大腸検査の種類と違い|便潜血検査・大腸カメラ・大腸CT・カプセル内視鏡を徹底比較/山形県米沢市 きだ内科クリニック
大腸検査の種類と違い|便潜血検査・大腸カメラ・大腸CT・カプセル内視鏡を比較してわかる“最適解”
※この記事は一般的な医療情報です。症状がある方、検診で要精密検査と言われた方は、自己判断せず医療機関でご相談ください。特に血便、腹痛、便通変化などがある場合は「検診を待たず」受診が推奨されます。 国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト
まず結論:大腸検査は「一次検査」と「精密検査」に分けて考える
大腸の検査は大きく分けると、次の2段階で整理できます。
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一次検査(スクリーニング):がんの疑いがある人を拾い上げる(絞り込む)
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二次検査(精密検査):異常の有無を確定し、必要なら治療まで行う
この考え方で見ると、「便潜血検査」と「大腸カメラ(大腸内視鏡)」の役割がとてもクリアになります。
そして、内視鏡が難しい場合に大腸CT(CTコロノグラフィー)や、条件が合えば大腸カプセル内視鏡という選択肢が出てきます。
大腸がん検診はなぜ重要?いつから受ける?
大腸がんは日本で多いがんの一つで、40歳代から罹患(かかる人)が増えるとされています。 国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト+1
そのため、日本の大腸がん検診は、40歳から年1回を基本として案内されることが多いです。 国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト+1
加えて国立がん研究センターの2024年度版ガイドライン関連資料では、便潜血検査免疫法(いわゆるFIT)について、対象年齢(例:40–74歳推奨)や間隔などを明示したことが示されています。 NCC
1. 便潜血検査(FIT):がんの疑いを調べる「一次検査」
便潜血検査とは?仕組みをやさしく説明
便潜血検査は、便の中の目に見えない血液を検出し、大腸がんやポリープなどによる出血の可能性を調べる検査です。 国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト+1
日本では、**免疫法(FIT)**が広く使われ、**2日分採取する“2日法”**が基本です。 国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト+1
メリット:自宅ででき、体への負担がほぼない
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自宅で採便できる
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侵襲(体への負担)が小さい
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継続しやすい
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大腸がん死亡を減らすことが示されている(科学的根拠がある) NCC+1
注意点:陰性でも「がんがゼロ」とは言い切れない
便潜血は“出血”を手がかりにするため、タイミングや病変の性質によっては見逃し(偽陰性)が起こり得ます。
だからこそ、「陰性=永久に安心」ではなく、定期的に受け続けることが大切です。 国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト
いちばん重要:1日でも陽性なら「必ず精密検査」
便潜血は大腸がんが毎日出血しているとは限らないため、1日分でも陽性なら精密検査が必要と明記されています。 国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト
また、次の点もとても重要です。
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便潜血を“もう一度やり直す”ことは精密検査の代わりになりません 国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト
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痔があっても自己判断しない(痔の出血か、ポリープ/がんなのかは精密検査をしないと分からない) 国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト
2. 大腸内視鏡検査(大腸カメラ):確定診断と治療までできる「精密検査の中心」
大腸内視鏡でできること
大腸内視鏡検査は、肛門から内視鏡を挿入して大腸全体を直接観察し、病変があれば**病理検査(生検)**のために組織を採取できます。 NCC
さらに重要なのは、病変が早期であれば内視鏡で切除できる可能性があることです。つまり、
診断だけでなく“将来のがん予防(ポリープ切除)”にもつながる検査です。 NCC
「大腸がんを疑うときの第一選択」になりやすい理由
国立がん研究センター中央病院でも、便潜血陽性後の精密検査として**全大腸内視鏡が基本(第一選択になりやすい)**こと、負担を減らしたい場合に大腸CTが選択肢となることが示されています。 NCC
つらいのは“内視鏡”より“前処置(下剤)”のことが多い
大腸内視鏡のハードルとして多いのが、検査前に腸をきれいにする腸管洗浄です。
国内のマニュアルでは、腸管洗浄剤として 2LのPEG製剤や 1.8Lのクエン酸マグネシウム製剤などが広く用いられてきたことが記載されています。 一般社団法人 日本消化器がん検診学会 JSGCS
※実際の量・種類は、年齢、腎機能、便秘の程度などで変わります。
合併症(リスク)は「ゼロではないが、低い」
内視鏡検査は適切に行えば安全性が高い一方で、穿孔(腸に穴があく)や出血などの偶発症リスクはゼロではありません。
国内データとして、観察のみ(生検含む)の大腸内視鏡で偶発症が報告された割合などが示されています。 一般社団法人 日本消化器がん検診学会 JSGCS+1
リスクは「検査のみ」か「ポリープ切除あり」か、抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)の有無などで変わるため、主治医の説明を必ず確認してください。
鎮静剤(いわゆる“眠っている間に検査”)は?
医療機関によっては、苦痛や不安を減らすために鎮静剤を用いることがあります。
ただし鎮静剤には、検査後のふらつき等があり当日の車・バイク運転ができないなどの注意点があるため、事前に確認しましょう。
3. 大腸CT検査(CTコロノグラフィー):苦痛が少ない「もう一つの精密検査」
大腸CT(CTコロノグラフィー)とは?
CTコロノグラフィーは、直腸に小さなチューブを入れて炭酸ガスで大腸を膨らませ、CTで撮影して評価する方法です。 Cancer.gov+1
一般に鎮静が不要で、内視鏡を奥まで進めないため、内視鏡に強い抵抗がある方や、内視鏡が困難な状況で検討されます。
精度の特徴:大きいポリープほど得意、小さい病変は課題が残る
大規模試験に基づくNCIの解説では、CTCはポリープサイズ別に一定の感度が示され、6mm以上・7mm以上…などで感度が上がることが示されています。 Cancer.gov+1
デメリット:異常があれば結局「大腸カメラで確定・治療」が必要
CTで病変が疑われた場合、生検や切除はできないため、最終的には大腸内視鏡で確認・治療に進むのが一般的です。
(=“精密検査の入口”として非常に有用だが、“治療まで完結しにくい”)
被ばくは?
CT検査なので放射線被ばくがあります。NCIの解説では、単回CTCの被ばくは小さく、標準的な腹部・骨盤CTより少ない旨が述べられています。 Cancer.gov+1
4. 大腸カプセル内視鏡:飲み込むだけの「条件付きの検査」
大腸カプセル内視鏡とは?
カメラを内蔵したカプセルを飲み込み、腸内画像を記録する検査です。
日本のガイドライン解説では、大腸カプセル内視鏡が2014年に保険適用となったことが示されています。 J-STAGE
保険適用は「誰でも」ではない(適応が限定)
たとえばがんセンターの案内では、保険適用は
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大腸内視鏡をしたが癒着等で回盲部まで到達できなかった場合
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腹部手術歴などから癒着が想定され、器質的異常により大腸内視鏡が困難と判断された場合
など、内視鏡が難しい状況に限られることが明記されています。 SCCHR
メリットと注意点
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メリット:挿入による痛み・羞恥心が少ない、被ばくがない
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注意点:前処置(腸管洗浄)は必要で、検査中も追加の洗浄剤が必要になることがある/生検や切除はできないため、異常があれば別日に大腸内視鏡が必要 SCCHR
【結局どれを選ぶ?】目的別の“最適ルート”早見図
平均的リスクで、症状がない人(検診)
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便潜血検査(FIT)を定期的に受ける(日本では40歳から年1回の案内が多い) 国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト+1
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陽性なら精密検査へ(原則:大腸内視鏡) 国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト+1
症状がある人(血便、腹痛、便通変化など)
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「検診」ではなく、医療機関を受診が推奨されています 国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト
大腸カメラが難しい/抵抗が強い人
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医師と相談の上で、大腸CTや、条件が合えば大腸カプセル内視鏡を検討 NCC+1
検査別比較表
| 検査 | 位置づけ | 得意なこと | 苦手なこと | その場で治療 | 被ばく |
|---|---|---|---|---|---|
| 便潜血検査(FIT) | 一次検査 | 自宅で簡便・低負担。定期受診が重要 NCC+1 | 出血しない病変は拾いにくい | 不可 | なし |
| 大腸内視鏡(大腸カメラ) | 精密検査の中心 | 直接観察+生検+切除まで可能 NCC | 前処置が負担、偶発症リスクはゼロではない 一般社団法人 日本消化器がん検診学会 JSGCS+1 | 可能 | なし |
| 大腸CT(CTC) | 精密検査の代替/補助 | 鎮静不要になりやすい・短時間。大きめ病変に強い Cancer.gov | 小病変は課題。異常時は内視鏡が必要 Cancer.gov | 不可 | あり Cancer.gov |
| 大腸カプセル内視鏡 | 条件付きの精密検査 | 挿入しない・被ばくなし J-STAGE+1 | 適応が限定。治療不可。前処置は必要 SCCHR | 不可 | なし |
よくある質問(FAQ)
Q1. 痔があるので、便潜血陽性でも放置していい?
放置はおすすめできません。痔の出血か、ポリープ/がんによる出血かは精密検査をしないと区別できないと明記されています。 国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト
Q2. 便潜血が陰性なら、大腸がんは100%否定できる?
できません。便潜血は“出血”を手がかりにするため、陰性でも定期受診が重要です。 国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト
Q3. 陽性だったので、便潜血をもう一回やって確認していい?
再検は精密検査の代わりになりません。1日でも陽性なら精密検査が推奨されています。 国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト
Q4. 大腸カメラが怖い。代わりはある?
医師の判断で、大腸CT(CTコロノグラフィー)が選択肢になることがあります。 NCC+1
ただし、異常が見つかれば内視鏡が必要になる可能性があります。 Cancer.gov
Q5. カプセル内視鏡は誰でも保険で受けられる?
一般に適応は限定されます。内視鏡が到達できない/困難など条件があることが示されています。 SCCHR+1
たとえ話で理解する:大腸検査は「点検」→「分解整備」
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便潜血検査=定期的なオイルチェック(一次検査)
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大腸内視鏡=エンジンを開けて原因特定+修理(確定診断+切除) NCC
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大腸CT=外側からスキャンして内部を立体的に評価(ただし修理はできない) Cancer.gov
「どれが優れているか」ではなく、目的(検診か、精密検査か、治療まで必要か)に合わせて選ぶのが最も合理的です。
参考文献・出典(信頼できる一次情報中心)
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国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん検診について」 国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト
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国立がん研究センター中央病院「大腸がん検査について」 NCC
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国立がん研究センター(プレスリリース)「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン」2024年度版公開 NCC+1
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日本消化器がん検診学会「大腸がん検診マニュアル(2021年度改訂版)」 一般社団法人 日本消化器がん検診学会 JSGCS+1
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National Cancer Institute(NCI)CTコロノグラフィー解説(National CT Colonography Trial Q&A) Cancer.gov
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USPSTF(米国予防医学専門委員会)大腸がんスクリーニング推奨 USPSTF
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日本カプセル内視鏡学会(J-STAGE掲載)「カプセル内視鏡診療ガイドライン」 J-STAGE
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静岡がんセンター「大腸カプセル内視鏡検査」案内 SCCHR
執筆・監修:山形県米沢市 きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)
