逆流性食道炎の治し方|今日から効く食事・寝方・NG習慣【医師監修】
逆流性食道炎(GERD)を改善する生活指導:食事・姿勢・睡眠・運動の完全ガイド
はじめに
逆流性食道炎は、胃酸などが食道へ逆流して胸やけ・呑酸(酸っぱさが上がる)・のどの違和感・咳などを起こす病気です。
お薬(PPI/P-CAB 等)は効果的ですが、生活習慣の改善が治療の柱です。軽症なら生活改善だけで良くなることもあります。
まずはここから:今日からできる要点5
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食事は腹八分目(普段の7~8割)
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就寝2~3時間前は食べない・飲まない(水は可)
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寝る姿勢は「頭を高く」「左向き」
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体を締め付けない・前かがみを避ける
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体重をゆっくり減らす(目標:月1~2kg)
1. 食事療法(最重要)
1-1. 量と食べ方
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腹八分目を徹底(1回量=いつもの7~8割)。
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ゆっくり・よく噛む:30回/ひと口、食事時間30分以上を目安。
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毎日3食、時間をそろえる(空腹→ドカ食いを防ぐ)。
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夜食はNG/夕食は就寝の2~3時間前まで(可能なら4時間前)。
1-2. 控えたいもの(症状悪化の引き金)
| 区分 | 具体例 | ポイント |
|---|---|---|
| 高脂肪 | 揚げ物、脂身、バター/チーズ、洋菓子、加工肉 | 胃に長く滞在+LES※を緩める |
| 甘い物 | チョコ、ケーキ、ドーナツ | 長く胃に滞在、チョコはLES低下 |
| 酸味強 | 柑橘、トマト/ケチャップ、梅干し | 食道粘膜を直接刺激 |
| 香辛料 | 唐辛子、カレー、ニンニク、ワサビ 等 | 胃酸分泌↑ |
| カフェイン | コーヒー、紅茶、緑茶 | 1日2杯までを目安 |
| アルコール | ビール・強い酒、就寝前の飲酒 | 胃酸↑、蠕動↓、LES低下 |
| 炭酸飲料 | コーラ等 | 胃内圧↑で逆流促進 |
| 麺類のすすり | ラーメン・そば等 | 空気を飲み込みゲップ↑ |
※LES=下部食道括約筋(逆流を防ぐ弁)
1-3. おすすめの食事・調理
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主菜:白身魚(さわら等)、鶏むね・ささみ、豆腐。
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調理:煮る・蒸す・茹でる(油を控える)。食材は小さく・やわらかく。
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胃にやさしい野菜:キャベツ(ビタミンU)、にんじん、かぶ、じゃがいも。
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水分多めの料理:おかゆ、雑炊、具だくさんスープ。
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間食:プレーンヨーグルト、牛乳、クラッカー少量など。
1-4. 食後の過ごし方
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横にならない(2~3時間)
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前かがみ作業を避ける
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入浴は食後1時間以上あけてから
2. 姿勢・理学療法(夜間症状対策に効く)
2-1. 就寝時の工夫
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頭側挙上:ベッドの頭側を10~20cm上げる(ブロック・傾斜クッション)。
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左向きで寝る(左側臥位):胃が食道より下に保たれやすく逆流減少。
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避けたい眠り方:右向き・平らな仰向け(症状悪化しやすい)。
2-2. 日中の姿勢・腹圧対策
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きついベルト・ガードル・コルセットは避ける
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猫背・前かがみを減らす(PC作業は画面を目線の高さへ)。
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重い物持ち・強くいきむ行為を控える。
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腹式呼吸を毎日1~2分×数回(横隔膜を鍛え、逆流予防に有利)。
3. 体重・運動・嗜好品
3-1. 体重管理
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肥満は最大のリスク。内臓脂肪→腹圧↑→逆流増。
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目標:月1~2kgのゆっくり減量(急激なダイエットは逆効果)。
3-2. 運動
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有酸素運動(ウォーキング、軽いジョギング、水中運動など)を1日20~30分、週5日目安。
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食後すぐ・激しい筋トレ(腹筋・重量挙げ)は逆流を誘発しやすいので時間帯・強度に注意。
3-3. 喫煙・飲酒
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禁煙で改善例が多い(唾液↓・LES↓・胃酸↑の悪影響を断つ)。
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飲酒は控えめに。特に就寝前の飲酒は避ける。
4. お薬との付き合い方(受診指示に従って)
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PPI/P-CAB等は、医師の指示どおり内服(例:起床時の空腹に内服→30分後朝食など、薬剤により異なります)。
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制酸薬・粘膜保護薬の頓用で“今の胸やけ”を和らげることも。
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相互作用の注意:主治医・薬剤師に、常用薬・サプリを必ず申告。
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自己判断での中断・市販薬の多用は避ける(症状の裏に別疾患が隠れることあり)。
5. 1日のモデルスケジュール(例)
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06:30 起床 → 指示あれば空腹で内服
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07:00 朝食(腹八分目)
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12:00 昼食(ゆっくり30分以上)
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15:30 間食少量(ヨーグルトなど)
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18:30 夕食(就寝2~3時間前までに)
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20:00 入浴(食後1時間以上あける)
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22:30 就寝(頭を高く・左向き)
6. 1週間チェックリスト(○×で記入)
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3食とも腹八分目にできた
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就寝2~3時間前は飲食しなかった
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左向き+頭高で眠れた
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きつい服を避けた/前かがみ時間を減らした
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炭酸・アルコール・カフェインを制限できた
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有酸素運動を週5日以上できた
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体重が先週より±0~−0.5kg(ゆっくり減量)
→ ○が増えるほど、症状改善が期待できます。達成できない項目は次週の目標に。
7. よくある質問(FAQ)
Q. コーヒーは完全禁止ですか?
A. 量がポイントです。1日2杯まで・薄め・食後に。症状が出る方は控えましょう。
Q. 牛乳は胸やけに効きますか?
A. 一時的に和らぐ方もいますが飲みすぎは逆効果になることも。少量を食事と一緒に。
Q. 市販の胃薬だけで治せますか?
A. 一時的な軽減はありますが、長引く場合は必ず受診し、内視鏡などで確認しましょう。
Q. 痛み止め(NSAIDs)は?
A. 悪化要因になり得ます。必要時は主治医に相談し、胃薬の併用を検討します。
8. すぐ受診してほしい“赤旗”症状
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のみ込みづらさ・食べ物がつかえる
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体重減少(意図せず)
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吐血/黒色便
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強い胸痛(心臓の病気との区別が必要)
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夜間目が覚めるほどの咳や喘鳴が続く
これらは別の病気が隠れている可能性があります。早めに消化器内科へ。
9. まとめ
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逆流性食道炎は、食事量・就寝前断食・寝る姿勢の3本柱で改善しやすい病気です。
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生活改善とお薬の両輪で治し、再発予防まで意識しましょう。
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良くならない・赤旗症状がある場合は、早めに受診してください。
付録:1日の簡単モデル献立(例)
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朝:おかゆ+温奴+蒸し野菜(キャベツ・にんじん)/麦茶
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昼:鶏ささみと野菜のうどん(麺はすすらず静かに)+ヨーグルト
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間:牛乳またはプレーンヨーグルト少量
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夜:白身魚の蒸し物+やわらか煮野菜+ごはん少なめ+味噌汁
※味つけは薄め・油控えめ。揚げ物・辛味・酸味強は控える。
この指導書は一般的なご案内です。個々の病状・服薬状況により最適解は異なります。
必ず主治医・管理栄養士の指示に従って調整してください。
