お腹が鳴る(腹鳴)が止まらない原因と止め方|ガス・ストレス・IBS/SIBO・受診目安
お腹が鳴る(腹鳴)が止まらない原因とは?空腹・ストレス・ガス・IBS/SIBOまで対処法を徹底解説
お腹が鳴る(腹鳴)が止まらない原因を、空腹・食後の消化・腸内ガス・ストレス・IBS・SIBOの視点で解説。今すぐできる対処法と予防、薬、受診の目安もまとめました。
静かな会議室、授業中、デート中など「今だけはやめて…!」というタイミングで、お腹が「グー」「ゴロゴロ」と鳴ってしまう——そんな経験は多くの人にあります。
この現象は医学的に腹鳴(ふくめい)と呼ばれ、胃腸の蠕動(ぜんどう)運動によって腸内のガスや液体が移動するときに起こる音です。
多くは正常な生理現象ですが、頻繁に鳴り続ける/空腹ではないのに大きい/張りや腹痛、下痢・便秘を伴う場合は、食生活やストレスだけでなく、**過敏性腸症候群(IBS)やSIBO(小腸内細菌異常増殖症)**などが関係していることもあります。
1. お腹が鳴る仕組み|なぜ「グー」「ゴロゴロ」が起きるの?
お腹の音は、腸の中にある空気(ガス)と液体が混ざり、腸の収縮運動で押し流されることで発生します。
空腹時の「グー」:お腹の“掃除”が始まるサイン
空腹時に鳴りやすいのは、**空腹期収縮(MMC:Migrating Motor Complex)**という強い収縮運動が起こるためです。
食後しばらくして胃が空に近づくと、胃腸が残った食べカスや細菌を小腸へ送る“掃除モード”になり、モチリンというホルモンの働きも関与して、音が目立つことがあります。
食後の「ゴロゴロ」:消化活動で腸が動いている
食後すぐの腹鳴は、消化のために胃腸が活発に動き、食べ物・消化液・飲み込んだ空気が移動して音が出るパターンです。
2. お腹が鳴る(腹鳴)が止まらない主な原因
「生理現象の範囲」を超えて音が頻繁・大きい・止まらないときは、次の要因が重なっていることがよくあります。
① 腸内ガスが増える(食事・発酵・飲み込み)
腸内のガスが多いほど、移動時の音が大きくなりやすいです。
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高FODMAP食品の影響
小腸で吸収されにくい糖質(FODMAP)を多く含む食品(例:小麦、玉ねぎ、豆類、乳製品など)は、腸内細菌により発酵が進みやすく、ガスが増える→腹鳴が出やすい流れになりがちです。 -
炭酸飲料・早食い(呑気症)
炭酸はそのままガス量を増やします。早食いや緊張で空気を飲み込みやすい人(呑気症)も、胃腸内にガスが溜まりやすくなります。 -
SIBO(小腸内細菌異常増殖症)
本来細菌が少ない小腸で菌が増えることで、食後に発酵が進み、お腹の張り・ガス・腹鳴が目立つことがあります。
② ストレスと自律神経の乱れ(緊張で鳴るタイプ)
胃腸は自律神経の影響を強く受けます。
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緊張・不安で腸の動きが過敏になり、小さなガスでも音が出やすい
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ストレスで無意識に空気を飲み込み、ガスが増えて音が増幅
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「鳴ったらどうしよう」という不安がさらに鳴りやすさを招く(予期不安/腹鳴恐怖)
③ 過敏性腸症候群(IBS)
検査で大きな異常がなくても、腹痛や便通異常が続く状態です。IBSでは腸が知覚過敏になり、少量のガスや動きでも音・張りとして強く感じることがあります。特にガス型で悩む人は少なくありません。
3. いますぐ止めたい!お腹の音を抑える即効テク(会議・授業・デート前)
「今この場で静かにしたい」場面で使いやすい対処法です。
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アメやタブレットをひと口(少量の糖分)
空腹による強い収縮(MMC)は、少しの摂取で落ち着くことがあります。 -
姿勢を正す(猫背をやめる)
お腹の圧迫が減り、ガスの通り道が確保されて音が軽くなることがあります。 -
腹式呼吸でリラックス
緊張をほどき、副交感神経を優位にして腸の過敏さを落ち着けます。 -
腹部を軽く温める(可能なら)
冷えで動きが乱れるタイプでは楽になることがあります。
4. お腹が鳴るのを予防する生活習慣|“鳴りやすい体質”を変えるコツ
食べ方:ガスを増やさない
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よく噛む(目安:一口20〜30回)
早食いは空気の飲み込みを増やしがち。噛むほど呑気症対策にもなります。 -
炭酸・ガム・ストロー飲みを控える
空気を取り込みやすい習慣は腹鳴を増やす要因になります。
食事:発酵しやすい食材を一時的に調整
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低FODMAP食を短期間試す
パン・パスタ・玉ねぎ・豆類・乳製品などで張りや音が強くなる人は、いったん量を調整して、米・肉・魚・卵など中心にして様子を見る方法があります。
※極端な制限は栄養バランスを崩すため、体調不良がある場合は医療者に相談を。 -
便秘ケア
便秘でガスが溜まりやすい人は、水分・食物繊維の“摂り方”の見直しも有効です(合わない食物繊維もあるため調整が大切)。
体のケア:ガスを出す・緊張を抜く
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ガス抜きポーズ(膝抱え)
仰向けで両膝を抱える姿勢は、ガスの排出を助けることがあります。 -
睡眠不足・ストレスを溜めない
自律神経が乱れると腹鳴が増えやすいので、生活リズムの立て直しも重要です。
5. 薬での対処(市販薬・処方薬)|改善しないときの選択肢
生活改善で落ち着かない場合、薬が助けになることもあります。気になる症状が続くなら、薬剤師・医師に相談してください。
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消泡剤(ジメチルポリシロキサン)
ガスの気泡をまとめて排出されやすくし、張り・ゴロゴロ感の軽減が期待できます(市販薬にも配合例あり)。 -
整腸剤・プロバイオティクス
腸内環境を整え、異常発酵によるガス増加を抑える目的で使われます。 -
漢方薬(体質・症状により選択)
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大建中湯:冷えやガスが溜まりやすいタイプ
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桂枝加芍薬湯:ストレスで張る、IBS傾向
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半夏瀉心湯:ストレス関連の下痢・ゴロゴロ感 など
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IBS治療薬(医療機関)
腸の運動を調整する薬などが処方されることがあります。
6. 受診の目安|病院に行くべきサイン(消化器内科)
腹鳴自体はよくある現象ですが、次に当てはまる場合は受診をおすすめします。
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強い腹痛がある/下痢・便秘を繰り返す(IBSなどの可能性)
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血便がある/体重減少がある(別の病気の可能性)
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音が怖くて外出できないなど、生活に支障が出ている(腹鳴恐怖・不安症状の併発も)
よくある質問(FAQ)
Q. 空腹じゃないのにお腹が鳴るのはなぜ?
A. 消化中の腸の動き、腸内ガス、ストレスによる過敏、便秘、IBSなどが重なると空腹でなくても鳴ることがあります。
Q. 会議中に鳴りそうなとき、何が一番効く?
A. まずは姿勢を正す+腹式呼吸。空腹が原因ならアメを一口も現実的です。
Q. 低FODMAP食は誰でもやった方がいい?
A. いいえ。ガスや張りが食事と連動する人には有効なことがありますが、合わない人もいます。体調を見ながら短期間で調整し、長期化は避けましょう。
まとめ:お腹が鳴る(腹鳴)は「よくある現象」。でも“頻繁・大きい・つらい”なら見直しを
お腹の音は腸が動いているサインで、ほとんどは心配いりません。
ただし、止まらない腹鳴が続く場合は、ガス(食事・呑気症)/ストレス/IBS/SIBOなどを視野に入れて、生活習慣の調整や医療機関の相談で改善が期待できます。
執筆・監修:きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)
