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便秘と腸の炎症の意外な関係|最新研究が示す“まさかの原因”と改善の鍵【きだ内科クリニック】

[2025.11.17]

🧠 便秘と腸の炎症の意外な関係|“まさかの原因”を最新研究が解明【専門医が徹底解説】

 

 

便秘は「出ないだけの不快症状」という以前のイメージとは異なり、現在では全身の健康リスクを高め、生命予後にも影響する重大な疾患として位置付けられています。
2023年改訂の便通異常症診療ガイドラインでは、慢性便秘症を
「慢性的に続く便秘によって日常生活や身体にさまざまな支障をきたす病態」
と定義しています。

さらに近年の研究で、便秘の背後には
腸内細菌叢(腸内フローラ)の乱れ=ディスバイオシス
そして
腸の炎症・感受性の異常
という “まさかの原因” が深く関わっていることが明らかになってきました。

本記事では、最新のエビデンスをもとに、便秘と腸の炎症の新しい関係を徹底解説します。

 

1. 便秘は「腸の病気」だけではなく“全身疾患”である

 

便秘はQOLを低下させるだけでなく、放置すると下記のリスクが増加します。

 

● 心筋梗塞・脳卒中などの心血管イベントが増える

15年追跡研究では、便秘患者は死亡率が20%以上高いことが報告されています。

 

● 排便時の“いきみ”で血圧が急上昇する

特に高齢者では排便中〜排便後30分の間に収縮期血圧が急激に上昇し、心血管イベントを誘発しやすくなります。

 

● 長期便秘は腸炎(虚血性大腸炎)も引き起こす

硬い便の滞留 → 腸内悪玉菌の増加 → 有害物質により粘膜炎症
強くいきんだ後に虚血性大腸炎を発症するケースも少なくありません。

便秘は「放置して良い病気」ではなく、腸にも全身にも炎症を起こす疾患といえます。

 

2. 便秘の鍵を握る“新メカニズム”

 

TRPV4イオンチャネルの異常が世界で初めて解明

 

富山大学などの国際共同研究により、便秘の病態に関わる新たな因子として
TRPV4イオンチャネル(腸の刺激を感知するセンサー)の異常が発見されました。

 

▶ 従来説:「便秘の腸は鈍感(感受性低下)」

 

   新説:「便秘の腸ではTRPV4が“増加”して刺激を過剰に受け取る」

TRPV4は

  • 温度

  • 浸透圧

  • 腸の引っ張り刺激(機械刺激)
    などを感知する多刺激受容体。

 

最新研究では…

🔍 便秘患者では大腸のTRPV4が“増加”

→ 逆に腸がうまく反応できず、排便反射が弱まる可能性。

 

🔍 便回数が少ないほどTRPV4発現が多い

→ 長期の便秘が腸の感受性異常を悪化させている可能性。

これは便秘の病態解明において画期的な発見です。

 

3. 腸内細菌と炎症物質がTRPV4を“増やす”原因だった

 

● 悪玉菌(クレブシエラ菌・腸球菌・大腸菌)がTRPV4を増やす

細菌そのものではなく、細菌の分泌物が腸上皮細胞に作用し、TRPV4増加を誘導。

● 炎症物質TNF-αもTRPV4を増強

腸の慢性炎症がさらに感受性異常を悪化させるメカニズム。

● 酪酸(短鎖脂肪酸)がTRPV4増加を“抑制”する

腸活で注目される酪酸菌は腸の炎症を抑え、感受性の異常を正常化させる可能性があります。

👉 便秘=腸内細菌の乱れ → 炎症 → 感受性の異常
という新しい病態モデルが成立しつつあります。

 

4. 短鎖脂肪酸(SCFA)と炎症・腸の運動機能の重要な関係

 

短鎖脂肪酸(酢酸・プロピオン酸・酪酸)は腸内細菌が作る重要な代謝物。

 

● 酪酸は強力な抗炎症物質

・炎症性サイトカインの抑制
・腸粘膜の修復
・免疫の調整

 

● 高齢者の便秘では“酪酸レベル低下”が判明

酪酸不足 → 腸の蠕動運動が低下 → 便秘悪化の悪循環。

 

● 腸内細菌の乱れはSERT(セロトニン輸送体)にも影響

SERT増加 → 腸管セロトニンが過剰に回収 → 腸の動きが弱まる
というメカニズムも報告されています。

 

5. 腸内環境の乱れは“全身炎症”にもつながる

 

ディスバイオシスとリーキーガットの危険性

 

腸内細菌叢の乱れは

  • 腸粘膜のバリア低下

  • 有害物質の血中漏出(リーキーガット)

  • 慢性炎症
    を引き起こし、以下の疾患リスクが増加します。

  • 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)

  • 糖尿病・脂質異常症

  • うつ病・不安障害(脳腸相関の破綻)

  • 動脈硬化・心血管疾患

 

👉 便秘は腸だけでなく“全身病”の入り口となり得るため軽視できません。

 

6. 最新研究が導く「これからの便秘治療」

 

⭐(1)腸内細菌叢の改善:根本原因へのアプローチ

 

  • 発酵性食物繊維で善玉菌を増やす

  • 酪酸菌を増やす食事(大麦・海藻・根菜)

  • プロバイオティクス/プレバイオティクス

腸内環境の改善は便秘治療の中心になる可能性

 

⭐(2)TRPV4を標的とした新しい治療の開発

 

  • TRPV4の働きを調整する薬

  • 酪酸菌によるTRPV4抑制戦略

従来とは全く異なる“便秘治療の未来”が期待される

 

【まとめ】

便秘の原因は水分不足や食物繊維不足だけではありません。
最新研究により、
腸内細菌の乱れ → 炎症 → 感受性の異常(TRPV4)
という“深層の原因”が次々と明らかになっています。

便秘が続く人は腸の炎症が進んでいる可能性があり、
放置すると全身の疾患リスクにまで発展します。

便秘を“体質”と諦めず、
腸内改善(腸活)+生活習慣改善+必要に応じた医療介入
で早期改善を目指しましょう。

 

執筆・監修:山形県米沢市 きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)

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