【医師監修】「疲れやすい」「だるい」は栄養不足のサイン?鉄分・ビタミンB群不足が引き起こす慢性疲労の正体|きだ内科クリニック(山形県米沢市)
疲れやすい・だるい本当の原因は「鉄分」と「ビタミンB群」不足かも|かくれ貧血と栄養欠乏を医師が解説
「疲れやすい」「だるい」は、単なるストレスや寝不足だけが原因ではありません。体内で重要な役割を担う鉄分やビタミンB群の不足が背景にあることは珍しくなく、見逃すと慢性的な疲労・集中力低下・気分の落ち込みへとつながります。ここでは、鉄分とビタミンB群の不足が起こすメカニズムと対策を、わかりやすく解説します。
1. 鉄分不足と「かくれ貧血(潜在性鉄欠乏)」のメカニズム
鉄分が不足すると何が起こる?
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酸素運搬の低下:鉄は赤血球のヘモグロビンの材料。不足すると全身が酸欠状態になり、疲労感・息切れ・動悸・倦怠感が出やすくなります。
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筋肉エネルギーの低下:筋肉内のミオグロビンや代謝酵素にも鉄が必要。欠乏は筋力低下や持久力低下につながります。
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精神・神経機能の乱れ:セロトニン/ドーパミン/ノルアドレナリンなどの神経伝達物質合成に鉄が関与。不足するとイライラ・不安・抑うつ・集中力低下が起きやすくなります。
かくれ貧血とは?
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ヘモグロビンは正常でも貯蔵鉄が不足している状態。
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指標はフェリチン(貯蔵鉄)。フェリチン低下 → 血清鉄低下 → Hb低下の順で進行します。
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目安:フェリチン15 ng/mL未満は要注意。月経のある女性は特にリスクが高く、20〜40代女性の約半数に潜在的な鉄欠乏があると推定されています。
2. ビタミンB群不足とエネルギー代謝の停滞
ビタミンB群(B1/B2/B6/B12/ナイアシン/葉酸など)は、栄養素をエネルギーに変える補酵素。不足すると代謝が滞り、**“エネルギー不足の疲れ”**が続きます。
| ビタミン | 主な役割 | 不足時の症状 |
|---|---|---|
| B1 | 糖質をエネルギー化 | 強い疲労感・集中力低下・食欲低下 |
| B2 | 脂質代謝(ほか糖質/たんぱく質) | 疲労・口内炎・肌荒れ |
| B6 | たんぱく質代謝/ヘモグロビン・神経伝達物質合成 | 疲れ・貧血・気分不調 |
| B12 | 葉酸と赤血球合成/神経保護 | 貧血・しびれ・脱力・眼精疲労 |
不足しやすい理由
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糖質中心の食生活でB1需要が増大
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水溶性のため蓄積しにくく、こまめな補給が必要
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飲酒でB1消費が増える
3. 改善のための実践的アプローチ
(1)食事で賢く補う
| 栄養素 | 吸収を高めるポイント | おすすめ食品 |
|---|---|---|
| 鉄分 | ビタミンC/クエン酸/たんぱく質と一緒に。**タンニン(コーヒー/緑茶)**は直後に避ける | ヘム鉄:レバー/牛赤身/カツオ/マグロ/貝類(あさり・しじみ)|非ヘム鉄:ほうれん草/小松菜/大豆/海藻 |
| B1 | アリシン(にんにく・玉ねぎ・ねぎ)と一緒に | 豚ヒレ・玄米 |
| B群全般 | 複数のBをまとめて/腸内環境も整える | 豚レバー/卵/チーズ/青魚(さば・かつお) |
(2)サプリメントの上手な使い方
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鉄:吸収率の高いヘム鉄配合を選択。食後に、分割摂取で胃腸負担を軽減。
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ビタミンB群:水溶性のため毎日継続。持続型製剤も有効。
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注意:服薬中・肝腎疾患がある方は医師へ相談。B6/ナイアシン等の過剰摂取に注意。
(3)医療機関でのチェックが有効
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「貧血なし」と言われても不調が続くなら、フェリチン検査でかくれ貧血を確認。
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疲労が長引く場合は甲状腺機能低下症・糖尿病・心不全・慢性疲労症候群などの鑑別も重要。
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鉄剤処方時は、Hb正常化後も貯蔵鉄回復のため数カ月継続が基本。
まとめ
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鉄分とビタミンB群の不足は、見逃されやすい慢性疲労の原因。
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フェリチンで貯蔵鉄をチェックし、食事+サプリの併用で計画的に補いましょう。
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不調が続くときは自己判断に頼らず、早めに内科や婦人科で相談を。
