日本人の糖尿病リスクはネアンデルタール人遺伝子が関与|最新ゲノム研究で判明
日本人の糖尿病・脂質異常症リスクは「ネアンデルタール人遺伝子」と関係していた|最新ゲノム研究で判明
現代の日本人に多くみられる 2型糖尿病(T2D)・脂質異常症・心血管疾患などの生活習慣病リスクは、
実は 絶滅した旧人類「ネアンデルタール人」および「デニソワ人」由来の遺伝子と深く関係している——。
この事実が、理化学研究所らによる**大規模ゲノム解析(3,256人の日本人データ)**によって明らかになりました。
■ 日本人のゲノムに残る「古代人由来DNA」は約50Mb以上
研究によれば、日本人のゲノムには
| 由来 | 残存している遺伝情報量 | セグメント数 |
|---|---|---|
| ネアンデルタール人 | 約49Mb | 3,079セグメント |
| デニソワ人 | 約1.47Mb | 210セグメント |
という形で受け継がれており、これらが 糖代謝・脂質代謝・免疫疾患・循環器疾患などに影響していることが示されています。
1. ネアンデルタール人・デニソワ人遺伝子と「2型糖尿病リスク」の関連
● デニソワ人由来:NKX6-1遺伝子と糖尿病
理研の解析により、NKX6-1 遺伝子領域に含まれるデニソワ人由来の変異が
2型糖尿病(T2D)リスクに関連していることが初めて特定されました。
● ネアンデルタール人由来:SLC16A11遺伝子と糖代謝異常
-
SLC16A11変異型は、T2D発症リスクを約25%上昇させる
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6万年前、ネアンデルタール人との混血により人類へ導入された可能性
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東アジア人の10%が保有、欧州人では約2%しか保有しない
→ 日本人を含む東アジアで特に高い遺伝的負荷
さらに、SLC16A11は 肝臓の脂質代謝にも関わるため、糖尿病と脂質異常症を同時に高める要因とみられています。
2. 糖代謝ホルモン・転写因子への影響
ネアンデルタール人由来のSNPs(遺伝的変異)は
✅ インスリン遺伝子(INS)を調節する MAFA
✅ インスリン感受性に関わる IRF5
✅ グルカゴン分泌調節に関わる PAX2
など 37の代謝関連転写因子のうち16個(43%)に影響を及ぼし、
血糖調節そのものに構造的な遺伝リスクを持たせている可能性が指摘されています。
3. 脂質異常症・動脈硬化・心血管疾患にも関連
ネアンデルタール人由来の遺伝子は糖代謝にとどまらず、以下の疾患とも関連:
| 関連疾患 | 説明 |
|---|---|
| 冠状動脈疾患(CAD) | 心筋梗塞・狭心症の主要原因 |
| 安定狭心症(SAP) | 心臓血流低下 |
| 脂質代謝異常 | 肝臓脂肪蓄積・高LDLなど |
➡ 日本人ゲノムでは 11の領域でネアンデルタール由来遺伝子との関連が確認
4. なぜ日本人に影響が強いのか?(民族差と遺伝負荷)
日本人を含む 東アジア人は欧州人よりも21.5倍高く古代人遺伝子を保有しており、
T2Dや動脈硬化リスクの遺伝的背景(ベースリスク)が欧州とは大きく異なることが示されています。
■ 「進化上は有利だった遺伝子」が現代では病気を引き起こす
この現象は 倹約遺伝子(Thrifty Gene)仮説で説明されます。
| 過去 | 現代 |
|---|---|
| 飢餓時代:脂肪を蓄えやすい体質は「生存に有利」 | 高脂肪食+運動不足 → 脂肪蓄積が「病気の原因」に |
| インスリンは命を守る“節約ホルモン” | 現代では肥満・糖尿病の引き金に |
ピマ・インディアンや北方アジア系民族で見られる重度肥満・糖尿病の高発傾向と
日本人の体質の近さもその証拠とされています。
【まとめ】日本人の糖尿病リスクは「生活習慣 × 遺伝子背景」で決まる
✅ 日本人にはネアンデルタール人遺伝子由来の「糖代謝・脂質代謝リスク」が多数含まれている
✅ 食事習慣・運動習慣の変化に体が追いつけず、生活習慣病として表面化している
✅ 「体質的に太りやすい・糖尿病になりやすい」の背景は 遺伝+環境の組み合わせ
つまり——
“日本人は努力不足で糖尿病になる”のではなく、遺伝子レベルで現代環境に適応していない。
だからこそ予防医学が必要である。
