大腸カメラ前処置で下剤を吐いた・飲みきれない時の対処法|検査は中止?受診の目安
大腸カメラ前処置の下剤(腸管洗浄剤)で吐いてしまったり、量がつらくて飲みきれなかったりするのは珍しくありません。大事なのは、自己判断で中止・キャンセルしないこと。多くの施設は「吐いたら連絡」を前提に案内しています。
なぜ「下剤をできるだけ飲む」ことが重要?
便が残ると内視鏡が“便の向こう側”を見られず、ポリープや小さながんを見落とす原因になり得ます。準備が不十分だと検査時間が延びたり、中止・再検査になったりすることがあります。
吐き気・嘔吐が出た時の対処法
吐き気・嘔吐が出た時の対処(その場でできる5ステップ)
吐き気が強いのに無理に飲み続けるのは逆効果です。以下を基本にしてください。
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ステップ1:いったん服用を止める
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ステップ2:体を起こして休憩(目安30〜60分)
吐き気が落ち着くまで待ち、再開は「少しずつ・ゆっくり」に切り替えます。 -
ステップ3:口をゆすぎ、少量のクリア飲料で水分補給
脱水予防のため、許可されている範囲で透明な水分を。めまい・頭痛・混乱など脱水サインにも注意。 -
ステップ4:再開できそうならペースダウン(ストロー・冷やす等も併用)
「規定ペースに戻す」よりも、吐かずに続けられる速度が優先です。 -
ステップ5:“吐いた時点で”医療機関に連絡する(重要)
嘔吐があったら、内視鏡室(または当直)へ連絡するよう明記している施設が多いです。
大腸カメラ前の下剤服用中に現れる危険な兆候
今すぐ連絡・受診を考える「危険サイン」
次の症状がある場合は、下剤を中止して早急に医療機関へ連絡してください。
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鋭い/持続する強い腹痛、お腹を押す・動くと痛い
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嘔吐が止まらず水分が保てない、ふらつき・意識がぼんやりする、尿が極端に少ない(脱水)
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お腹が異常に張って苦しい、既往に腸閉塞などがある
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アレルギー症状(発疹、息苦しさ、顔や喉の腫れ)
これらは安全面(脱水・電解質異常など)でも放置が危険です。
下剤の飲み方のコツ
味がつらい・量が飲めない時の「飲み方のコツ」
吐き気の原因は、短時間に多量の液体を飲むこと自体でも起こります。工夫で改善することがあります。
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冷やして飲む/ストローで飲む(味や匂いがマシになりやすい)
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少量の香味を足す(施設の指示がある場合のみ。赤・紫などは避ける案内が一般的)
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「休み休み」でOK:吐くくらいなら中断→再開が基本
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温度を変える:冷たいとダメなら“ぬるめ”の方が飲める人もいます
※吐き気止め(制吐薬)を自己判断で追加せず、使ってよいかは処方元に確認してください(持病・薬で相性があります)。
検査当日の対応
全量飲めなかった…検査はできる?「便の目安」と当日の行動
便の“仕上がり”の目安
多くの説明書では、最終的に「黄色くて透明、尿のよう」になり、固形物やカスがほぼない状態が理想とされます。
ただし“自己判断で終了”はNG
施設によっては、便がきれいに見えても「指示された量は最後まで飲む」よう明記しています。
一方で、嘔吐してしまった場合は「休憩して可能な範囲で続け、予定通り来院して事情を伝える」という案内もあります。
結論としては、飲めた量・吐いた回数・便の状態をメモし、検査施設に連絡したうえで来院が基本です。
医療機関での対応
医療機関でできる「リカバリー(サルベージ)」とは?
自宅で準備が不十分でも、当日に追加対応して検査を成立させられることがあります。
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追加の下剤投与、浣腸や洗腸などの“追加前処置”
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内視鏡中に、状況に応じて洗浄・吸引を増やす/同日サルベージを検討する、という推奨もあります。
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どうしても難しい場合は、日程変更(早期の再検査)になることもあります(安全と精度を優先)。
「下剤を飲めない人」への投与ルート(施設限定)
経口が困難な場合、経鼻胃管で投与する方法や、研究として胃カメラで十二指腸へPEG液を注入する方法が報告されています。ただし適応・安全管理が必要で、提供していない施設もあります。
再発防止のために
次回つらくしないために:事前に相談したいポイント
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前回吐いた/飲めなかったことは必ず申告(下剤の種類・量・分割方法の変更で改善することがあります)
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分割内服(split-dose)は国際的にも推奨が強く、同じ下剤でも「タイミング」で効きとつらさが変わります。
執筆・監修:きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)
