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好酸球性食道炎・胃腸炎(EGID)とは|症状・診断・治療を医師が徹底解説

[2025.10.22]

好酸球性消化管疾患(EGID)とは|好酸球性食道炎(EoE)・好酸球性胃腸炎(EGE)の症状・診断・治療をやさしく解説

 

 

好酸球性消化管疾患(EGID:Eosinophilic Gastrointestinal Disorders)は、白血球の一種である好酸球が食道・胃・小腸・大腸などの消化管に異常に集まり、慢性的な炎症を起こす病気の総称です。
代表的な病型は以下の2つです。

 

  • 好酸球性食道炎(EoE):炎症が食道に限局

  • 好酸球性胃腸炎(EGE):炎症が食道以外の消化管に広がる

 

EGIDは指定難病に含まれ、専門医療機関での継続的な診療がとても重要です。本ページでは、患者さんとご家族が治療を前向きに続けられるよう、症状・検査・診断基準・治療法・生活の工夫を丁寧にまとめました。

 

1. 症状の特徴

 

1-1. 好酸球性食道炎(EoE)

 

  • 小児:嘔吐、腹痛、食べ渋り/哺乳不良

  • 成人:嚥下障害(飲み込みにくい)食物のつかえ感、胸やけ、胸痛
    ※放置すると食道の狭窄が進み、食物が引っかかる(食物嵌頓)リスクが高まります。

 

1-2. 好酸球性胃腸炎(EGE)

 

  • 腹痛・下痢・嘔吐、体重減少、食欲低下、血便、むくみや腹水

  • 炎症が浸潤する層により症状が変化

    • 粘膜優位型:下痢・腹痛など腸炎症状

    • 筋層優位型:腸壁が厚く硬くなり通過障害

    • 漿膜下主体型:腹膜炎様症状、腹水が目立つ

 

2. 診断の流れと基準

 

2-1. まずは内視鏡+生検が要(確定診断)

  • 上部/下部内視鏡で粘膜を観察し、**生検(組織検査)**で好酸球の数を確認します。

 

EoEの組織学的基準

  • 食道粘膜の生検で:好酸球が15個以上/HPF(高倍率視野)

  • 内視鏡所見:縦走溝、輪状溝(リング)、白斑など(正常に見えることもあるため生検が必須

EGEの組織学的目安

  • 胃・小腸・大腸の生検で:概ね20個以上/HPF(部位により生理的好酸球数が異なるため総合判断)

  • 腹水がある場合:腹水中の好酸球増多も診断根拠

鑑別が重要:感染症、薬剤アレルギー、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)などを除外します。
近年、PPI(胃酸分泌抑制薬)に反応するタイプもEoEに包含され、PPIは診断テストではなく治療選択肢として位置づけられています。

 

3. 治療の基本戦略

 

3-1. 好酸球性食道炎(EoE)

 

目的:症状の改善と将来の食道狭窄の予防

  • PPI(第一選択):約半数〜7割で症状・炎症が改善

  • 局所ステロイド療法(嚥下ステロイド):吸入ステロイド薬を吸わずに飲み込む方法。全身副作用が少なく、食道に直接作用

  • 食事療法(除去食):経験的6品目除去(乳・卵・小麦・大豆・ナッツ類・魚介:6FED)やアミノ酸栄養を用いたアプローチ

  • 生物学的製剤デュピルマブ(IL-4/IL-13阻害)が海外でEoEに承認(国内保険適用は現時点でなし)

  • 内視鏡的拡張:線維性狭窄が強く嚥下障害が顕著な場合にバルーン拡張術

 

3-2. 好酸球性胃腸炎(EGE)

 

目的:全身炎症の鎮静化と再発予防

  • 全身性ステロイド(プレドニゾロン等):中等度〜重症の寛解導入に有効(再発が多く、長期大量投与は副作用に注意)

  • 抗アレルギー薬(例:ロイコトリエン受容体拮抗薬/モンテルカスト):ステロイド減量・中止の補助に有用

  • 食事療法:多種食物除去(MFED)→計画的な負荷試験で原因食物を特定し、薬剤なしでの長期寛解を目指す

    • 非IgE型反応は遅発性:**1食品2〜8週(胃+低蛋白血症例は目安45日)**の連日負荷が判定のコツ

    • ブイヨン・加水分解物など微量混入も反応して判定を乱すため厳格管理が必要

    • 栄養士と専門医の二人三脚が成功の鍵

 

4. 病気の経過(予後)とQOL

 

  • 慢性経過が基本:自然に治ることは少なく、再発を繰り返しやすい

  • EoE:未治療だと10〜20年で食道狭窄の頻度が上がるとされる

  • EGE:通学・就労など行動制限が生じやすく、QOL低下が目立つ

  • 合併しやすいアレルギー:気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎など

 

5. 生活の工夫(再発予防・悪化回避)

 

  • ゆっくり噛んで食べる・小分け食(EoEの嚥下障害対策)

  • 食事記録アプリ等で摂取食品と症状を可視化(除去食・負荷試験の精度UP)

  • 自己判断の極端な制限は避ける:栄養失調・やせ、成長障害の原因に。必ず栄養士と計画

  • 併存アレルギーのコントロール(鼻炎・喘息など)

  • 定期受診とモニタリング:症状が落ち着いても**再評価(内視鏡・採血)**で炎症の客観的チェックを

 

6. 医療費助成と受診先

 

  • 指定難病:一定の重症度基準を満たすと医療費助成の対象(自治体窓口または難病情報センターで要確認)

  • 専門医療機関へ:EoE/EGEとも長期管理と**多職種連携(医師・栄養士)**が重要。高度な食事療法(MFED/RAINBOW)を実施する施設での相談が安心です。

 

7. よくある質問(FAQ)

 

Q. どんな検査で確定しますか?
A. 内視鏡+生検が必須です。見た目が正常でも生検で初めて分かることがあります。

Q. PPIだけで治りますか?
A. EoEでは約半数〜7割が改善しますが、残る方には嚥下ステロイドや除去食、生物学的製剤(海外適応)を組み合わせます。

Q. 除去食は自己流で始めてもいい?
A. おすすめしません。必要栄養素が不足しやすく、誤判定の原因にも。専門医・栄養士の管理下で行ってください。

Q. いつまで治療が必要?
A. 個人差があります。再発しやすい病気のため、症状が軽快しても中長期のフォローが大切です。

 

8. 受診の目安(すぐ相談を)

 

  • 食物がのどや胸に引っかかる/飲み込みにくい

  • 腹痛・下痢・嘔吐が続く、体重が減る、むくみや腹水がある

  • 除去食で栄養が不安、何を食べて良いか分からない

 

まとめ

EGID(EoE/EGE)は慢性のアレルギー性炎症による消化管疾患です。
**「正確な診断」×「あなたに合った薬物療法」×「計画的な食事療法」**で、症状の軽減と長期寛解が十分に目指せます。焦らず、専門チームと一緒に進めていきましょう。

※本記事は一般的な医療情報です。最終的な診断・治療方針は主治医の判断に従ってください。

 

執筆・監修:山形県米沢市 きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)

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