【医師解説】胃腸炎後に続く腹痛・下痢は「PI-IBS」かもしれません|感染後過敏性腸症候群とは?
【医師監修】胃腸炎のあと、下痢や腹痛が1か月以上続く方へ
それは「感染後過敏性腸症候群(PI-IBS)」かもしれません
「胃腸炎は治ったはずなのに、下痢や腹痛がなかなか治まらない…」
「食あたりのあとから、お腹がずっと不調」
このような症状が3週間〜1か月以上続いている方は、**感染後過敏性腸症候群(PI-IBS)**を疑う必要があります。
PI-IBSは、感染性胃腸炎のあとに発症する過敏性腸症候群(IBS)の一種です。
症状が長引く原因を正しく見極めることで、的確な治療や生活改善につなげることができます。
📌 PI-IBS(感染後過敏性腸症候群)とは?
**PI-IBS(Post-Infectious Irritable Bowel Syndrome)**は、細菌やウイルスによる胃腸炎の後に、腹痛や便通異常が長期間続く病態です。
見た目には腸に異常がなくても、**機能的な異常(腸の過敏化や炎症、腸内環境の乱れ)**によって慢性的な不調が続きます。
🔍 PI-IBSを疑うべき「症状の持続期間」
感染性胃腸炎のあとの腹痛や下痢は、多くの場合1~2週間以内に治まります。
しかし、以下のような場合はPI-IBSの可能性が高くなります。
| 状況 | 説明 |
|---|---|
| ✅ 胃腸炎後3週間以上症状が続いている | 自然回復を超えた長期化 |
| ✅ 発症から1か月以上経過しても症状が持続 | 明確な「PI-IBSの目安」とされる |
| ✅ 3か月以上続いている | Rome IV基準でのIBS正式診断が可能に |
特に「1か月以上続く腹痛や便通異常」は、早期に医療機関での診断が推奨されます。
🧭 主な症状|IBSとの違いは「きっかけ」
PI-IBSの症状は通常の過敏性腸症候群(IBS)とほぼ同じですが、きっかけが胃腸炎であることが特徴です。
PI-IBSの主な症状:
-
持続する腹痛、腹部の不快感
-
慢性的な下痢、便秘、あるいは交互に起こる
-
ガスがたまりやすい
-
排便後もスッキリしない
✅ PI-IBSの原因と背景|なぜ症状が長引くのか?
急性胃腸炎のあと、腸には以下のような変化が残ることで症状が続きます。
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| 腸の過敏化 | 腸の神経が過剰に反応し、軽い刺激で痛みや下痢が起こる |
| 微小炎症の持続 | 見た目は正常でも、腸の粘膜に炎症細胞が残っている |
| 腸内細菌叢の乱れ | 感染後に善玉菌が減り、腸内バランスが崩れる |
| セロトニン異常 | 腸の運動や感覚を司る神経伝達物質の働きが乱れる |
| ストレス | 自律神経の乱れが、脳腸相関に影響を与える |
🎯 どんな人がPI-IBSになりやすい?
以下の条件に当てはまる方は、PI-IBS発症リスクが高いとされています。
-
20〜40代の若年女性
-
胃腸炎時の症状が重かった(血便・発熱・激しい下痢など)
-
回復後1か月以上、お腹の不調が続いている
-
ストレスや不安が強い
-
ノロウイルスやカンピロバクター感染歴がある
💡 いつ受診すべき?|自己判断はNGです
-
胃腸炎後に3週間以上お腹の不調が続いている方
-
「検査では異常なし」と言われても、症状が辛い方
-
仕事や日常生活に支障をきたしている方
は、早めの受診・検査が必要です。
🏥 当院での対応|検査と治療を丁寧に
当院では、PI-IBSの可能性をふまえて、次のような診療を行っています。
検査:
-
血液検査、腹部エコー、便検査
-
大腸カメラによる精密検査(大腸がん・炎症性腸疾患の除外)
治療:
-
整腸剤・消化管調整薬・下痢止め・漢方薬
-
低FODMAP食の指導
-
心理的アプローチ(必要に応じて抗不安薬など)
📅 まずはご相談ください|症状が長引くときは放置しないで
「胃腸炎のあとから、ずっとお腹の調子が悪い…」
その不調は、ただの“治りかけ”ではないかもしれません。
症状が1か月以上続く場合は、感染後過敏性腸症候群(PI-IBS)の可能性が高く、
適切な検査・治療で改善が期待できます。
執筆・監修:山形県米沢市 きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)
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