のどの違和感は胃カメラで原因がわかる|逆流だけじゃない鑑別と受診目安
胃カメラでわかる「のどの違和感」の原因|逆流性食道炎だけじゃない鑑別リスト
のどの違和感(つかえ・イガイガ・飲み込みにくい)は耳鼻科で異常なしでも、胃カメラで原因が見つかることがあります。GERD/LPRD/NERD、好酸球性食道炎、カンジダ、アカラシア、咽頭・食道がん、異常がない場合の咽喉頭異常感症まで解説。受診の目安も紹介。
「のどに何かが詰まっている感じがする」「飲み込みにくい」「イガイガする」「咳が続く」「声がかれる」。 こうしたのどの違和感で耳鼻咽喉科を受診しても「異常なし」と言われ、原因が分からないまま不安が続くケースは少なくありません。
そのようなとき、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)で、食道〜胃の病気が見つかることがあります。特に、よく知られる逆流性食道炎以外にも、アレルギー性の食道炎や感染(カンジダ)、食道の運動障害、まれにがんなど、鑑別は多岐にわたります。
この記事では、胃カメラで確認できる「のどの違和感」の主な原因を、症状の特徴とあわせて整理します。
この記事でわかること
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のどの違和感が「耳鼻科では異常なし」でも起こる理由
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胃カメラで鑑別すべき病気(逆流・アレルギー・感染・機能障害・腫瘍)
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「胃カメラで異常なし」のときに考える状態
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受診を急ぐべきサイン(危険な症状)
胃カメラで原因が見つかりやすい「のどの違和感」とは?
次のような症状がある場合、のど自体ではなく食道・胃側の病気が関係していることがあります。
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のどのつかえ感/異物感(ヒステリー球のような感じ)
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飲み込みにくさ(嚥下しづらい)
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胸やけ、呑酸(酸っぱいものが上がる)
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慢性的な咳、痰、声がれ(特に朝)
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食べ物がしみる、胸の奥が痛い感じ
1. 胃酸逆流が関係する病気(最も多い原因群)
のどの違和感の原因でまず疑われやすいのが、胃酸や胃内容物の逆流です。
胃食道逆流症(GERD)/逆流性食道炎
病態:胃酸が食道へ逆流し、食道粘膜に炎症(びらん)を起こす病気。
よくある症状:胸やけ、呑酸に加え、逆流が上まで及ぶとのどの違和感・咳・声がれにつながります。
胃カメラ所見:食道のただれ(びらん)、炎症所見。
咽喉頭逆流症(LPRD)
病態:逆流が食道を越えて、咽頭・喉頭(のど)まで達する状態。
特徴:のどの粘膜は酸に弱く、少量の逆流でも違和感が強く出ることがあります。胸やけがないのに、のど症状が目立つケースもあります。
胃カメラのポイント:逆流性変化の有無を確認し、必要に応じて他疾患も同時に除外します(※のど側の所見は耳鼻科での評価が役立つこともあります)。
非びらん性胃食道逆流症(NERD)
病態:逆流症状があるのに、胃カメラで明らかなびらんが見えないタイプ。
特徴:食道の知覚過敏が関与し、少量の逆流でも強い不快感を自覚することがあります。
注意点:内視鏡で「異常なし」でも逆流が完全否定できないことがあります。
2. アレルギー・感染による食道炎(薬が効きにくいことも)
逆流の治療(制酸薬など)で改善しない場合は、別の原因を疑うことが重要です。
好酸球性食道炎(EoE)
病態:食物などのアレルギー反応が関与し、食道に好酸球が集まって慢性炎症を起こす病気。
よくある症状:食べ物のつかえ、飲み込みにくさが目立つ(「のど」ではなく、胸の奥で詰まる感じとして訴えることも)。
胃カメラ所見:縦走溝、輪状のしわ(リング状)、白斑などが特徴的。
重要:診断には生検(組織検査)が必要になることがあります。
食道カンジダ症
病態:カビ(真菌)の一種であるカンジダが食道で増殖した状態。免疫低下、ステロイド使用、強力な制酸薬の長期使用などが背景になることがあります。
症状:無症状のこともありますが、進むとしみる・飲み込みにくいなどが出ることがあります。
胃カメラ所見:白い苔状の付着物(酒粕様・カッテージチーズ様)を認めることがあります。
3. 食道の機能・運動障害(「詰まり感」が主役)
のど自体の異常ではなく、食道の動きが悪くなることでつかえ感が起こることがあります。
食道アカラシア
病態:食道の蠕動運動が障害され、胃の入り口(下部食道括約筋)がうまく緩まないため、食べ物が胃へ落ちにくくなる病気。
症状:食事のつかえ、吐き戻し(特に夜間)、体重減少など。
胃カメラ所見:食道内に食べ物や液体が残る、食道の拡張が見られることがあります。
注意点:確定には造影検査や食道内圧検査が必要になることもあります。逆流の薬が効かない場合に疑う価値があります。
4. 見落としたくない:咽頭がん・食道がんなどの悪性疾患
頻度は高くありませんが、のどの違和感ががんの初期サインとして現れることもあるため、「除外して安心する」ことが大切です。
咽頭がん・喉頭がん
特徴:喫煙・飲酒がリスクとなることがあります。初期は「違和感」「しみる感じ」「声がれ」程度のことも。
胃カメラの役割:近年は特殊光(NBIなど)を用いた観察により、微細な病変の拾い上げが期待される場面があります(※観察の範囲・方法は施設により異なります)。
食道がん
特徴:進行するとつかえ、しみる感じが出ますが、初期は無症状のこともあります。
胃カメラのポイント:早期の段階から発見につながる可能性があるため、リスクがある方は特に検査の意義が高くなります。
5. 胃カメラで異常がない場合:「咽喉頭異常感症」も視野に
胃カメラや耳鼻科検査などで器質的異常が見つからない場合、咽喉頭異常感症(ヒステリー球)と呼ばれる状態が考えられます。
背景:ストレス、自律神経の乱れ、のどの知覚過敏などが関与。
よくある特徴:
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唾を飲み込むと気になるが、食事中は気になりにくい
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不安が強いほど症状が増幅する
対応:状態により、漢方薬(例:半夏厚朴湯など)や不安へのアプローチが検討されることがあります。
また、「重大な病気が否定できた」という事実が安心材料となり、症状が軽くなるケースもあります。
受診の目安|胃カメラを検討したいケース・急ぐべきサイン
胃カメラを相談したい症状
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のどの違和感が2週間以上続く
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胸やけはないが、咳・声がれ・のどのイガイガが続く
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逆流の薬で改善しない
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食べ物がつかえる感じがある
早めの受診が必要(要注意サイン)
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飲み込みにくさが進行している
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体重減少がある
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血が混じる(吐血・血便)、貧血を指摘された
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強い胸痛、呼吸苦を伴う
※これらがある場合は、自己判断せず医療機関に相談してください。
まとめ|のどの違和感は「逆流だけ」とは限らない
のどの違和感は、ストレスや気のせいで片づけられがちですが、実際には 逆流(GERD/LPRD/NERD)、好酸球性食道炎、食道カンジダ症、食道アカラシア、そして咽頭・食道がんなど、幅広い原因が関係し得ます。
耳鼻科で「異常なし」でも症状が続くときは、消化器内科で胃カメラを含めた評価を行うことで原因が明確になり、適切な治療につながる可能性があります。
執筆・監修:きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)
