【医師監修】納豆が脳梗塞・心筋梗塞を防ぐ理由|ナットウキナーゼの血栓溶解作用と「夜納豆」の科学【きだ内科クリニック|山形県米沢市】
命の詰まりを防ぐ!納豆の「超血管ケア力」〜科学が証明した脳梗塞予防の秘密〜
1. 血管の詰まりに立ち向かう「ナットウキナーゼ」の驚異
脳梗塞は、脳の血管が詰まることで発症する非常に危険な病気です。この血管の詰まり、すなわち**血栓(血液の塊)**の溶解に、納豆に含まれる酵素「ナットウキナーゼ」が強力な役割を果たします。
納豆特有の「血栓溶解酵素」
ナットウキナーゼは、1980年に須見洋行氏らによって納豆の発酵過程で納豆菌(Bacillus subtilis (natto))が産出する酵素として発見され、1986年に発表されました。
この酵素は、俗に「血液をサラサラにする」と言われています。試験管内や動物実験(犬やラット)では、強い線溶活性を示し、血栓を溶かす効果が確認されています。ナットウキナーゼは、生体が持つ血栓溶解成分である**t-PA(組織型プラスミノーゲンアクチベーター)**の活性を高め、血液にできた塊をサラサラにする働きがあることが分かっています。
効果を最大限に引き出す「夜納豆」の勧め
血管が詰まりやすい時間帯は、時間生理学によると早朝から午前中にかけてが多いことが知られています。
納豆の血管サラサラ効果を担うナットウキナーゼは、経口摂取後、その効果が投与から大体4時間後くらいから発揮され、ゆっくりと持続することが分かっています。
したがって、脳梗塞や心筋梗塞など「血管が詰まりやすい」高リスクの時間帯に備えるため、夕食時に納豆を摂取することが、ナットウキナーゼによる血管への効果を最大化する方法として推奨されています。
⚠️【重要警告】ワーファリン服用中の方は絶対に摂取を控えてください
納豆は非常に強力な健康効果を持つ一方で、抗凝固薬(血液を固まりにくくする薬)であるワーファリンを服用している方は、納豆の摂取を避けるよう厳しく指導されます。
これは、ワーファリンがビタミンKの働きを妨げて血栓を防ぐ作用があるのに対し、納豆にはビタミンKが非常に豊富に含まれているためです。納豆1パック(40g)には、1日の摂取目安量の2倍以上にあたる350μgのビタミンKが含まれています。
ビタミンKを多く含む納豆を摂取すると、ワーファリンの作用が弱まり、血栓ができやすくなる恐れがあります。納豆の影響は数日間続くとされているため、ワーファリン服用中の場合は、間隔をあけても納豆を食べることはできません。ワーファリンを服用している方は、必ず医師または薬剤師に相談しましょう。
2. 血管の健康と血圧をコントロールする納豆の成分
脳梗塞の主な原因である高血圧や動脈硬化の予防にも、納豆は多角的に貢献します。
高血圧を下げる二つの働き
納豆は、高血圧の予防・改善に有効であると注目されています。
- 血圧上昇抑制物質(ACE阻害剤)の含有: 納豆のネバネバとした粘性物質の中には、血圧の上昇を抑えることができるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤が含まれていることが分かっています。これは降圧薬にも用いられる成分です。
- カリウムによる塩分排出: 高血圧の予防や改善に欠かせないカリウムも豊富に含まれています。カリウムを摂取することで、体内から余分な塩分(ナトリウム)が排出され、血圧を下げる作用があります。納豆1パックには約300mgのカリウムが含まれ、これは成人女性の1日必要量の約7分の1に相当します。
実際に、血圧が高めの方を対象とした臨床研究では、ナットウキナーゼ含有カプセル(2,000 FU)を8週間摂取したところ、収縮期血圧および拡張期血圧の低下が認められています。
悪玉コレステロール(LDL-C)の低減
納豆の原料である大豆製品をよく食べている人は、総コレステロールや悪玉LDLコレステロールの値が低い傾向にあることが示されています。
大豆タンパク質を多く摂取することで、悪玉LDLコレステロール値が改善されることが分かっており、特に大豆タンパク質の組成である「グリシニン」や「β-コングリシニン」に、LDLコレステロールや中性脂肪を低減させる可能性が示されています。これにより、動脈硬化や脂肪肝の予防につながると考えられています。
3. 納豆がもたらす健康長寿の可能性
納豆は血管の健康だけでなく、総合的な健康維持にも役立ちます。
死亡リスクの低下と認知機能の維持
日本で行われた大規模な追跡調査の結果では、納豆などの発酵性大豆食品の摂取が多い人は、全体的な死亡リスクが低かったことが示されています。
特に納豆を1日に50g以上摂取している人は、摂取していない人に比べて循環器病の死亡リスクが10%低いことが分かりました。
また、男性を対象とした横断解析では、納豆摂取の増加に伴い認知機能低下のオッズ比が低下したという結果も報告されています。
納豆の栄養価と適量
納豆は高タンパク・低糖質であり、良質なタンパク質、脂質、ミネラル、ビタミンK、ビタミンEが凝縮された非常に優れた食品です。
- 1パック(40g/45g)あたりの主な栄養素(目安):
- エネルギー:約74〜83kcal
- タンパク質:約6.6g
- 糖質:約1.0〜1.17g
健康的に納豆の恩恵を受けるためには適量を守ることが大切です。納豆はヘルシーなイメージがありますが、食べすぎるとカロリー過多になる可能性があります。
ダイエットや健康維持を目的とする場合の納豆の摂取目安量は、1日1パック程度を目安にすることが推奨されています。この量であれば、毎日続けても過剰摂取の心配が少ないと考えられます。
