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事業所で熱中症の疑いがある人が出たときの具体的対応手順

[2025.06.27]

事業所における熱中症発症時の対応マニュアル

 

【緊急対応フェーズ】

▶ 状況発見時の即時行動(5分以内)

【現場作業員/目撃者】

  1. 異変を察知したらすぐに声かけ:「大丈夫ですか?気分悪くないですか?」

  2. 明らかに異常(ふらつき・意識低下)であれば、その場で動かさず、すぐに上司・班長を呼ぶ

  3. 同時に以下の3点を報告

    • 誰が(氏名・年齢)

    • どこで(現場名・階数)

    • どんな状態(意識がある/ない・嘔吐・けいれん など)

 

【班長/主任】

  1. 作業を一時停止させ、全体安全確保(2次災害防止)

  2. 補助者をつけて、患者を搬送(※歩行困難なら担架で)

  3. 避難先の準備指示:

    • エアコンが効いた室内 or 日陰で通気のあるスペース

    • 必要物品(保冷剤・体温計・パルスオキシメーター)を指示


【応急処置フェーズ】

▶ 5〜15分以内に以下を完了する

【応急処置担当(通常は救護係または安全衛生担当)】

① 冷却処置(同時進行)

冷やす場所 方法
保冷剤・氷嚢をタオルで巻いて当てる
脇の下 服の上からでも可。2枚の保冷剤で挟むと効果的
太ももの付け根 ズボンの上からでも構わない。体幹部の太い血管を狙う

※保冷剤がない場合:水で濡らしたタオル+うちわ/扇風機

② 水分・塩分補給(意識がある場合のみ

  • 経口補水液(OS-1)、スポーツドリンク(500mlを10分以上かけて少しずつ)

  • 塩タブレット or 塩飴を併用しても良い

  • 「冷えたお茶」や「水」は単独では脱水回復に不十分

 ③ バイタルチェック(専任または救護係)

測定項目 測定器 注意点 危険値
体温 電子体温計(腋下・耳式) 耳式の場合は正確に挿入 38.0℃以上 → 重症疑い
血圧 自動血圧計(上腕式) 電池・カフのずれ注意 上が100未満 → 要注意
SpO₂ パルスオキシメーター 爪が汚れていると誤差大 94%以下 → 救急要請

※体温計・血圧計・SpO₂は最低月1回の点検・校正・電池確認をルール化

④ 意識レベル確認(JCS簡易評価)

反応 JCSレベル 判定
すぐに答える・目が合う 0 意識清明(軽症)
呼びかけにやや遅れて反応 1〜3 意識障害軽度(中等度)
呼びかけに反応しない/開眼せず 10以上 意識障害(重症。即119番
 
【救急搬送判断フェーズ】

【責任者/安全衛生管理者】

🚑 救急要請の判断基準(1つでも該当すれば通報)

  • 意識がはっきりしない・会話が成立しない

  • 水分が自分で飲めない

  • 嘔吐・けいれん・呼吸困難がある

  • バイタルで以下のいずれかに該当:
    → 体温38.5℃以上/収縮期血圧<90/SpO₂<94%

📞119番 → 明確に「職場内で熱中症の疑い。現在意識レベルが低下しており、冷却中です」と伝える。

 

【救急車到着までに行うこと】

担当 行動
冷却係 冷却処置継続(最低3点)
情報係 通報内容を整理/救急隊へ報告用シート記入
誘導係 救急車が建物内に入れるよう、門扉開放・誘導
記録係 処置記録(時間・処置内容・水分量)を記録し、搬送先に引き継ぐ

1. 【社内報告】

  • 発生状況、対応経緯、処置内容、バイタル記録、搬送先

  • 管理者・人事・労基署提出用様式に準拠

2. 【再発防止対策の立案】

  • 発生環境の確認(WBGT値・作業内容・時間帯)

  • 予防ルールの見直し(作業中の服装・水分補給の頻度)

  • 実効性のある暑熱順化プログラムの導入検討

3. 【復職前評価】

  • 医師の診断書確認

  • 面談・業務軽減・配置転換などの措置検討

 

熱中症の軽症・中等症における事業所での対応

 1. 重症・中等症・軽症の目安(簡易判定)

項目 軽症 中等症 重症
意識 はっきりしている 少しぼんやり/返事が遅い 返事がない/反応がない
体温 ~37.9℃程度 38.0~39.0℃ 39.0℃以上
血圧 正常範囲内(上100以上) やや低下(上90~100) 上90未満
呼吸/脈拍 やや早い 明らかに速い 呼吸困難・極端な頻脈
発汗 多い 多量 or 無汗 汗が出ていない
その他症状 だるさ、立ちくらみ、軽い頭痛 吐き気、嘔吐、倦怠感、軽い意識低下 けいれん、意識消失、手足の麻痺

2. 軽症〜中等症への基本対応(救急車不要のケース)

▼ 対象:

  • 意識が明瞭で受け答えができる

  • 自力で水分を摂取できる

  • バイタルが軽度の異常(体温37.8〜38.5℃/血圧正常〜やや低下)

 

対応フロー(所要時間:30〜60分)

【1】冷却・休息環境の整備

  • エアコンの効いた室内/風通しのよい日陰に移動

  • 安静にして足を少し高くして横になる

  • 衣服をゆるめて熱放散を促す

 

【2】身体冷却(体温が下がるまで継続)

部位 方法
首・脇・足の付け根 保冷剤/氷嚢をタオルで巻いて当てる(15~30分)
全身 うちわ/扇風機で風を送る、濡れタオルで体表を拭く

 

【3】水分・塩分補給(症状が軽快するまで)

飲み物 量と頻度 備考
経口補水液(OS-1など) 100~200mlずつ、10分おき 吐き気がなければ継続
スポーツドリンク 経口補水液がない場合 甘味が強いものは薄めて使用も可
塩タブレット・飴 並行して摂取可 「水だけ」では塩分不足に注意

 

【4】バイタル確認(初回+30分後)

測定項目 観察ポイント
体温 30分で0.5~1℃下がれば良好
血圧 上100以上に回復しているか
脈拍 徐々に下がっているか(安静時60~100程度)

 

【5】30分経過後の判断と帰宅可否

状態 対応
体温・血圧が安定し、症状が改善 その日は安静を促し、帰宅を推奨(同伴付き)
軽快しない/再発傾向あり 上司判断で医療機関受診(市立救急)を手配(社用車or家族)
意識低下/水分摂取不能に進行 直ちに救急車を要請(中等症→重症へ進行)

3. 帰宅後・翌日以降の注意事項(文面渡し推奨)

本日は軽度~中等度の熱中症と判断され、現場で応急処置を実施しました。
帰宅後は以下の点にご注意ください:

  • 再び高熱・倦怠感・頭痛・吐き気があればすぐ市立病院救急を受診してください

  • その日の飲酒や長時間入浴は避けてください

  • 翌朝の体調確認を行い、不調があれば出勤を控えてください

 

 4. 中等症対応時の記録(書式例)

項目 記録例
発見日時 2025年7月14日 13:42
発見者 製造3課 山田太郎
症状 顔面紅潮、頭痛、倦怠感を訴え。歩行可能だがふらつきあり
バイタル(初回) 体温38.2℃、血圧104/68、SpO₂ 96%、脈拍112
処置内容 エアコン室に移動、冷却3点、経口補水液 300ml摂取
バイタル(30分後) 体温37.5℃、血圧112/72、脈拍94
最終判断 軽快傾向あり。自宅安静指示し同僚とともに帰宅
担当者 救護係 佐藤花子/記録者 管理係 鈴木健一

 5. その他補足

  • 軽症・中等症でも、熱中症を一度発症した人は再発リスクが高いため、1週間程度は作業強度の見直し・時短勤務・午前勤務などを配慮するのが望ましい

  • 実際の中等症例の約10〜20%が数時間以内に重症化するという報告もあり、「軽いから大丈夫」と放置しないことが肝要

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