ポリープを切ったら終わり?切除後に必要な大腸カメラ(再検査)の考え方【山形県米沢市】
大腸ポリープ切除後の経過観察の重要性
大腸ポリープを切除したからといって、それで終わりではありません。大腸ポリープ切除は将来の大腸がんリスクを下げるための大切な第一歩です。重要なのは、切除後の定期的な大腸カメラ(大腸内視鏡)による経過観察(サーベイランス)を続けることで、再発や見落としを防ぎ、大腸がんの予防につなげることです。
ここでは、ポリープができやすい体質(リスク要因)と、再発チェック(サーベイランス)の考え方を解説します。
1. 大腸ポリープ切除後も大腸カメラが必要な理由
大腸ポリープの多くは腺腫(せんしゅ)と呼ばれる良性腫瘍ですが、腺腫の一部は時間の経過とともにがん化する可能性がある“前がん病変”と考えられています。そのため、切除後も次の理由から経過観察が重要になります。
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新しくポリープができる可能性(再発・新生)
切除した場所がきれいでも、別の部位に新たなポリープが発生することがあります。特に一度ポリープが見つかった方は、体質や生活習慣の影響で、再びできやすい傾向があります。 -
小さな病変は“初回で見つけきれない”ことがある
大腸はヒダや曲がりが多く、数mmの小さなポリープや平坦な病変は、検査条件(腸の形・便の残り・観察の難易度)によって、初回で見逃される可能性があります。時間とともに成長し、次回検査で見つかるケースもあります。 -
無症状のまま進行することがある
大腸ポリープや早期大腸がんは、自覚症状がほとんどないことが多いのが特徴です。症状が出てからでは遅れる場合があり、症状がない時期のチェック(サーベイランス)が有効です。
2. ポリープができやすい体質とは?リスク要因を整理
大腸ポリープができる背景には、先天的(変えにくい)要因と、後天的(生活習慣などで改善し得る)要因の両方が関わります。
変えにくい要因(体質・背景)
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家族歴(遺伝的要因)
家族に大腸がん・大腸ポリープの既往がある場合、一般にリスクが高くなることが知られています。特に遺伝性疾患(例:家族性大腸腺腫症など)が疑われる場合は、若年でも多発することがあります。 -
加齢
大腸ポリープは年齢とともに増える傾向があり、40代以降で見つかりやすくなります。
変えられる要因(生活習慣・体の状態)
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肥満(内臓脂肪型)・生活習慣病関連
肥満や高血圧、脂質異常、高血糖などは、腺腫の発生や再発と関連し得る要因として指摘されています。 -
喫煙・飲酒・食生活
喫煙や多量飲酒、赤身肉・加工肉の摂りすぎ、食物繊維不足などは、腸の環境に影響し、リスク要因となり得ます。
※生活習慣の見直しだけで「ゼロ」にできるわけではありませんが、再発リスクを下げる上で重要な土台になります。
3. ポリープ切除後の再検査タイミング
切除後の大腸カメラの間隔は、ポリープの数・大きさ・種類(病理)・異型度・切除の状況によって変わります。以下は一般的な「目安」です(最終的には主治医の判断に従ってください)。
| 切除したポリープの状態(例) | 次回大腸カメラの目安 |
|---|---|
| 小さな腺腫が1〜2個など(低リスク) | 3〜5年後 |
| 3個以上、または大きめ(例:10mm以上)など(中〜高リスク) | 1〜3年以内 |
| 高度異型/治癒確認が必要なケース | 6か月〜1年以内(個別判断) |
| 多発(例:10個以上)など | 1年後を含めて短めに検討 |
また、切除後の数年以内に新たなポリープが見つかることは珍しくないため、特に「最初の数年」は重要なフォロー期間になります。
4. ポリープを残さない大腸へ:予防につながる管理
切除後に大切なのは、単に「検査回数を増やす」ことではなく、適切な間隔で、質の高い観察と必要な治療(追加切除など)を行い、ポリープを“ためない”状態を維持することです。
そのためには、
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検査の前処置(下剤)をしっかり行い、見えにくさを減らす
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結果説明(病理結果)を踏まえて、次回の検査間隔を適切に決める
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生活習慣の見直しもあわせて「再発しにくい環境」を整える
といった“管理”が重要です。
5. 大腸ポリープ切除は予防のスタート
大腸ポリープ切除は治療のゴールではなく、大腸がん予防のスタート地点です。一度ポリープが見つかった方は、ご自身のリスク(体質・生活習慣・病理所見)を理解し、医師と相談しながら、適切なスケジュールで大腸内視鏡(大腸カメラ)を継続することが、将来の大腸がんリスクを下げるための有力な方法になります。
大腸カメラとシロアリ駆除のたとえ話
大腸カメラは、家の床下に潜むシロアリ(ポリープ)を点検し、柱が傷む前に対処する“メンテナンス”に似ています。1回駆除しても環境(体質や生活習慣)が同じなら、別の場所から再び出ることがあります。だからこそ、定期点検(サーベイランス)が欠かせません。
執筆・監修:山形県米沢市 きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)
