【医師が解説】プール熱(咽頭結膜熱)とは?大人も注意すべき症状・原因・治療・予防法まで徹底解説
【医師が解説】プール熱(咽頭結膜熱)とは?大人も注意すべき症状・原因・治療・予防法まで徹底解説
こんにちは、きだ内科クリニックです。
当院は呼吸器疾患や小児科の専門ではありませんが、感染力が非常に強く、近年再び注目されている「プール熱(咽頭結膜熱)」について、自学・情報提供のためにまとめました。
「子どもの病気」と思われがちなプール熱ですが、大人にも感染し、高熱やのどの痛み、目の症状などを引き起こすことがあります。
この記事では、プール熱の原因、主な症状、大人への影響、感染経路、出席・出勤のルール、治療・予防方法まで、知っておくべき情報をわかりやすく解説します。
プール熱(咽頭結膜熱)とは?|夏に多い「三大症状」を引き起こす感染症
プール熱とは、アデノウイルスによって引き起こされる感染症で、正式には「咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)」と呼ばれます。
夏に流行のピークを迎えることが多いため、**“夏風邪の代表格”**として知られていますが、冬など季節を問わず流行することもあります。
主に子ども同士の集団生活で感染が広がりやすい病気ですが、大人も感染する可能性があり、特に家庭や保育現場で注意が必要です。
原因ウイルスは「アデノウイルス」
プール熱の原因となるのはアデノウイルスです。
このウイルスには現在67種類以上の型が報告されており、3型を中心に、2型・4型・7型・11型・14型などが咽頭結膜熱の原因となります。
アデノウイルスは非常に感染力が強く、環境にも強いウイルスであり、手指や物品を介して広がりやすいことが特徴です。
プール熱の主な症状|三大症状とその他の症状
潜伏期間
感染後5~7日程度の潜伏期間を経て発症します。
典型的な症状(3大症状):
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38〜40℃の高熱(4~5日続くことも)
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のどの痛み・咽頭炎(赤み・腫れ・飲み込みづらさ)
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結膜炎による目の充血や目やに(片目から始まり、両目に広がる)
その他の症状には以下も含まれます:
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頭痛、悪寒、食欲不振、腹痛、下痢、嘔吐
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鼻水、咳、首のリンパ節の腫れ
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大人では目の症状が軽いか、出ないこともあります
感染経路|非常に感染力が強いのが特徴
● 主な感染経路
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飛沫感染:咳やくしゃみに含まれるウイルスを吸い込む
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接触感染:ウイルスのついたタオル、ドアノブ、食器などを介して
「プール熱」という名前は、かつてプールを介した集団感染が多かったことに由来しますが、現在ではプール以外での感染が主流です。
● 注意点
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喉からは1~2週間、便からは1か月以上ウイルスが排出される
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症状がなくなっても感染源となることがあるため、手洗いや消毒が重要
診断方法|迅速検査も可能
医師は、発熱・のどの赤み・目の充血の3つの症状と流行状況から診断します。
確定診断には以下の方法があります:
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迅速抗原検査(喉やまぶたを綿棒でこすり、15分程度で判定)
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血液検査(抗体の有無を確認)
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PCR検査(必要に応じて)
治療法|特効薬はなく、対症療法が中心
アデノウイルスに対する特効薬はなく、治療は症状を和らげる対症療法が基本です。
● よく使われる治療法:
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解熱剤(熱が高い場合)
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喉の痛みに対する消炎鎮痛剤
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脱水予防のためのこまめな水分補給(経口補水液など)
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目の症状が強い場合は、眼科での点眼薬治療
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食事はのどに優しいもの(豆腐、ゼリー、冷製スープなど)
大人がかかった場合の特徴
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目の症状が目立たないことが多い
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高熱やのどの痛みで仕事や日常生活に支障が出ることも
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家族内感染が多く、子ども→大人にうつるケースが増加中
重症化するケースは?
ほとんどの場合は自然に回復しますが、以下のような方は重症化するリスクがあります:
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乳幼児
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心肺機能が弱い方
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免疫力が低下している方
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アデノウイルス7型による感染では、肺炎や呼吸障害、二次感染のリスクも
※高熱が続く・呼吸が苦しい・元気がないなどの症状がある場合は、すぐに医療機関へ
出席停止・出勤停止の目安
● 学校・保育園
咽頭結膜熱は、学校保健安全法で定められた第二種感染症です。
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主要な症状が消えてから2日経過するまで出席停止
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症状が軽くても、ウイルス排出期間中は注意が必要
● 大人の場合
明確な出勤停止の法律はありませんが、症状が消えてから2日程度は出勤を控えるのが望ましいとされています。
プール熱の予防法|ワクチンはありません
有効な予防法は次の通り:
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こまめな手洗い(石けん+流水)
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咳エチケット・マスク着用
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ドアノブやおもちゃ、共有タオルの定期的な消毒(次亜塩素酸など)
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プールの後は目と体を洗い流す
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感染者の排泄物を扱うときは特に注意
※アデノウイルスはアルコール消毒が効きにくいため、物理的除去と塩素系消毒が有効です。
まとめ|プール熱は正しい知識と予防で防げる感染症です
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プール熱(咽頭結膜熱)は子どもに多い夏風邪の一種ですが、大人にも感染・発症の可能性があります。
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感染力が非常に強く、症状消失後もウイルス排出が続くため、家庭内感染・集団感染に注意が必要です。
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特効薬はなく、早めの受診と丁寧な対症療法が回復への近道です。
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ワクチンは存在しないため、手洗い・消毒・マスク着用が最大の予防策となります。