食べ物・異物による食道粘膜損傷とは?原因・症状・治療法を医師が徹底解説
【医師監修】食べ物や異物による食道粘膜損傷とは?原因・症状・治療法を徹底解説
**食道粘膜損傷(逆流性食道炎を除く)**は、日常生活の中で誰にでも起こりうる食道のトラブルです。
本記事では、医学的ソースに基づき、原因・症状・治療法・注意点を分かりやすく解説します。
食道粘膜損傷とは?
食道は、口から胃へとつながる管状の臓器で、その内側は重層扁平上皮という強い粘膜で覆われています。
しかし、この粘膜も熱・化学物質・物理的刺激などによって容易に損傷を受けることがあります。
損傷の主な原因は次の5つに分類されます。
1. 異物や鋭い食べ物による損傷(食道異物・食道穿孔)
誤って食道内に異物が入った場合や、鋭い食べ物を飲み込んだ際に起こる損傷です。
主な原因
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**魚骨・薬剤シート(PTPシート)**などの鋭利な異物の誤飲
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食物の塊や誤嚥(よく噛まずに飲み込む)
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子どもの誤飲、義歯の不適合、アルコール摂取後の誤嚥
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食道の3つの生理的狭窄部(喉・気管支部・横隔膜通過部)で詰まりやすい
症状
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喉の違和感や痛み
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飲み込みづらさ(嚥下困難)
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咳や嘔吐
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穿孔時は胸や背中の痛み・発熱・呼吸困難
治療
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内視鏡検査で異物の除去
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鋭利な異物ではオーバーチューブや透明フードを使用し安全に摘出
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穿孔疑いではCTや造影検査を行い、重症例では外科治療を検討
2. 熱い食べ物・飲み物による損傷(食道熱傷)
原因
70℃以上の高温食品が食道を通過すると、わずかな接触でも粘膜が炎症を起こします。
特に注意が必要なのがたこ焼き・おでん・グラタン・湯豆腐・熱いスープなど。
中でもたこ焼きは内部温度が100℃を超え、粘性が高く停滞しやすいため、食道熱傷の代表例です。
症状
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胸の痛み・つかえ感
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飲食時のしみる痛み
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数日後に胸焼けや発熱が出る場合も(遅延型症状)
治療・応急処置
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軽度なら自然軽快することも多いが、症状が強ければ内視鏡検査が推奨
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制酸薬・粘膜保護薬による対症療法
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直後の応急処置:冷水やぬるま湯で食道を冷やす
3. 化学薬品・薬剤による損傷(腐食性・薬剤性食道炎)
腐食性食道炎
強酸・強アルカリ(洗剤、漂白剤など)の誤飲によって生じます。
アルカリ性物質は組織深くまで溶解壊死を起こし、食道狭窄の原因になります。
酸性物質は表層に留まりやすいものの、重症例もあります。
禁忌事項
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催吐や胃洗浄は厳禁(再び粘膜損傷を起こす)
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中和処置も禁忌(発熱反応を起こす)
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緊急時はまず気道確保が最優先
薬剤性食道炎
錠剤を水なしで服用したり、服用直後に横になることで薬が食道に停滞して炎症を起こすもの。
特に抗生物質・鉄剤・ビスホスホネート系薬剤で起こりやすい。
症状と対応
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内服後数時間〜12時間以内に胸の痛み・不快感
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原因薬を中止し、制酸薬+粘膜保護薬を使用
4. 嘔吐による裂傷(マロリー・ワイス症候群)
激しい嘔吐により、食道下部から胃噴門部に縦方向の裂け目が生じ、出血を起こします。
主な原因
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アルコールの過剰摂取後の嘔吐
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過食、咳、妊娠悪阻などでも発症
症状
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嘔吐後の吐血
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胸や腹の痛み
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大量出血時はショック状態に陥る危険も
5. アレルギーによる炎症(好酸球性食道炎)
**好酸球性食道炎(EoE)**は、アレルギー反応で好酸球が食道に集まり、慢性炎症を引き起こす疾患です。
特徴
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原因:食物アレルギー(牛乳・小麦・卵など)
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症状:食べ物のつかえ感・胸やけ・嚥下障害
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診断:胃カメラでの生検により好酸球浸潤を確認
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治療:PPI投与・ステロイド局所療法・除去食療法
🔥【特集】たこ焼きによる食道熱傷の実態
なぜたこ焼きでやけどする?
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内部温度が100℃以上
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粘性が高く食道に付着・停滞しやすい
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食道粘膜は70℃で炎症を起こすほどデリケート
症状と治療
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強い胸の痛み、つかえ感、吐き気
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数日後に胸焼けや発熱を伴うことも
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制酸薬・粘膜保護薬で治療、多くは数日で軽快
予防法
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「よく冷ます・小さく切る・よく噛む」を徹底
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熱傷直後は冷水で口腔・食道を冷やす
まとめ:食道の損傷は早期対応が鍵
| 原因 | 主な特徴 | 対応のポイント |
|---|---|---|
| 異物・魚骨 | 詰まり・痛み・穿孔リスク | 胃カメラで除去 |
| 熱傷(たこ焼き等) | 高温食による粘膜炎症 | 冷却+制酸薬 |
| 化学物質・薬剤 | 酸・アルカリ・錠剤停滞 | 禁忌処置に注意 |
| 嘔吐 | 裂傷・吐血 | 内視鏡止血 |
| アレルギー | 慢性炎症・つかえ感 | PPI・除去食療法 |
