脂っこい食事の後に右上腹部が痛い|胆石の症状と腹部エコーを受ける目安
脂っこい食事の後に、右の肋骨の下あたりが痛くなる――。このような症状がある場合、胆石発作は考えられる原因の一つです。
胆石の痛みは、右上腹部だけでなく、みぞおちに現れることもあります。痛みが右肩や背中へ広がったり、吐き気や嘔吐を伴ったりすることもあります。特に、高脂肪の食事を取った数時間後や夜間に症状が出る場合は、胆石を疑う材料になります。
ただし、「脂っこい食事の後に右上腹部が痛い=胆石」とは断定できません。胃や十二指腸、肝臓、膵臓、右腎、肺や胸膜などの病気でも、似た場所に痛みが生じることがあります。症状を繰り返す場合は、自己判断で食べ過ぎや胃もたれと決めつけず、消化器内科などで腹部エコーと血液検査を受けることが大切です。
結論
脂っこい食事の後に起こる右上腹部痛は、胆石の可能性があります。痛みが治まっていても、同じ症状を繰り返すなら、早めに腹部エコーを受けましょう。強い持続痛、発熱、黄疸、嘔吐などがある場合は、予約検査を待たず当日中の受診が必要です。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、個別の診断を行うものではありません。
高脂肪な食事の後に胆石の痛みが出るメカニズム
胆のうは肝臓の下にある袋状の臓器で、肝臓で作られた胆汁を一時的に蓄えています。食事をすると胆のうが収縮し、脂肪の消化を助ける胆汁を十二指腸へ送り出します。
胆のうの出口付近に結石があると、食後の胆のう収縮によって結石が胆のう管にはまり、胆汁の流れが一時的に妨げられることがあります。このとき胆のう内の圧力が上がり、胆石発作として痛みが生じます。高脂肪食の後や、食後数時間が経過した夜間に症状が出やすいことが、日本消化器病学会の情報でも示されています。
胆石発作を疑うべき痛みの特徴
胆石による痛みには、次のような特徴があります。
| 確認する項目 | 胆石発作にみられやすい特徴 |
|---|---|
| 痛む場所 | 右上腹部、右の肋骨の下、みぞおち |
| 起こるタイミング | 脂っこい食事の後、食後数時間後、夜間 |
| 痛みの持続時間 | 30分前後以上続き、数時間に及ぶことがある |
| 痛み方 | 強く締め付けられるような、比較的持続する痛み |
| 痛みの広がり | 右肩、右肩甲骨周辺、背中 |
| 伴いやすい症状 | 吐き気、嘔吐、冷汗など |
| 炎症を伴った場合 | 発熱、右上腹部の強い圧痛 |
| 胆管が詰まった場合 | 黄疸、濃い尿、白っぽい便など |
胆石発作は胆道疝痛と呼ばれますが、腸の疝痛のように痛みが強くなったり弱くなったりするとは限りません。実際には、強い痛みが一定時間続くことがあります。
なお、痛む場所が右上腹部ではなく、みぞおちだけという人もいます。右上腹部に痛みがないからといって、胆石を完全に否定することはできません。
胆石発作・急性胆のう炎・急性胆管炎の違い
胆石による症状は、結石の詰まり方や炎症の有無によって緊急度が変わります。
胆石発作
結石が一時的に胆のう管をふさぎ、その後に詰まりが解除された状態です。右上腹部やみぞおちに強い痛みが出ますが、数時間以内に軽くなることがあります。通常は発熱や黄疸を伴いません。
痛みが治まったとしても、胆石そのものがなくなったとは限りません。日本消化器病学会のガイドラインでは、初回発作後1年以内に症状を繰り返す患者が約半数いるとされています。
急性胆のう炎
胆のう管の詰まりが続き、胆のうに炎症が生じた状態です。右上腹部痛が治まらず、押したときの強い痛みや発熱を伴うことがあります。
診断には、右上腹部の痛みや圧痛、発熱・白血球・CRPなどの炎症所見、腹部エコーで確認される胆のうの腫れや壁の肥厚などを組み合わせます。
ただし、発熱がないから胆のう炎ではないとは言い切れません。急性胆のう炎の一部では、発熱や白血球増加がみられないことも報告されているため、強い痛みが続く場合は熱の有無だけで判断しないことが重要です。
急性胆管炎
胆管に結石が詰まり、胆汁の流れが悪くなったところへ細菌感染が加わった状態です。上腹部痛に加えて、発熱・悪寒や黄疸が現れます。
重症化すると血圧低下や意識障害を起こすこともあり、緊急の治療や胆汁を排出する処置が必要になります。
腹部エコー検査を受ける目安
胆石が疑われる症状がある場合、日本消化器病学会のガイドラインでは、病歴・診察に加えて、血液検査と腹部超音波検査(腹部エコー、腹部US)を行うことが推奨されています。右上腹部痛や胆道疾患が疑われる場合、腹部エコーは最初に行う画像検査として位置づけられています。
すぐに救急外来を受診すべき症状
次の症状がある場合は、通常の外来予約や後日の腹部エコーを待たず、救急外来を受診してください。
- 突然始まった、我慢できないほどの強い腹痛
- 右上腹部やみぞおちの痛みが背中まで広がり、嘔吐している
- 高熱、悪寒、震えがある
- 皮膚や白目が黄色くなった
- 意識がぼんやりする、反応が鈍い
- 冷汗、強い脱力、ふらつき、血圧低下を思わせる症状がある
- 胸痛、息苦しさ、冷汗を伴っている
強い腹痛と嘔吐、背部痛は、胆石による急性膵炎の可能性もあります。発熱・黄疸・右上腹部痛の組み合わせは急性胆管炎を疑う重要な症状です。
当日中または早急に受診したい症状
次の場合は、可能な限り当日中に内科・消化器内科を受診してください。
- 右上腹部やみぞおちの強い痛みが30分以上続く
- 時間とともに痛みが強くなっている
- 一度軽くなっても、すぐに痛みが再発する
- 吐き気や嘔吐で水分が取れない
- 右上腹部を軽く触れただけでも強く痛む
- 以前に胆石を指摘されており、新たに痛みが出た
30分を超えて続く腹痛は、胆石発作を疑って早めに医療機関へ相談する目安になります。
早めに外来で腹部エコーを受けたい症状
現在は痛みが治まっていても、次のような症状を繰り返す場合は、消化器内科または内科で腹部エコーを相談しましょう。
- 揚げ物、焼き肉、ラーメンなどの後に右上腹部が痛む
- 食後数時間してから、右の肋骨の下が痛くなる
- 夜中に右上腹部痛やみぞおちの痛みで目が覚める
- 痛みが右肩や右の肩甲骨周辺へ広がる
- 腹痛とともに吐き気が出る
- 同じような痛みを何度も繰り返している
- 健康診断などで胆石や肝機能異常を指摘されたことがある
一度だけの軽い違和感で完全に治まり、その後まったく再発しない場合には緊急性が低いこともあります。しかし、再発や痛みの増強といった変化があれば、早めの検査が必要です。
腹部エコー検査でわかること
腹部エコーは、体の表面から超音波を当てて、胆のうや肝臓、胆管などを観察する検査です。放射線被ばくがなく、体への負担が少ないため、胆石や胆のう炎が疑われる際の第一選択となります。
腹部エコーでは主に、次の点を確認します。
- 胆のう内に結石や胆泥があるか
- 胆のうが腫れていないか
- 胆のうの壁が厚くなっていないか
- 胆のう周囲に液体がたまっていないか
- 胆管が拡張していないか
- 検査用プローブで胆のう付近を押した際に強く痛むか
急性胆のう炎では、胆のう腫大、壁の肥厚、嵌頓した胆石、胆のう周囲の液体貯留などが重要な所見になります。
腹部エコーとCT検査の違いと診断の精度
腹部エコーは胆のう結石の診断に有用ですが、すべての胆道疾患を一度の検査で完全に否定できるわけではありません。
体格や胆のうの位置などによって胆のうが見えにくいことがあります。また、総胆管は全体を観察できないことがあり、総胆管結石が腹部エコーだけでは確認できない場合もあります。
症状や血液検査から胆管結石などが疑われる場合には、次の検査が追加されます。
- CT検査
- MRI・MRCP
- 超音波内視鏡検査(EUS)
なお、CTが腹部エコーより常に優れているわけではありません。胆石の種類によってはCTに写りにくく、特にカルシウム成分の少ない純コレステロール結石はCTで確認できないことがあります。そのため、「CTで胆石が見えなかったから胆石ではない」とは限りません。
腹部エコーと併せて行う血液検査
胆石が疑われる場合、腹部エコーだけでなく血液検査も重要です。
血液検査では、白血球やCRPなどの炎症反応、肝臓・胆道系の数値、ビリルビンなどを確認します。炎症反応が高ければ急性胆のう炎、肝胆道系の数値やビリルビンが上昇していれば総胆管結石や胆管炎などが疑われます。
症状、診察、血液検査、画像検査を総合して判断するため、腹部エコーの結果だけで自己診断しないことが大切です。
受診すべき診療科と医師へ伝えるべき内容
痛みが治まっており、外来で検査を希望する場合は、消化器内科が第一候補です。近くに消化器内科がなければ、一般内科でも構いません。
胆石が確認され、手術が必要と判断された場合には、消化器外科や外科へ紹介されます。発熱、黄疸、強い持続痛、嘔吐などがある場合は、診療科を探して待つのではなく救急外来を受診してください。
受診時には、以下をメモしておくと診断に役立ちます。
- 何を食べた後に痛んだか
- 食後何時間で始まったか
- 痛みが何分・何時間続いたか
- 右肩や背中への痛みがあったか
- 発熱、吐き気、嘔吐、黄疸があったか
- 過去に同じ発作があったか
検査前の注意事項と絶食について
胆のうを観察する腹部エコーでは、胆のうを見やすい状態に保つため、検査前に食事を控えるよう指示されることがあります。医療機関によって異なりますが、検査前約6時間の絶食を求める施設もあります。水分や薬の扱いを含め、必ず予約した施設の指示に従ってください。
糖尿病がある人や、絶食によって体調を崩す可能性がある人は、予約時に医療機関へ相談しましょう。
ただし、激しい痛みや発熱がある場合は、検査のための絶食準備よりも受診を優先してください。
胆石の治療と手術の必要性
胆石が見つかっても、すべての人が直ちに手術を受けるわけではありません。
症状のない胆のう結石は、原則として経過観察になることが多い一方、痛みなどの症状がある胆のう結石では、腹腔鏡下胆のう摘出術が検討されます。総胆管に結石がある場合は、急性胆管炎や急性膵炎につながる可能性があるため、内視鏡による結石除去が行われます。
手術や治療の必要性は、次の要素をもとに判断されます。
- 痛みなどの症状があるか
- 発作を繰り返しているか
- 胆のう炎や胆管炎を合併しているか
- 胆石が胆のう内か総胆管内か
- 胆のう壁の状態
- 年齢や持病、全身状態
受診までの間は、症状を誘発した揚げ物や脂肪の多い食事を控えることが役立つ場合があります。ただし、食事を変えるだけで胆石の有無や合併症を判断することはできません。痛みが治まっても、必要な検査は受けましょう。
よくある質問
痛みが治まったら、腹部エコーは受けなくてもよいですか?
同じような食後の痛みを繰り返している場合は、痛みが治まっていても腹部エコーを受けることをおすすめします。結石の詰まりが一時的に解除されれば痛みは軽くなりますが、胆石自体が残っている可能性があります。胆石発作は再発することがあり、胆のう炎や胆管炎などの合併症につながる場合があります。
発熱がなければ急性胆のう炎ではありませんか?
発熱がなくても、急性胆のう炎を完全には否定できません。特に痛みが続く、右上腹部を押すと強く痛む、吐き気が強いなどの場合は、熱がなくても受診してください。
胃薬で痛みが軽くなれば胆石ではありませんか?
薬を飲んだ後に痛みが軽くなったという経過だけでは、胆石を否定できません。時間の経過とともに結石の詰まりが解除され、自然に症状が軽くなった可能性もあります。症状が繰り返す場合は検査が必要です。
腹部エコーで胆石が見つからなければ安心ですか?
腹部エコーで胆のうが十分に観察できなかった場合や、総胆管結石が疑われる場合には、MRI・MRCP、CT、超音波内視鏡などの追加検査が必要になることがあります。症状や血液検査に異常がある場合は、エコーが正常でも医師の指示に従ってください。
健康診断で胆石を指摘されましたが、症状はありません
症状のない胆のう結石は、多くの場合、経過観察となります。ただし、新たに右上腹部痛、発熱、黄疸、吐き気などが出た場合は、有症状の胆石や合併症を疑って再評価を受ける必要があります。
まとめ
脂っこい食事の後に起こる右上腹部痛やみぞおちの痛みは、胆石発作の可能性があります。特に、痛みが30分以上続く、右肩や背中へ広がる、吐き気を伴う、同じ症状を繰り返す場合は、消化器内科で腹部エコーと血液検査を受けましょう。
一方、強い持続痛、発熱・悪寒、黄疸、繰り返す嘔吐、意識状態の変化などがある場合は、急性胆のう炎、急性胆管炎、胆石性膵炎などの可能性があります。通常の外来予約を待たず、速やかに救急外来を受診してください。
執筆・監修:山形県米沢市 きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)
