冬の血圧が上がる理由と対策|モーニングサージ・ヒートショックを防いで脳卒中/心筋梗塞リスクを下げる
冬は血圧が上がりやすい季節:モーニングサージとヒートショックを防ぐ“安全な過ごし方”
冬になると「血圧がいつもより高い」「朝が特に高い」「お風呂でドキドキする」と感じる方が増えます。これは気のせいではなく、寒さに対する体の自然な防御反応(血管を縮めて体温を守る反応)によって、血圧が上がりやすくなるためです。日本高血圧学会も、冬の寒冷刺激が血圧を上昇させ、重大な心血管イベント(心筋梗塞・脳卒中)が起こりやすくなることを注意喚起しています。
さらに重要なのは、冬は「ただ血圧が高くなる」だけでなく、**起床時の急上昇(モーニングサージ)**や、**入浴時の急な温度差(ヒートショック)**など、血圧が“乱高下”しやすい場面が多いことです。実際に日本の大規模データでも、脳卒中の発症が冬に多いことが報告されています。
心筋梗塞も冬に増える傾向が複数の研究で示され、月別では1月に死亡が多いという報告もあります。
この記事では、冬の血圧変動をできるだけ小さくし、安全に冬を乗り切るための具体策を、生活の場面別に整理して解説します。
冬に血圧が上がる理由:いちばんの敵は「寒さ」と「温度差」
寒い環境では、体温が逃げないように末梢の血管が収縮しやすくなります。血管が細くなると血流の抵抗が増え、心臓は同じ量の血液を送るためにより強い力が必要になり、結果として血圧が上がりやすくなります(冬の高血圧)。
そして冬の生活には、血圧を揺さぶる「温度差イベント」が詰まっています。
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布団(温)→寝室・廊下(冷)→活動開始(交感神経↑)
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リビング(温)→脱衣所・浴室(冷)→湯船(熱)→浴室外(冷)
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起床直後、トイレ、早朝の外出、雪かき など
冬の血圧管理は、言い換えると
「体を急に冷やさない」「体を急に温めすぎない」「急に動かない」
の3点セットが核になります。
起床時が危ない:モーニングサージを抑える“朝のルーティン”
モーニングサージとは?
血圧は目覚めとともに自然に上がります。これがモーニングサージ(早朝の血圧上昇)です。冬は室温が低くなりやすく、寒冷刺激が加わって上昇幅が大きくなりがちです。
1)起きる前に寝室を温める(“布団の外”を冷たくしない)
WHOの住環境に関するガイダンスでは、寒冷季の室内温度として**18℃**が健康を守る目安として提案されています。
実生活では、特に高齢者や高血圧の方は「最低でも18℃」を下回らない工夫が現実的です。
おすすめ
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暖房タイマーで起床30〜60分前から暖める
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寝室と廊下の温度差を小さくする(小型暖房・断熱・すき間対策など)
2)“起き上がる前”に布団の中で予備運動
起きてすぐにガバッと動くと、寒さ+姿勢変化+活動開始が重なります。
布団の中で30〜60秒
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手足のグーパー
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足首を回す
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ふくらはぎを軽く動かす
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深呼吸を数回
3)床の冷えを避ける(足元は血圧のスイッチ)
足裏が冷たい床に触れるだけでも交感神経が刺激されやすい人がいます。
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ベッド脇に室内履き
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できれば靴下+スリッパ(滑りにくいもの)
4)朝イチの“家庭血圧”を味方にする
冬の血圧対策で最も効果的なのは、結局のところ**「自分の血圧の動き方を知る」**ことです。
家庭血圧測定は、少なくとも朝と夜が基本で、朝は
起床後1時間以内/排尿後/朝食・服薬前/座って1〜2分安静後
が推奨されます。夜は就寝前に同様に座って安静後に測定します。
入浴が危ない:ヒートショックを防ぐ“安全なお風呂の入り方”
ヒートショックは、暖かい部屋から寒い脱衣所・浴室へ移動し、さらに熱い湯に入ることで、血圧が大きく変動し、失神や事故につながり得る状態です。政府広報や消費者庁も冬場の入浴事故について注意喚起し、対策を具体的に示しています。
1)脱衣所・浴室を先に温める(温度差を小さく)
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浴室暖房、脱衣所の暖房
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湯気で浴室を温める(追い焚き・ふたを開ける など)
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温度計で「見える化」すると対策が続きやすい
2)湯温は41℃以下、湯船は10分までを目安に
消費者庁は、冬の入浴事故予防として
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湯温は41℃以下
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湯につかる時間は10分までを目安
を挙げています。
「熱いお湯が好き」「長湯が好き」な方ほど、冬はリスクが上がりやすいので、まずここを見直すのが最重要です。
3)いきなりドボンは避ける:かけ湯で“段階的に”
政府広報でも、いきなり入らず手足からかけ湯で慣らすことが推奨されています。
4)入浴前後の水分補給+一声かけ(特に高齢者)
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入浴前後にコップ1杯を目安に水分補給
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同居家族がいるなら入浴前に声かけ(見守り)
5)飲酒後・食後すぐ・眠気が強い薬の後は避ける
消費者庁は、飲酒後や食後すぐ、医薬品服用後の入浴を避けることも注意点に挙げています。
食事と生活リズム:冬の“血圧が上がる習慣”を先回りで潰す
冬は鍋、漬物、麺類、加工食品などで塩分が増えやすい季節です。塩分過多は血圧を押し上げやすいため、冬は特に「減塩」を意識すると効果が出やすい分野です。
減塩の目標:1日6g未満を目安に
日本高血圧学会のガイドラインの要点として、食塩摂取は1日6g未満が推奨されています。
すぐ効く減塩テク
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麺類のスープは残す
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汁物は具だくさん+汁少なめ
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“かける塩”より“だし・香辛料・酸味”で満足度を上げる
カリウムは「使い方」が大事
野菜・果物などのカリウムは塩分バランスに役立つことがありますが、腎機能が低下している方(慢性腎臓病など)では制限が必要な場合があります。自己判断でサプリなどを追加せず、通院中の方は医師に相談してください。
運動は“暖かい時間帯+準備運動”が基本
運動は血圧管理に有益ですが、冬は「開始時の急上昇」を避ける工夫が大切です。
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早朝や極寒の時間帯は避ける
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まず室内で軽く体を温めてから外へ
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息を止めて力む運動(重い筋トレなど)はやり方に注意
家庭血圧は“冬の安全運転メーター”:測り方と目安
測定タイミング(基本)
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朝:起床後1時間以内/排尿後/朝食・服薬前/座位で1〜2分安静
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夜:就寝前/座位で1〜2分安静
「どのくらいなら相談?」の目安
家庭血圧の基準として、135/85mmHgがひとつの重要な目安として使われます。
冬は一時的に上がることもありますが、
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家庭血圧が何日も続けて高い
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夏より明らかに上がった
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頭痛・息切れ・胸の違和感・めまいなどがある
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薬を飲んでいるのに上がってきた
こうした場合は、記録を持って医療機関へ相談するのが安全です。
※治療目標は年齢・持病・ふらつきの有無などで個別に決まります。最近のガイドラインではより低い家庭血圧目標が示されることもありますが、自己判断で薬を増減しないでください。
こんなときは迷わず受診・救急:冬の“見逃してはいけない症状”
脳卒中を疑う症状(突然起こる)
公益社団法人 日本脳卒中協会は、脳卒中の主な症状として
片側の麻痺・しびれ、ろれつが回らない、言葉が出ない、ふらつき、視野異常、経験したことのない激しい頭痛などを挙げ、疑うときは救急車を呼ぶことを勧めています。
心筋梗塞を疑う胸痛(我慢しない)
日本心臓財団は、胸の痛みなどが長く(20分以上)続くなど急性心筋梗塞が疑われる場合、状態が落ち着いていても救急車を呼ぶ重要性を示しています。
まとめ:冬の血圧を守る10のコツ
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寝室は寒くしすぎない(最低18℃の考え方)
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起床前に部屋を温め、起き上がる前に布団内で体を動かす
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足元を冷やさない(スリッパ・靴下)
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入浴前に脱衣所・浴室を温める
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湯温41℃以下、湯船10分目安
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かけ湯で段階的に温める
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入浴前後の水分+一声かけ
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減塩(食塩6g/日未満を目標)
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家庭血圧は朝・夜に測定し記録する
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脳卒中・心筋梗塞のサインは「様子見しない」
冬の血圧管理は、特別なことよりも「温度差を減らす」「急に動かない」「家庭血圧で見える化する」という基本の積み重ねがいちばん効きます。
不安がある方、持病がある方、薬を飲んでいる方は、冬の血圧記録を持参して主治医に相談し、季節に合わせた安全な管理につなげてください。
執筆・監修:山形県米沢市 きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)
