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院内勉強用:アネレム(レミマゾラムベシル酸塩)内視鏡検査用鎮静マニュアル

[2025.07.13]

🌟 アネレム(レミマゾラムベシル酸塩)内視鏡検査用鎮静マニュアル


1️⃣ 基本情報

  • 販売名: アネレム静注用20mg/50mg

  • 一般名: レミマゾラムベシル酸塩

  • 作用機序: GABA-A受容体作動、短時間作用型ベンゾジアゼピン系

  • 拮抗薬: フルマゼニル(使用時は再鎮静に注意)

  • 主な特徴: 速効性、短時間作用、肝代謝(カルボキシルエステラーゼ)、不活性代謝物


2️⃣ 調製・投与方法

  • 溶解液: 生理食塩液のみ(乳酸リンゲル不可)

  • 調製方法:

    • 20mgバイアル ➔ 生食10mL ➔ 1mg/mL溶液(20mLに調整)

    • 50mgバイアル ➔ 生食10mL ➔ 1mg/mL溶液(50mLに調整)

  • 溶解後使用期限: 24時間以内


3️⃣ 投与量(成人)

  • 初回: 3mg(15秒以上かけて静注)

  • 追加: 1mgずつ、最低2分間隔を空けて、15秒以上かけて静注

  • 上限: 検査前総量8mg超で鎮静不十分なら中止を検討

  • 某クリニックでは、初回投与量が2.5~5.0mg、追加投与量が1~2.5mg、最大投与量に定めなしとの記述もあり

4️⃣ 投与調整が必要なケース

  • 高齢者(75歳以上)・低体重(45kg未満): 初回・追加とも半量

  • ASA分類Ⅲ以上※・脳器質疾患: 減速・減量を考慮 ※高度な全身疾患を有する患者

  • 重度肝機能障害(Child-Pugh C): 減速・減量

  • 中枢抑制薬併用時: 慎重に減速・減量


5️⃣ 投与器具・モニタリング

  • 持続注入時はシリンジポンプ使用

  • モニタリング項目:

    • SpO₂、呼吸数、脈拍、血圧(可能なら心電図、呼気CO₂)

    • MOAA/Sスコア等で鎮静深度評価

  • 医師と別に、全身状態監視担当者を配置


6️⃣ 禁忌・注意

  • 禁忌:

    • アネレム過敏症

    • 急性閉塞隅角緑内障

    • 重症筋無力症

    • ショック、昏睡、急性アルコール中毒

  • 注意:

    • 肥満症、睡眠時無呼吸、小顎症、扁桃肥大など気道閉塞リスク

    • 妊婦・授乳婦:有益性を十分考慮


🌟 アネレム使用後マニュアル:病室移動・帰宅基準・副作用管理


🔷 1. 使用後の病室移動と回復管理

実施施設条件

  • 呼吸・循環をモニタリングでき、緊急時対応可能な医療施設で実施

  • 検査医師とは別に、意識・呼吸・循環を観察する医療者を配置

検査後の管理

  • リカバリールームで安静管理

  • SpO₂・呼吸数・脈拍・血圧をモニタリング(可能なら心電図・呼気CO₂も)

回復の目安

  • 覚醒時間中央値:

    • 内視鏡終了 ➔ 退室判断まで約2分

    • 最終投与 ➔ 退室判断まで約8分

  • 実臨床では:

    • 胃カメラ後5–10分程度で覚醒

    • 約30分で覚醒・1時間で歩行など日常生活動作可能


🔷 2. 帰宅基準と患者指導

帰宅判断条件

  • 意識清明、呼名応答OK

  • 平衡感覚・歩行可能

  • バイタル安定

患者・家族への注意事項

  • 当日中は:

    • 自動車・自転車運転禁止

    • 危険作業・重要判断業務禁止

    • 激しい運動・飲酒禁止

  • 可能な限り付き添い同伴で来院・帰宅

  • 食事は医師確認後から可能


🔷 3. 副作用管理と対応

重大な副作用と対応例

副作用 発現頻度 対応例
徐脈 約2.1% 抗コリン薬(例:アトロピン)静注
低血圧 約5.5–26% 頭低位、必要時血漿増量剤・昇圧薬投与
低酸素症・呼吸抑制 2.4–12.9% 気道確保、酸素投与、人工呼吸
覚醒遅延 頻度不明 バイタル監視、必要時フルマゼニル(再鎮静注意)
ショック・アナフィラキシー 頻度不明 緊急対応、アドレナリン等使用、デキストラン40含有に注意

その他の副作用(1–10%未満)

  • 頭痛、傾眠、悪心、嘔吐、悪寒、倦怠感など(多くは軽度、処置で改善)

準備すべき薬剤・器具

  • フルマゼニル

  • 抗コリン薬(アトロピン)

  • 血漿増量剤・昇圧薬

  • 酸素投与・人工呼吸器具

  • アナフィラキシー対応薬(アドレナリン等)


🔷 4. 併用薬・相互作用注意点

中枢抑制剤・麻薬・抗不安剤・局所麻酔薬・アルコールとの併用時は:

  • 投与量減量・投与速度減速が必要

  • 覚醒遅延・循環抑制リスク増大に注意


📌 まとめポイント

✅ 検査後の管理は慎重に、回復確認後に病室移動
✅ 帰宅は意識・運動機能・バイタルの回復を確認後、同伴者付き推奨
✅ 副作用には即応できる体制・薬剤を常備
✅ 他剤併用時は用量・速度調整とモニタリング強化

🌟 アネレム(レミマゾラム) vs ドルミカム(ミダゾラム)比較まとめ


🔹 薬剤概要

項目 アネレム(レミマゾラム) ドルミカム(ミダゾラム)
分類 超短時間作用型ベンゾジアゼピン系 静脈麻酔薬 短時間作用型ベンゾジアゼピン系 鎮静剤
国内承認 2020年(全身麻酔)、2025年(消化器内視鏡鎮静:追加承認) 1989年(鎮静、全身麻酔導入、局所麻酔補助など)
製剤 静注用20mg、50mg 注射液(5mg/5mLなど)、シロップ
規制区分 第三種向精神薬、習慣性医薬品、処方箋医薬品 向精神薬、習慣性医薬品、処方箋医薬品

🔹 薬理・代謝

項目 アネレム ドルミカム
作用機序 GABAA受容体作動 GABAA受容体作動
代謝経路 肝カルボキシルエステラーゼで加水分解(CYP450非関与) 肝CYP3A4代謝
主要代謝物 CNS 7054(不活性、鎮静作用は1/200) 1-ヒドロキシミダゾラム(活性代謝物あり)
排泄 尿中に主に代謝物として排泄 尿中に主に代謝物として排泄

🔹 臨床特徴

項目 アネレム ドルミカム
作用発現 極めて速い 速い
持続時間 短い(超短時間) やや短い(短時間)
鎮静レベル 穏やかで会話可能、リラックス状態 比較的深い鎮静、健忘作用あり
回復時間(検査後) 約30分~1時間で覚醒・歩行可能 数時間程度(個人差あり)、回復が遅れやすい
呼吸抑制リスク 低い 高め(特に高用量・高齢者・併用薬ありで注意)
血圧低下・脈拍減少リスク 低め 中等度
併用薬注意 少なめ(CYP系非関与のため) 多め(CYP3A4阻害薬で血中濃度上昇の可能性)
 

🔹 その他の違い・特徴

  • アネレムは超短時間型のため、鎮静の「かけ直し」がしやすく、モニタリング下での微調整が容易。

  • ドルミカムは強い健忘作用があり、患者が検査中の記憶をほぼ残さない(アネレムは軽度の健忘作用)。

  • フルマゼニル(ベンゾ拮抗薬)はどちらにも使用可能。ただしドルミカムの場合、フルマゼニルの持続時間よりドルミカムの作用時間が長いため、リバウンドに注意。


🔹 臨床選択の参考ポイント

アネレムを選ぶ場面

  • 短時間での回復を重視する場合(外来内視鏡検査)

  • 呼吸抑制リスクを減らしたい高齢者・呼吸器疾患患者

  • 鎮静調整を細かく行いたい場合

ドルミカムを選ぶ場面

  • 鎮静+強い健忘を求める場合

  • 保険診療の適用範囲内でコストを抑えたい場合


📌 まとめ

アネレムは「超短時間作用」「調整容易」「呼吸抑制少ない」という特長で、今後の内視鏡鎮静の新スタンダードになり得ますが、コスト、施設の体制が選択のカギです。
ドルミカムは長年の実績とコスト面での強みがあり、症例や施設状況に応じた使い分けが重要です。

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