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夜中にお腹が痛い原因は?危険サインと対処法|米沢市 きだ内科クリニック

[2025.12.07]

夜中に腹痛で目が覚めると、「様子見でいい?」「救急?」と不安になります。夜間の腹痛は、胃酸寝る姿勢食習慣の影響で起こることもありますが、胆石発作虫垂炎尿路結石腸閉塞膵炎など治療が必要な病気が隠れている場合もあります。

※本記事は一般的な医療情報です。強い痛みや不安がある場合は、自己判断せず医療機関に相談してください。

 

 

夜中に腹痛が起こりやすいメカニズム

 

夜中に腹痛が起こりやすいメカニズムとして、以下の4つが考えられます。

 

空腹と胃酸:潰瘍は「夜・空腹」で痛みが出やすい

 

食事がない時間が長いと、胃酸が粘膜を刺激しやすくなります。消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)では、空腹時や夜間に痛みが出て、食事で一時的に軽くなるタイプが知られています。

 

横になると逆流:胸やけ・みぞおち痛が悪化しやすい

 

横になると重力の助けが弱まり、胃内容物が食道へ逆流しやすくなります。逆流性食道炎(GERD)就寝中に胸やけ、みぞおちの痛み、咳などで目が覚めることがあります。対策として、就寝前の食事を避ける上半身を高くするなどが推奨されています。

 

自律神経と「痛みの感じやすさ」

 

リラックス時に働きやすい副交感神経(迷走神経系)は、消化管の運動や分泌に関わります。一方で、健常者では腸の運動は夜間に全体として低下しやすいともされ、「動きが増える」だけが原因ではありません。夜は周囲の刺激が減るため、ガスや張り、軽いけいれんなどを痛みとして自覚しやすいこともあります。

 

寝る直前の食事・脂っこい夕食・飲酒

 

GERD対策として、就寝前2〜3時間は食事を避けることがガイドラインで提案されています。脂肪の多い食事やアルコールは、逆流症状を悪化させたり、胆のうの収縮を促して胆石発作の引き金になることがあります(後述)。

 

夜中の腹痛で考えられる主な病気(症状のヒント付き)

 

ここからは「どこが、どう痛むか」で整理します。夜に目が覚めるほどの痛みは“要注意”です。

 

みぞおち〜上腹部が痛い場合に考えられる病気

  • 逆流性食道炎(GERD):横になると悪化しやすい。胸やけ、酸っぱいものが上がる、咳など。対策として就寝前の食事回避頭側を上げる

  • 消化性潰瘍(胃・十二指腸潰瘍):空腹時や夜間に痛み、食事で一時的に軽快することがある。

  • 急性膵炎:上腹部痛が背中へ響く、発熱、吐き気・嘔吐など。強い痛みなら救急評価が必要です。

 

右上腹部〜みぞおち、背中や右肩に響く場合に考えられる病気

  • 胆石発作(胆石症/胆道疝痛):右上腹部の強い痛み、背中や右肩に放散、吐き気を伴うことがある。

  • 胆のう炎(胆石が原因のことも):右上腹部の強い痛み+発熱、押すと痛いなど。症状が持続する場合は早急な受診が必要。※「脂っこい夕食の後、夜に起きる」パターンは胆のう由来の痛みでみられます。

 

右下腹部が痛い(時間とともに場所が移る)場合に考えられる病気

  • 虫垂炎(いわゆる盲腸):痛みがへそ周辺から始まり、右下腹部へ移動することがある。動くと悪化、発熱や吐き気を伴うことも。

 

脇腹〜背中が突然激痛、波がある/鼠径部に放散する場合に考えられる病気

  • 尿路結石:突然の強い痛みが波のように増減し、下腹部や鼠径部へ放散することがあります。血尿がヒントになることも。

 

お腹全体の張り・けいれん+吐き気、ガスや便が出ない場合に考えられる病気

  • 腸閉塞(イレウス):腹痛、嘔吐、腹部膨満、便やガスが出ないなど。疑う場合は救急受診が必要。

 

ストレス・体質(機能性)が原因の場合

  • 過敏性腸症候群(IBS):腹痛と便通異常が続く病気ですが、専門家向けのガイドでは「睡眠から目が覚める痛みや下痢」は別の病気も検討すべき“警告所見”とされています。

 

女性に多い原因も

生理痛、子宮内膜症、卵巣のトラブル、妊娠関連などでも夜間に下腹部痛が出ます。妊娠の可能性がある、不正出血がある、片側の強い痛みは早めに受診してください。

 

すぐ受診すべき「危険サイン」(夜間でも救急を検討)

 

次のいずれかがあれば、救急外来の受診や救急要請(119)を迷わないでください。

  • 突然の激痛、どんどん悪化する痛み

  • 吐血、便が黒い(タール便)/血便

  • 高熱、ぐったり、冷や汗、意識がぼんやり

  • 嘔吐が止まらず水分が取れない

  • お腹が張って強く痛む、触ると強い痛み

  • 尿が出ない便もガスも出ない(腸閉塞などの可能性)

 

今夜できる対処法(危険サインがない・軽い痛みの場合)

 

  1. まず食べるのをやめる(胃腸を休ませる)

  2. 姿勢を調整

  • 胸やけ・みぞおち痛が主なら、左側を下にして寝る、または上半身を少し高く。左側臥位は夜間の酸曝露を減らす報告があります。

  1. 水分は少量ずつ(嘔吐がなければ)

  2. 市販薬は“目的に合うもの”を短期間

  • 胸やけ中心なら制酸薬などが一時的に役立つことがあります(薬剤師にも相談を)。
    ※ただし、吐血・黒色便・強い痛みがあるのに鎮痛薬で抑え込むのは危険です。

  1. 温めるのは慎重に
    ガス・冷え・軽いけいれんなら温めて楽になることもありますが、局所の強い痛み(右下腹部など)や発熱があるときは避け、受診を優先してください。

 

受診の目安:迷ったときの相談先

  • 「救急車を呼ぶべき?今すぐ受診?」と迷う:#7119(救急安心センター)
    医師・看護師等が症状を聞き取り、救急要請や受診先の案内を行います(地域により番号が異なる場合があります)。

  • 子どもの夜間症状で迷う:#8000(こども医療電話相談)
    休日・夜間に、小児科医師・看護師に相談でき、必要な受診の目安を得られます。

 

再発を減らす予防策(よく効く生活習慣)

  • 就寝2〜3時間前までに食事を終える(特に逆流症状がある人)

  • 夜間の胸やけがあるなら、頭側を上げる(枕を重ねるより、寝具全体の傾斜が推奨されます)

  • 「左向き」で始める(逆流が気になる人)

  • 脂っこい夕食で右上腹部痛が出るなら、胆のう疾患の可能性もあるため受診を

 

よくある質問(FAQ)

 

Q. 夜中に腹痛で目が覚めたら、IBSですか? A. IBSのこともありますが、夜間に目が覚める痛みや下痢は“赤旗(要精査)”とされ、他の病気の除外が大切です。
Q. 左向きで寝ると本当に楽になりますか? A. 逆流が原因の場合、左側臥位で夜間の食道酸曝露が減ったという報告があり、Mayo Clinicでも就寝時に左側から始める助言があります。
Q. 受診すべきサインは? A. 吐血、黒色便、激痛、発熱、嘔吐が止まらない、腹部の強い圧痛や膨満などは、すぐの医療評価が推奨されます。

 

執筆・監修:きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)

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