【教育用資料】内視鏡業務における筋骨格系障害(MSDs)とは
【教育用資料】内視鏡業務における筋骨格系障害(MSDs)とは
― 看護師・スタッフも「人間工学の視点」で自分の体を守るために ―
✅ MSDs(Musculoskeletal Disorders)とは?
MSDsとは、筋肉・関節・神経・骨格系に関連する障害・痛みの総称であり、繰り返し動作や長時間の不自然な体勢によって生じます。
医療現場では、腰痛、肩こり、手首・指の障害、頸肩腕症候群、手根管症候群などが代表的です。
🩺 内視鏡業務はMSDsの高リスク職種
医師だけでなく、看護師・技師・洗浄スタッフも以下のような共通リスクにさらされています:
リスク要因 | 看護師に起こり得る例 |
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長時間の立ち仕事 | 検査中の介助、器具渡し、体位保持 |
同一姿勢の維持 | 検査ベッド脇でのモニタリング、前傾姿勢の維持 |
反復的な手首動作 | 内視鏡の洗浄・滅菌作業、鉗子の準備 |
不適切な高さの機材・画面配置 | 覗き込む姿勢・腕を高く上げたままの作業 |
緊張状態での業務 | 無意識に体が強張る、肩が上がる、呼吸が浅くなる |
📊【内視鏡医に関する実態調査(看護師にも応用可能)】
🔸全国Web調査(352名)
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内視鏡が原因と思われるMSDsを経験:56.8%
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障害部位:手首・手指>腰>首
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平均内視鏡検査件数が多いほどリスク増加
🔸多施設調査(114名)
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MSDs経験者:68.4%
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主な症状:腰痛・肩こり・腕の倦怠感
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月10件以上のESD施行で有意なリスク上昇
💡看護師は医師と比べ「軽度で見逃されやすいMSDs」も多いため、予防が特に重要です。
👨⚕️ 内視鏡業務におけるMSDsの好発部位と症状(看護師例)
部位 | 主な症状 | 発症要因の例 |
---|---|---|
肩・首 | こり、痛み、可動域制限 | 前かがみ姿勢、モニターの高さ不良 |
腰 | 鈍痛、ぎっくり腰様症状 | 長時間立位、無理な体位保持介助 |
手首・肘 | しびれ、だるさ、腱鞘炎 | 鉗子準備、洗浄時の強いひねり動作 |
手指 | 感覚異常、握力低下 | 細かい作業の繰り返し、鉗子操作 |
下肢 | だるさ、むくみ | 立ちっぱなし、足元のクッション不足 |
🚨 見逃されやすい“サイン”に注意!
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肩が重い・首が回りにくい
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検査が終わると腕がだるい
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ベッド脇で姿勢が崩れていると感じる
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鉗子やスコープを持つ手が疲れやすい
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勤務後、腰に痛みが残る・ストレッチしたくなる
これらは**MSDsの「初期症状」**かもしれません。
“いつものこと”と放置せず、自分の身体に意識を向けましょう。
🛠 MSDs予防の実践ポイント:Ergonomic Endoscopy 7 Tips
1. モニター・術者・患者の一直線配置
▶ 体のねじれを防止。患者さんの頭側の位置も再確認。
2. モニターの高さ=目線より15~25度下へ
▶ 首や肩の緊張軽減。
3. 検査台・作業面の高さ調整
▶ 肘が体から離れず脇が自然に締まるように。
4. 座位と立位を交互に使う
▶ 検査内容に応じて、助手席でも座れる体制づくり。
5. 業務の偏りを減らし、こまめに休憩
▶ タイマー活用で「2時間に1回3分ストレッチ」など。
6. 「20-20-20ルール」実践(眼精疲労対策)
▶ 20分作業→6m以上先を20秒見る。
7. ストレッチ習慣
▶ 肩・腰・手首など、仕事前後に1分間の簡単ストレッチ。
🧰 その他の対策と工夫
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エルゴノミックタイムアウト(手技前の機材配置確認)
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フロアマット・足台の使用(足への負担軽減)
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グリップのついたスコープ保持補助具の導入
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洗浄エリアの配置改善(手首に優しい角度)
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全スタッフでの情報共有(週1ミーティングで身体の状態確認)
🧑⚕️ 整形外科・リハビリ専門職との連携も重要
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症状が出たら早めに受診・診断
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院内フィジカルチェックを年1回の業務に含めることも推奨。
✅ 最後に:内視鏡スタッフ全員でMSDs対策を
「内視鏡業務=アスリートのような連携と体力を要する業務」
身体のケアを怠れば、医療の質にも影響します。
看護師・技師・医師が一丸となって体を守る意識と工夫を持ち、
安全で継続可能な業務体制を。