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右側大腸がんは血便が出にくい?貧血・だるさで見つかる理由と検査|山形県米沢市

[2026.09.20]

「血便がないから、大腸がんではない」と考えるのは危険です。特に、盲腸や上行結腸などに発生する右側大腸がん(右側結腸がん)では、目で見て分かる血便や便の細さが目立たず、健康診断の貧血、疲れやすさ、息切れなどをきっかけに見つかることがあります。

 

結論からいうと、右側大腸がんも出血します。しかし、出血が少量ずつ、あるいは間欠的に起こり、血液が便の中に混ざって見えにくくなるため、「血便」ではなく「鉄欠乏性貧血」として現れることがあるのです。

 

とくに男性や閉経後女性で新たに鉄欠乏性貧血が見つかった場合は、鉄剤を飲むだけで済ませず、消化管からの慢性出血がないかを確認することが重要です。

 

 

 

右側大腸の部位と解剖学的特徴

 

大腸は、小腸につながる右下腹部の盲腸から始まり、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸へ続きます。

 

一般に「右側大腸」は、盲腸と上行結腸を中心とした大腸の口側を指します。ただし、横行結腸をどこまで含めるかは研究や診療上の定義によって異なります。

 

右側大腸では便がまだ液状に近く、腸管の内腔も比較的広いため、病変がある程度大きくなっても、便が細くなる、便が出なくなるといった通過障害が起こりにくい傾向があります。

 

右側大腸がんで血便が目立ちにくい3つの理由

 

1.肛門までの距離が長く血液が便に混ざるため

 

直腸やS状結腸から出血すると、赤い血が便の表面に付着して見えることがあります。一方、右側大腸は肛門から遠く、出血した血液が便と混ざりながら長い距離を移動します。このため、鮮やかな赤い血として気づきにくくなります。

 

2.少量の出血を断続的に繰り返すため

 

大腸がんは毎日同じ量だけ出血するとは限りません。少量の出血を繰り返していても、便の色や見た目に変化がない場合があります。国立がん研究センターも、大腸がんからの出血は間欠的であるため、便潜血検査では2日分の便を採取すると説明しています。

 

3.右側では便が液状で血液が均一に混ざりやすいため

 

右側大腸では便の水分が多く、出血した血液が便全体に薄く混ざりやすくなります。また、便が大腸内を移動する間にヘモグロビンが分解されることも、肉眼や便潜血検査で捉えにくくなる一因と考えられています。

 

免疫学的便潜血検査の研究では、左側病変より右側の進行した腫瘍性病変で感度が低かったとの報告があります。ただし、研究結果は検査法、陽性判定値、病変の形や対象集団によって異なります。したがって、便潜血検査は有用ですが、陰性だけで右側大腸がんを完全に否定することはできません。

 

なぜ貧血やだるさが初期症状として見つかるのか

 

右側大腸がんから微量の出血が長く続くと、体内の鉄が少しずつ失われます。最初は貯蔵鉄を示すフェリチンが低下し、その後、赤血球中のヘモグロビンが減って鉄欠乏性貧血になります。

 

ヘモグロビンには酸素を全身へ運ぶ役割があります。貧血が進むと組織へ十分な酸素を届けにくくなり、次のような症状が現れます。

  • 以前より疲れやすい、体がだるい
  • 階段や坂道で息切れする
  • 動悸がする、脈が速い
  • めまい、立ちくらみ
  • 顔色が悪いといわれる
  • 頭痛、集中力の低下
  • 爪がもろい、氷を無性に食べたくなる

 

出血がゆっくり進むと体が貧血に慣れてしまい、ヘモグロビンがかなり低下するまで症状に気づかない人もいます。反対に、貧血になる前の鉄欠乏だけで、だるさや集中力低下を感じる場合もあります。

 

右側大腸がんと左側大腸がんの症状の違い

 

病変の位置 比較的みられやすい症状 見逃しにつながりやすい点
右側大腸 鉄欠乏性貧血、だるさ、息切れ、体重減少、腹部の違和感 肉眼的な血便や便の細さが目立たないことがある
左側大腸 血便、便秘と下痢の繰り返し、便が細い、腹痛、腸閉塞 痔の出血や便秘と思い込まれることがある
直腸 便の表面の血液、残便感、排便回数の増加 痔と自己判断されやすい

 

これはあくまで傾向です。右側大腸がんで赤い血便が出ることも、左側大腸がんが貧血だけで見つかることもあります。症状だけで発生部位や病気を断定することはできません。

 

健康診断で貧血を指摘されたら確認したい検査数値

 

貧血の評価では、ヘモグロビンだけでなく、体内の鉄不足があるかを総合的に確認します。

 

検査項目 確認する内容とポイント
ヘモグロビン(Hb) 貧血の程度を評価する基本的な指標
MCV・MCH 赤血球の大きさやヘモグロビン量を測る指標
フェリチン 体内に蓄えられた貯蔵鉄の目安
血清鉄・TIBC・UIBC・TSAT 血液中を循環している鉄の状態を把握する指標
CRP 体内の炎症の有無を判断する参考指標

 

鉄欠乏性貧血では、典型的にはフェリチンが低下し、赤血球が小さくなる小球性貧血を示します。しかし、初期の鉄欠乏ではMCVが正常なことがあります。また、炎症、感染症、がん、慢性腎臓病などがあるとフェリチンが見かけ上正常または高値になることがあり、MCVやフェリチンが正常だから鉄欠乏ではないと言い切ることはできません。検査結果は全体を組み合わせて判断します。

 

男性や閉経後女性の鉄欠乏性貧血は消化管の確認が重要

 

月経のある女性では月経による鉄喪失が多い一方、男性と閉経後女性では、鉄欠乏性貧血の背景に胃や大腸からの慢性出血が隠れていることがあります。

 

大腸がんだけでなく、大腸ポリープ、胃・十二指腸潰瘍、胃がん、炎症性腸疾患、薬剤による粘膜障害なども鑑別が必要です。米国消化器病学会(AGA)の診療ガイドラインでは、男性および閉経後女性の鉄欠乏性貧血に対し、原則として上部消化管内視鏡と大腸内視鏡による消化管評価が推奨されています。

 

もちろん、鉄欠乏性貧血のすべてががんを意味するわけではありません。しかし、鉄剤で数値が改善しても、出血源が残っていれば再び貧血になる可能性があります。鉄を補うことと、鉄が失われた原因を調べることは別の問題です。

 

月経のある女性でも、貧血が強い、治療しても再発する、月経量だけでは説明しにくい、腹部症状・体重減少・便潜血陽性・大腸がんの家族歴がある場合などは、消化管検査を検討します。

 

便潜血検査が陰性でも大腸がんの可能性はあるのか

 

便潜血検査が陰性であっても、大腸がんを完全には否定できません。

 

便潜血検査は、症状のない人を対象とした大腸がん検診として有用です。しかし、がんからの出血は毎日続くとは限らず、採便した日に出血していなければ陰性になることがあります。右側病変では血液が便に均一に混ざることや、移動中にヘモグロビンが分解されることも影響すると考えられています。

 

次のような場合は、便潜血検査の結果だけで判断せず、医療機関へ相談してください。

  • 原因不明の鉄欠乏性貧血がある
  • ヘモグロビンが以前より低下している
  • だるさ、息切れ、動悸が続く
  • 体重減少や食欲低下がある
  • 腹痛や腹部膨満が続く
  • 便通の変化が続く
  • 大腸がんや大腸ポリープの家族歴がある

 

一方、便潜血検査が1日分でも陽性なら、再度の便潜血検査で様子を見るのではなく、原則として大腸内視鏡による精密検査が必要です。

 

右側大腸がんを調べるために行う精密検査

 

1.血液検査

貧血の種類と程度、鉄欠乏の有無を確認します。肝機能、腎機能、炎症反応なども調べ、ほかの貧血原因がないかを評価します。

 

2.大腸内視鏡検査(大腸カメラ)

右側大腸を含む大腸全体を直接観察できる中心的な検査です。病変があれば組織を採取して病理診断を行い、切除可能なポリープであれば内視鏡的に切除できることもあります。

 

右側大腸を評価するためには、内視鏡を盲腸まで到達させ、洗浄度のよい状態で粘膜を丁寧に観察することが重要です。下剤による前処置が不十分な場合や、痛み・癒着・狭窄などで盲腸まで観察できなかった場合は、医師と追加検査や再検査について相談します。

 

3.胃内視鏡検査(胃カメラ)

 

鉄欠乏性貧血の出血源は大腸だけとは限りません。胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん、萎縮性胃炎などを調べるため、年齢、症状、血液検査、薬剤歴などに応じて胃カメラも検討します。

 

4.CT検査など

 

CTは、腫瘍による腸管の狭窄、周囲臓器への広がり、リンパ節や肝臓・肺への転移を調べる際に重要です。ただし、早期がんや平坦な病変、小さなポリープは通常の腹部CTで分からないことがあります。CTで異常なしは大腸粘膜に病変なしと同じではありません。

 

腫瘍マーカー検査の位置づけ

 

CEAやCA19-9が正常でも大腸がんは否定できません。腫瘍マーカーは、症状のない人から大腸がんを見つけるための単独の検診検査ではなく、主に診断後の病状評価や経過観察の参考として使われます。

 

早めの受診が望ましいケースと受診の目安

 

次に該当する場合は、次回の健康診断を待たずに医療機関へ相談しましょう。

  • 男性または閉経後女性で鉄欠乏性貧血を指摘された
  • 鉄剤を中止すると貧血を繰り返す
  • 原因不明のフェリチン低値が続く
  • 以前よりヘモグロビンが低下している
  • 便潜血検査が1回でも陽性だった
  • 血便、黒っぽい便、体重減少、便通異常がある
  • 近親者に大腸がんや多数の大腸ポリープがある
  • 過去の大腸カメラで右側大腸まで観察できていない

 

すぐに医療機関へ相談すべき危険な症状

 

安静にしていても息苦しい、胸痛、失神、強い動悸、大量の血便、真っ黒でタール状の便、強い腹痛や嘔吐、便もガスも出ないといった症状がある場合は、重度の貧血や消化管出血、腸閉塞の可能性があります。夜間・休日でも救急受診を検討してください。

 

右側大腸がんに関するよくある質問

 

右側大腸がんでは、まったく血便が出ないのですか?

いいえ。右側大腸がんでも血便が出ることはあります。ただし、血液が便に混ざって肉眼では分からない「潜血」になり、貧血が最初の手掛かりになることがあります。

 

便潜血検査が2回とも陰性なら安心ですか?

陰性はリスクを下げる情報ですが、大腸がんを完全に否定するものではありません。鉄欠乏性貧血、体重減少、持続する腹痛や便通変化などがあれば、陰性でも診察を受けてください。

 

ヘモグロビンがいくつなら大腸カメラが必要ですか?

大腸カメラの必要性を決める一律のヘモグロビン値はありません。性別、年齢、閉経の有無、以前からの変化、フェリチン、症状、月経量、薬剤、家族歴などを総合して判断します。軽度の貧血でも、新しく発生した鉄欠乏性貧血であれば原因検索が必要になることがあります。

 

鉄剤を飲んで貧血が改善すれば、検査は不要ですか?

改善しても、鉄が失われた原因が解決したとは限りません。特に男性や閉経後女性では、鉄剤への反応だけを理由に消化管検査を省略しないことが大切です。

 

貧血がなくても右側大腸がんになることはありますか?

あります。早期では症状も血液検査の異常もないことがあります。そのため、症状のない40歳以上の方には、年1回の便潜血検査による大腸がん検診が推奨されています。

 

腹部エコーや通常のCTで異常がなければ安心ですか?

大きな腫瘤や転移の評価には役立ちますが、早期がんや小さな病変を完全に除外することはできません。大腸粘膜を詳しく調べ、必要に応じて組織を採取できる検査は大腸カメラです。

 

まとめ|血便がないことを安心材料にしすぎないでください

  • 右側大腸がんも出血しますが、血液が便に混ざり、肉眼的な血便として気づきにくいことがあります。
  • 少量の慢性出血により、鉄欠乏性貧血、だるさ、息切れ、動悸が最初の症状になることがあります。
  • 便潜血検査は重要ですが、陰性でも大腸がんを完全には否定できません。
  • 男性・閉経後女性の原因不明の鉄欠乏性貧血では、大腸カメラを中心に、必要に応じて胃カメラも検討します。
  • 鉄剤で改善しても、出血の原因を調べることが大切です。

 

山形県米沢市のきだ内科クリニックでは、健診で指摘された貧血、便潜血陽性、血便、便通異常などについて診察し、必要性を判断したうえで胃カメラ・大腸カメラをご案内しています。血便がなくても、原因不明の鉄欠乏性貧血やだるさが続く場合はご相談ください。

 

きだ内科クリニック公式サイト

 

※本記事は一般的な医学情報です。個々の症状や検査結果によって必要な検査は異なります。自己判断で鉄剤や抗血栓薬などを中止せず、医師へご相談ください。

 

参考資料

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん)について」
  2. 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん) 検査」
  3. 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん検診について」
  4. Ko CW, et al. AGA Clinical Practice Guidelines on the Gastrointestinal Evaluation of Iron Deficiency Anemia. Gastroenterology. 2020.
  5. Haug U, et al. Sensitivity of immunochemical faecal occult blood testing for detecting left- vs right-sided colorectal neoplasia. Br J Cancer. 2011.

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