健診と保険診療の違い|無症状の胃カメラ・大腸カメラをお断りする理由【山形県米沢市】
無症状で胃カメラ・大腸カメラをご希望の方へ:保険診療で受けられる条件と健診・ドックの正しい使い分け
「症状がないけれど、内視鏡で確認したい」そのお気持ちは大切です
胃がんや大腸がんは早期には症状が目立たないこともあり、「元気だけど不安だから、胃カメラ(上部内視鏡)・大腸カメラ(下部内視鏡)を受けたい」と思うのは自然なことです。
ただし当院は保険医療機関として、保険診療のルールに沿って診療を行う必要があります。結果として、無症状で“健診目的”の内視鏡をご希望の場合、当院ではお断りせざるを得ないことがあります。
このページでは、その理由と、保険で受けられる条件、そして無症状の方にとって現実的な受け方をわかりやすくまとめます。
まず押さえたい:保険診療と健診・ドックは「目的」が違います
保険診療(健康保険)は「病気やけがの治療」が目的
全国健康保険協会(協会けんぽ)も、健康保険の「療養の給付」は病気やけがをしたときの治療が対象で、日常生活に支障がないのに受ける診療(例:美容目的など)には使えない、という趣旨を説明しています。Kyoukai Kenpo
健診・人間ドックは「病気を見つける(予防・早期発見)」が目的
健診や人間ドックは、治療ではなく「チェック」が目的のため、一般的には保険適用ではなく**自費(または会社・自治体の負担)**になります。
厚生労働省の保険診療のルール解説資料でも、健康診断は療養の給付(=保険診療)の対象として行ってはならないと明記されています。Ministry of Health, Labour and Welfare
つまり、内視鏡そのものが悪い/良いではなく、目的が違うため会計(保険か自費か)が変わる、ということです。
「健診で異常が出たら」保険診療で精密検査につながります
ここが一番大事なポイントです。
健康保険組合の案内でも、健康診断・人間ドックは一般的に保険適用外だが、再検査や精密検査が必要になった場合には健康保険が適用される、と説明されています。kenpo.gr.jp
つまり、
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無症状で“念のため” → 健診/ドックの枠
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健診で要精密検査、または症状・異常所見がある → 保険診療で精密検査(内視鏡)
という流れが基本になります。
保険診療で胃カメラ・大腸カメラを行う「主な条件」
保険診療で内視鏡検査を行うためには、原則として
症状 または 検査異常などの医学的な理由 が必要です(最終判断は診察結果によります)。
胃カメラ(上部内視鏡)が保険になりやすいケース(例)
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胃痛、みぞおちの痛み、胃もたれ、食欲低下が続く
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胸やけ、呑酸(酸っぱいものが上がる)、逆流症状
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吐き気・嘔吐、つかえ感
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黒色便、貧血を指摘された、原因不明の体重減少
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胃がん検診(バリウム・内視鏡)で「要精密検査」になった
大腸カメラ(下部内視鏡)が保険になりやすいケース(例)
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血便、便に血が混じる、粘液便
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便秘や下痢が続く/便通が以前と変わった
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腹痛、腹部の張り、残便感
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貧血(特に鉄欠乏性貧血)、体重減少
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便潜血検査(大腸がん検診)で陽性
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以前に大腸ポリープ切除をしており、医師から経過観察が必要と言われている
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潰瘍性大腸炎など、経過観察が必要な病気がある
※「症状がないと思っていたけれど、よく考えると軽い胸やけが続いている」「便秘が慢性化している」など、受診時に初めて“症状として整理できる”ケースも少なくありません。大切なのは、作って話すことではなく、事実を正確に伝えることです。
無症状の方におすすめの「正しい受け方」
1)まずは自治体のがん検診・職場健診を活用する
国立がん研究センターのがん検診情報では、対策型検診の目安として
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胃がん検診:50歳以上、2年に1回(胃部X線 or 胃内視鏡)
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大腸がん検診:40歳以上、1年に1回(便潜血検査)
が示されています。国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト
無症状で「チェック目的」の方は、まずここを入り口にするのが最もスムーズです。
2)「要精密検査」になったら、結果を持って受診する
健診結果(便潜血陽性、胃がん検診で要精密など)は、医療側にとって医学的な根拠になります。
この段階で、保険診療として内視鏡精密検査につながることが一般的です。kenpo.gr.jp
3)どうしても“今すぐ内視鏡で確認したい”場合は「ドック(自費)」が基本
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仕事の都合で早く白黒つけたい
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強い不安がある
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検診の時期を待てない
こうした理由は十分理解できますが、無症状での“健診目的”内視鏡は保険の対象外という建て付けは変わりません。Ministry of Health, Labour and Welfare+1
その場合は、健診センターや人間ドック(自費)をご検討ください。
当院からのお願い(トラブルを避け、必要な方に必要な医療を届けるために)
当院が無症状の内視鏡を保険でお受けできないのは、「やりたくない」からではなく、保険医療機関として守るべきルールがあるためです。Ministry of Health, Labour and Welfare
何卒ご理解ください。
そのうえで、次のいずれかに当てはまる場合は、遠慮なくご相談ください。
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症状がある(軽くても継続している)
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健診で要精密検査と言われた
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貧血、体重減少、便潜血陽性など“検査異常”がある
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過去にポリープ切除などがあり、フォローが必要と言われている
まとめ
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**無症状での「チェック目的」内視鏡は、原則として健診・ドック(自費/会社/自治体)**が基本です。Ministry of Health, Labour and Welfare+1
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保険診療で内視鏡を行うには、症状や検査異常など医学的な理由が必要です。Kyoukai Kenpo
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健診で異常が出た場合は、精密検査として保険診療につながることがあります。kenpo.gr.jp
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胃がん検診・大腸がん検診には推奨される対象年齢・受診間隔の目安があります。国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイト
執筆・監修:山形県米沢市 きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)
