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健康診断“異常なし”でも要注意|専門医が警告する「隠れ動脈硬化」10のサインと早期対策

[2025.11.24]

健康診断で「異常なし」でも“隠れ動脈硬化”を疑うべきサイン10選

 

 

I. 血行動態(血圧のパターン)に現れる客観的サイン

 

動脈硬化は、単に「上の血圧・下の血圧」だけではなく、その裏にある血管の硬さ・弾力性・血流の状態にじわじわと現れます。

 

サイン1:脈圧(Pulse Pressure: PP)が広がっている

 

脈圧とは、収縮期血圧(上の血圧)−拡張期血圧(下の血圧)で求められ、
主に大動脈や太い動脈の硬さ
を反映する指標です。

  • 望ましい脈圧:30〜50 mmHg

  • 60 mmHg以上 → 大動脈の弾力性(コンプライアンス)が低下し、動脈硬化が進んでいる可能性が高いサイン

上の血圧だけでなく、「差」にも注目することが重要です。

 

サイン2:左右の腕で血圧差が15 mmHg以上ある

 

健診では片腕だけで測ることが多いですが、本来は左右で血圧を比べることが大切です。

  • 左右の腕の収縮期血圧の差が15 mmHg以上ある場合
    → 血圧が低い側の腕へ向かう動脈(主に鎖骨下動脈など)に、**狭窄や閉塞(局所的動脈硬化)**がある可能性があります。

これは、局所だけでなく全身のプラーク負荷が高い、不安定プラークが存在する可能性を示す警告サインにもなります。

 

サイン3:平均血圧(MAP)がじわじわ高い

 

平均血圧(Mean Arterial Pressure: MAP)は、
脳や腎臓などの細い血管(抵抗血管)が受けている慢性的な圧負荷を表し、細動脈硬化の進行度合いを反映します。

  • 望ましいMAP:100 mmHg未満

  • 100 mmHg以上:細い血管の硬化が進行している可能性

  • 120 mmHg以上:細動脈硬化がかなり進んでいると考えられる

たとえ「高血圧の診断基準未満」の血圧でも、MAPが高い場合は、臓器の微小循環障害のリスクが高まっていると判断すべきです。

 

II. 生化学・代謝リスク(“数値は正常”でも見逃せない脂質の質と組み合わせ)

 

総コレステロールやLDLコレステロールが基準値内でも、粒子の質や代謝異常の組み合わせから、隠れた動脈硬化リスクを読み取ることができます。

 

サイン4:小型LDL(sd-LDL)が高い

 

LDLの中でも特に小さく密度の高い粒子は、
超悪玉コレステロール」と呼ばれる 小型LDL(sd-LDL) です。

  • 血液中に長く滞留しやすい

  • 粒子が小さいため、血管壁の中に入り込みやすい
    動脈硬化を急速に進める主犯格

総LDLが正常でも、sd-LDL高値の場合は、将来の心筋梗塞・脳梗塞のハイリスク群と考える必要があります。

 

サイン5:リポ蛋白(a)[Lp(a)]が高め

 

リポ蛋白(a)[Lp(a)]は、アテローム動脈硬化の強力な独立危険因子で、その値はほぼ遺伝で決まる体質です。

  • Lp(a)高値 → 生まれつきのハイリスク体質

  • 家族性高コレステロール血症(FH)と重なると、**全身の動脈に病変が多発(Polyvascular Disease)**しやすいことが報告されています。

「コレステロール値はそこそこだけど家族歴が強い」という方は、Lp(a)を一度チェックしておく価値があります。

 

サイン6:内臓脂肪型メタボ予備軍

 

メタボリックシンドローム(MetS)は、

  • 内臓脂肪型肥満(腹囲:男性85 cm以上、女性90 cm以上)
    + 軽度の高血圧・高血糖・脂質異常のうち2つ以上

が揃った状態です。

各項目がギリギリ基準値内であっても、内臓脂肪が多い人ではリスクが相乗的に増大し、

  • 血管内皮機能の低下

  • プラーク形成の加速

を通じて、心筋梗塞や脳卒中の危険が有意に高くなります。

さらに、

  • TG/HDL比が2.5以上

の場合は、インスリン抵抗性の存在と、動脈硬化を促進するsd-LDLの増加が強く示唆されます。

 

III. 自覚症状として現れる「見逃しがちな血管リスク」

 

動脈硬化は基本的に無症状で進行しますが、特に脳や末梢血管で血流不足が始まると、軽い「異変」として現れることがあります。

 

サイン7:一過性の神経症状(TIA様症状)

 

  • 手足のしびれ・脱力

  • 呂律が回らない

  • 言葉が出にくい

これらは、**一過性脳虚血発作(TIA)**の典型症状です。

症状が自然に回復するため放置されがちですが、TIAは

将来の脳梗塞発症を強く予告する“赤信号”

であり、健診の数値が正常でも、すでに脳血管イベントを一度起こしている状態とみなすべき、非常にハイリスクなサインです。

 

サイン8:足先の冷え・しびれが続く

 

  • 足先がいつも冷たい

  • しびれ感が長期間続く

こうした症状は、**閉塞性動脈硬化症(ASO)**の初期段階(第1期)である可能性があります。

「年のせい」「冷え性」と片付けられがちですが、すでに末梢動脈に血流を妨げるプラークが存在している証拠であり、全身の動脈硬化がかなり進んでいることを示します。

 

サイン9:軽い運動での動悸・息切れ・疲れやすさ

 

階段の上り下りや、少し早歩きをしただけで

  • 異常に疲れる

  • 動悸が強い

  • 息切れが気になる

といった変化が出てきた場合、冠動脈硬化(心臓の血管の動脈硬化)や心機能低下の初期サインの可能性があります。

心臓を栄養する冠動脈が徐々に狭くなり、心臓の“予備力”が低下している安定狭心症の前段階かもしれません。

 

IV. 全身性炎症と生活習慣に潜むサイン

 

血液検査の数値自体が正常でも、慢性炎症や生活習慣が血管を静かに傷つけ続けることがあります。

 

サイン10:進行した歯周病がある

 

重度の歯周病は、単なる「歯と歯ぐきの病気」ではなく、**全身の血管に悪影響を与える慢性炎症の“火種”**です。

歯周病の炎症巣から放出される物質が血流に乗って全身に広がり、

  • 血管内皮機能を障害

  • プラーク形成と不安定化を促進

することがわかっています。

 

研究では、歯周病がある人は、ない人に比べ

脳梗塞リスクが約2.8倍 に増加する

と報告されており、健診の数値が正常でも、口腔内の慢性炎症が隠れ動脈硬化のドライバーになっている可能性があります。

 

総合評価と「早めに動く」ことの重要性

 

動脈硬化は、多くの人で30代頃からすでに始まっているとされ、放置すると

  • 心筋梗塞

  • 脳梗塞

  • 腎不全

など、命や生活の質を大きく損なう病気につながります。

上記10のサインのうち1つでも当てはまる場合は注意
複数当てはまる場合は、たとえ健診で「異常なし」と言われていても、積極的に血管の精密評価を受けることが勧められます。

 

おもな高度血管検査と役割

 

検査 何がわかるか 主に見ている異常 動脈硬化のステージ
FMD検査(血流依存性血管拡張反応) 血管内皮の機能 血管拡張能の低下 ごく早期の機能的変化
頸動脈エコー(IMT測定) 血管壁の構造 内膜中膜肥厚(IMT)、プラーク 初期〜中期の構造変化
血圧脈波検査(ABI/PWV/CAVI) 血管の硬さ・詰まり具合 動脈の硬化度・下肢動脈の狭窄 機能・構造の総合評価

 

生活習慣でできる“血管の若返り習慣”

 

  • 禁煙の徹底(最重要)

  • 週合計150分以上を目標とした有酸素運動

  • 青魚・オリーブオイルなどを取り入れた脂質の質を意識した食事

  • 適正体重の維持・減量

  • ストレスマネジメント・質の良い睡眠

 

動脈硬化は「沈黙の殺し屋」であり、「健診で異常なし=血管も健康」とは限りません。
境界域の数値(例:LDL-Cが基準値ギリギリ、脈圧がやや高い、TG/HDL比が高め など)や、今回の10のサインに心当たりがある場合は、早めに医療機関で相談し、自分の血管年齢をチェックしておくことが、将来の心筋梗塞・脳梗塞を防ぐ最大の予防策となります。

 

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