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「風邪に抗生物質はいりません」─ 本当に体に優しい治療とは?

[2025.04.10]

【風邪に抗生物質は必要?──じつは“飲まない方がいい”理由】

 

「先生、抗生物質ください!」「前に飲んだら早く治った気がして…」

風邪で受診されたとき、こういったご希望をお持ちの方は少なくありません。しかし、結論からお伝えすると、多くの風邪に抗生物質(抗菌薬)は必要ありませんし、むしろ飲まないほうがいいのです。

 

 

■風邪の原因はウイルス。抗生物質は効きません

 

風邪(正式には「急性上気道炎」)の原因のほとんどはウイルスです。
しかし抗生物質は細菌を倒す薬で、ウイルスには全く効果がありません。

つまり、風邪に抗生物質を飲んでも「効いた気がする」だけで、実際にはウイルスをやっつけてくれていないのです。
それどころか、無意味に飲んでしまうと副作用のリスクだけを抱えることになります。

 

■副作用のリスクも知っておいてください

 

抗生物質を使うと、以下のような副作用が出ることがあります。

  • 下痢や吐き気、腹痛

  • 発疹やアレルギー反応

  • 体に必要な腸内細菌まで殺してしまう

  • 耐性菌(薬が効かない菌)を生み出す原因にもなる

つまり「効かないのに、副作用の可能性だけがある」という、割に合わない治療なのです。

 

■厚労省も「風邪に抗生物質は使わないように」と呼びかけています

 

実は、これは医師の個人的な判断ではありません。
厚生労働省が出している「抗微生物薬適正使用の手引き」でも「風邪に抗菌薬を使わないように」と明記されており、全国の医師がこの方針で診療を行っています。

また、世界中で同じように「抗生物質の乱用は避けましょう」と呼びかけが行われています。

 

■「前に抗生物質を飲んだらすぐ治った」という経験があっても…

 

前回たまたま抗生物質を飲んだあとに症状が良くなったとしても、それは自然に治るタイミングと重なっただけかもしれません。

風邪の多くは、抗生物質がなくても自分の免疫の力で数日~1週間で回復するものです。

 

■「何もしてくれない」と感じさせないために

 

「抗生物質を出さない」というと、「じゃあ何も治療してくれないの?」と思われるかもしれません。
でも、風邪を早く楽にするために解熱剤や咳止め、喉の痛みを和らげる薬などは必要に応じて処方いたします。

また、しっかりと休養をとり、水分をこまめにとって体を温めることも、何よりの治療になります。

 

■経過観察が基本。必要なときはすぐ対応します

 

今は抗生物質を使わない方がよいと判断していますが、症状が悪化したり、数日たっても良くならない場合は細菌感染や肺炎など、別の病気が隠れている可能性もあります。

そのときは、あらためて診察し、必要であれば抗生物質を含めた治療をすぐに行いますので、どうぞご安心ください。

 

■まとめ

 

  • 風邪の原因のほとんどはウイルス → 抗生物質は効きません

  • 抗生物質には副作用や耐性菌のリスクあり

  • 厚労省なども「風邪に抗菌薬は使わない」と明確に示しています

  • 本当に必要な場合は、あとから抗生物質を使う選択もできます

 

「何もしない」のではなく、「必要のない薬は出さない」というのが、本当に体にとって優しい医療です。
きちんと経過を見て、必要なときに必要な治療をしていきましょうね。

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