場所・状況:
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家族・職場・学校などの密な環境
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子どもから大人への家庭内感染が多く報告されています
● 感染可能期間:
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発症前後を含めて約4〜6週間ほど保菌している可能性
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症状がない潜伏期にも他人にうつす恐れがあります
マイコプラズマ肺炎の診断方法
● よく行われる検査:
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胸部X線/CT検査:肺炎の広がりや特徴を確認
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血液検査:炎症の程度やマイコプラズマに対する抗体(IgMなど)
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迅速抗原検査:のどのぬぐい液で行うが、感度にばらつきあり
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核酸検出法(PCR・LAMP):初期でも検出可能な高感度検査
※注意点:マイコプラズマは主に下気道で増殖するため、上気道(喉)からの検体では陰性になることもあるため、症状や流行状況を総合的に判断します。
治療法|「一般的な抗生物質では効かない」点に注意
マイコプラズマは細胞壁を持たないため、通常の肺炎治療薬では効果がありません。
● 有効な抗菌薬:
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マクロライド系抗生物質(第一選択)
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テトラサイクリン系抗生物質(成人のみ)
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ニューキノロン系抗生物質
● 注意点:
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近年、マクロライド耐性菌が増加傾向
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治療効果が乏しい場合は、抗菌薬の種類を変更する必要があります
● 対症療法:
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咳止め、解熱鎮痛剤、水分補給、安静
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重症化した場合は酸素投与やステロイド治療、入院管理が必要
予防法|ワクチンはないため、基本的な対策を
マイコプラズマ肺炎にはワクチンが存在しないため、感染予防には日常の習慣が重要です。
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マスク着用
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こまめな手洗い・アルコール消毒
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タオル・食器の共用を避ける
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室内換気の徹底
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咳エチケット(咳・くしゃみは袖口やティッシュで)
出勤・登校はいつから可能?
マイコプラズマ肺炎には、法律で定められた出席停止期間や出勤制限はありませんが、以下が目安となります:
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発熱・強い咳が落ち着いてから
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全身状態が良好であること
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職場・学校によっては独自ルールがある場合もあるため、主治医や所属機関と相談
症状が改善しても感染の可能性は残るため、しばらくはマスクを着用して配慮することが大切です。
まとめ|長引く咳の原因はマイコプラズマ肺炎かも?
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マイコプラズマ肺炎は大人にも感染する
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風邪と似た症状で始まり、咳が長く続くのが特徴
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診断には画像・抗体・PCRなど複数の検査を用いる
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特効薬が限られているため、早期発見・早期治療が重要
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ワクチンがない今こそ、日常の予防策が何より大切