メニュー

夜中のトイレが2回以上…夜間頻尿の原因(むくみ・睡眠・心臓)と受診目安|山形県米沢市 きだ内科クリニック

[2025.12.16]

夜間にトイレで2回以上起きる…それ、放置しないでください(夜間頻尿の頻度・リスク・原因・治療)

 

 

「夜中にトイレで2回以上起きる」「眠りが浅くてつらい」 この状態は、単なる“年のせい”で片づけられがちですが、医学的には夜間頻尿(Nocturia)の可能性があり、睡眠の分断(中途覚醒)を通じて生活の質(QOL)を下げるだけでなく、転倒・骨折や、背景にある心臓・血圧・睡眠時無呼吸などの病気を見逃す入口になることがあります。

 

夜間頻尿とは?

 

「1回以上」が定義、でも“問題になりやすい”のは2回以上

 

国際的には、夜間頻尿は「夜間の睡眠中に排尿のために1回以上起きるという訴え」と定義されます。 一方、実際の診療では、夜間に2回以上起きると「睡眠が途切れてつらい」「翌日がしんどい」「転倒が心配」など、治療介入が検討されることが多いのが現実です。

日本の夜間頻尿診療ガイドライン(改訂・アップデート)でも、夜間2回以上の排尿は良好な睡眠を阻害し、QOLを障害することが明記され、症状の支障度(生活への影響)を丁寧に評価する重要性が示されています。 

 

夜間頻尿を放置することの危険性

 

夜間に2回以上起きることで増える「現実的なリスク」

 

転倒・骨折リスクの上昇

夜間は暗さ・眠気・ふらつき・血圧変動が重なり、トイレ移動そのものが危険になります。

日本の70歳以上を対象とした地域住民の縦断研究では、「夜間に2回以上」起きる人は、

  • すべての骨折リスク:HR 2.01

  • 転倒関連骨折リスク:HR 2.20 と報告されています。 

 

死亡リスクとの関連性

同じ研究で、夜間2回以上の群は、調整後でも死亡リスクの上昇(HR 1.98)が示されています。 ここで大事なのは「夜間頻尿そのものが直接命を縮める」というより、夜間頻尿の背景に、心不全・高血圧・睡眠時無呼吸・腎機能低下・糖尿病などが潜んでいる可能性がある、という点です。

 

夜間頻尿の原因

 

夜間頻尿の原因は大きく3つに分けると理解しやすい

 

夜間頻尿は、だいたい次の3タイプ(+混合型)に整理すると、対策が立てやすくなります。

 

A. 夜間多尿(夜だけ尿が多い)

 

夜間の尿量が多くて起きるタイプ。 このタイプは背景に全身の問題(心臓・血圧・睡眠・むくみ)が絡むことが多いのが特徴です。

 

心不全・高血圧でなぜ夜に尿が増える?(ANPの話) 心臓(心房)が「体液が多い」と感じると、ANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)という利尿ホルモンが出て、腎臓からナトリウムと水が排泄されやすくなります。これはうっ血性心不全やコントロール不良の高血圧などで起こりやすいと説明されています。

 

睡眠時無呼吸症候群(SAS)でも夜間多尿が起きる 睡眠時無呼吸の治療により夜間多尿が改善し、夜間頻尿が減る可能性が示されています。 

 

B. 膀胱に尿をためにくい(膀胱蓄尿障害)

 

夜の尿量は多くないのに、膀胱が過敏・容量が少ないなどで起きるタイプ。

代表例

  • 過活動膀胱(OAB):急に強い尿意(尿意切迫感)

  • 前立腺肥大症(男性):出が悪い、残尿感、尿勢低下

  • 膀胱炎などの尿路感染症:痛み、熱、濁り尿

  • 膀胱がん等:血尿が重要サイン

 

C. 睡眠障害(先に目が覚めて、ついでに排尿する)

 

不眠、うつ、むずむず脚、ストレスなどで眠りが浅く、目が覚めたついでにトイレへ行くパターンです。 夜間頻尿と睡眠障害は、互いに悪化させやすい“悪循環”になりがちです。 

 

夜間頻尿の原因特定のために

 

原因を見分ける鍵は「排尿日誌(頻度・尿量の記録)」です

 

夜間頻尿の診療で最重要なのが、排尿日誌/頻度・尿量チャート(Frequency-Volume Chart)です。 「いつ・どれくらい尿が出たか」「どれくらい飲んだか」「寝た時間・起きた時間」を24〜72時間(2〜3日)ほど記録すると、夜間多尿か、膀胱容量の問題かが見えてきます。

 

診察でよく聞かれる(=事前に整理すると良い)ポイント

  • 夜間何回起きるか(平均・最悪)

  • 夕方以降の水分・アルコール・カフェイン

  • 足のむくみ、息切れ、体重増加

  • いびき、無呼吸の指摘、日中の眠気

  • 服薬(利尿薬、降圧薬、糖尿病薬など)

  • 排尿痛・発熱・血尿の有無

 

夜間頻尿のセルフケア

 

まずはここから:今日からできる「生活での対策」(原因別に効く)

 

夜間頻尿ガイドラインでは、夜間多尿などに対して、飲水指導・塩分制限・食事・運動・禁煙・弾性ストッキング・夕方の下肢挙上などの行動療法が整理され、非侵襲的な第一選択として位置づけられています。

 

「夕方以降の飲み方」を変える

 

夜間頻尿がつらいと「水を飲まないようにしよう」となりがちですが、過度の制限は脱水リスクがあります。

ガイドラインの記載では、正常成人の24時間尿量/体重の目安(平均)や、20mL/kg以下は脱水の危険40mL/kg以上は多尿などに触れた上で、1日尿量が20〜25mL/kg程度になるよう飲水量を調整する考え方が示されています。 

 

実践のコツ

  • 水分の“総量”を適正化しつつ、ピークを日中へ

  • 就寝直前のがぶ飲みは避ける

  • 夕食後〜就寝までの「何をどれだけ飲むか」を見直す(まずは排尿日誌で現状確認)

 

塩分を減らす

 

塩分が多いと喉が渇いて飲水が増え、尿量も増えやすくなります。夜の汁物・漬物・加工食品が多い方は要注意です。

 

夕方の「むくみ対策」

 

日中に足にたまった水分が、夜に横になることで血管内へ戻り、尿として出てしまうケースがあります。

  • 夕方の散歩、軽い筋トレ

  • 足を少し高くして休む

  • 弾性ストッキング(適応は医師に相談) こうした方法が「夜間多尿タイプ」に合うことがあります。 

 

カフェイン・アルコールを控える

 

コーヒー、緑茶、紅茶、アルコールは、利尿や睡眠の質低下を通じて夜間頻尿を悪化させることがあります。 まずは夕方以降を控えるのが無難です。

 

転倒予防

 

夜間頻尿そのものをすぐにゼロにできなくても、転倒は防げます。

  • 寝室〜トイレ動線の足元灯

  • スリッパより滑りにくい室内履き

  • 廊下の障害物撤去

  • 立ち上がりはゆっくり(ふらつき対策)

 

医療機関での治療

 

医療機関で行う治療:原因を特定して“最短ルート”へ

 

夜間頻尿の治療は、「とにかく薬」ではなく、原因のタイプに合わせるのが基本です。

夜間多尿が中心なら
  • 生活指導(飲水・塩分・むくみ対策)が土台 

  • 心不全・高血圧・腎機能・糖尿病・睡眠時無呼吸の評価(必要に応じ専門科連携)

  • 睡眠時無呼吸が疑われれば検査・治療(CPAPなど)で改善することがあります 

  • 夜間多尿に対する薬(例:デスモプレシン等)は適応が限られ、低ナトリウム血症など重大な副作用があるため、医師の厳密な管理が必須です。デスモプレシンは低ナトリウム血症(命に関わることもある)が重要リスクとして指摘されています。 

 

過活動膀胱(OAB)・膀胱容量低下が中心なら
  • 膀胱訓練、骨盤底筋訓練

  • 薬物療法(β3作動薬、抗コリン薬など) ※高齢者では薬の副作用(口渇・便秘・ふらつき・認知機能への影響など)も含めて慎重に選びます。

 

前立腺肥大症(男性)が疑わしければ
  • 前立腺評価、残尿測定

  • α1遮断薬などの治療 ※がんの鑑別や血尿がある場合は泌尿器科連携が重要です。

 

睡眠障害が中心なら
  • 生活リズムの調整、日中活動、睡眠衛生

  • 必要に応じて睡眠評価や治療 (夜間頻尿の背景に睡眠時無呼吸が隠れていないかも重要です)

 

こんな症状はすぐに医療機関へ

 

すぐ受診したほうがいい「危険サイン」

 

夜間頻尿が2回以上でも、すべてが緊急ではありません。 ただし次の場合は、早めの受診(場合によっては当日〜数日以内)が望ましいです。

  • 血尿(肉眼で赤い尿)

  • 発熱・排尿痛・腰痛(尿路感染症や腎盂腎炎の可能性)

  • 息切れ、むくみ、体重増加(心不全の可能性)

  • 強い口渇、多飲、多尿、体重減少(糖尿病など)

  • いびき・無呼吸の指摘、日中の強い眠気(睡眠時無呼吸の可能性)

  • 夜間のふらつき・転倒がすでにある(骨折リスクが現実化しています)

 

まとめ

夜間2回以上のトイレは「睡眠の問題」ではなく「体からのサイン」かもしれない

  • 夜間頻尿は国際的に「夜間1回以上」起きる訴えが定義ですが、2回以上は睡眠・QOLへの影響が大きく、医療介入の対象になりやすいです。 

  • 日本の縦断研究では、夜間2回以上は骨折(HR 2.01)や転倒関連骨折(HR 2.20)、死亡リスク上昇(HR 1.98)と関連が示されています。 <a class="flex h-4.5 overflow

 

内科で相談できること

夜間頻尿は泌尿器の問題だけでなく、高血圧・心不全・糖尿病・腎機能・睡眠時無呼吸など、内科的な背景が関わることがあります(ANPなどの利尿ホルモンの関与も説明されています)。 
「原因が分からない」「むくみや息切れも気になる」「薬の影響も心配」という方は、まず内科で全身評価→必要に応じて泌尿器科等へ連携、という流れも合理的です。

 

執筆・監修:山形県米沢市 きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)

ご予約はこちら

HOME

ブログカレンダー

2025年12月
« 11月    
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  
▲ ページのトップに戻る

Close

HOME

chatsimple