健診で腎臓の数値が悪いと言われたら|eGFR低下・尿蛋白・シスタチンCでわかる腎機能評価と透析回避の最新対策
健診で「腎臓の数値が悪い」と指摘されたら?eGFR低下・尿蛋白の警告サインと透析を回避する専門的対策
健康診断や人間ドックで**「腎機能障害」「eGFR低下」「尿蛋白陽性」と指摘され、不安に感じる方は少なくありません。腎臓は“沈黙の臓器”で、機能が30%以下**に落ちるまで自覚症状が乏しいため、放置は危険です。
慢性腎臓病(CKD)は、腎障害(尿蛋白など)またはeGFR<60 mL/分/1.73m²が3か月以上持続する状態。日本では成人の5~8人に1人が該当する国民病で、進行すると透析だけでなく心血管疾患リスクも上がります。早期発見・早期介入が腎臓と寿命を守る鍵です。
1. 健診で確認すべき「腎機能の3指標」
① eGFR(推算糸球体濾過量)=腎臓の“仕事量”
-
意味:糸球体が1分間にろ過できる血液量の推算(クレアチニン・年齢・性別で算出)
-
基準:eGFR<60が3か月以上でCKD
-
進行の目安:eGFR 50~60以下から低下が加速し、平均年3~5低下することも
② クレアチニン(Cr)=老廃物の溜まり具合
-
意味:筋肉由来老廃物。腎機能低下で上昇
-
注意:筋肉量の影響が大きい(男性・筋肉質は高め/高齢・やせは低めに出やすい)
③ 尿蛋白(蛋白尿)=糸球体障害のSOS
-
意味:本来尿に出ないタンパクが漏れ出るサイン
-
判定:「-/±/1+/2+/3+」。2+以上は高リスクで要精査
-
再検のコツ:朝一尿が望ましい(脱水の影響を受けにくい)
2. 「eGFRは合っている?」— eGFRcrの限界と**シスタチンC(eGFRcys)**の活用
健診のeGFRは通常クレアチニン(eGFRcr)を用いますが、クレアチニンは筋肉量に強く左右されます。そこで、筋肉量の影響を受けにくいシスタチンCを使う**eGFRcys(cys-GFR)**が役立ちます。
2-1. いつシスタチンCを測るべき?
-
筋肉量が多い人(例:若年男性・運動習慣あり)
→ Crが高めに出やすく、eGFRcrは実際より低く見積もる可能性 -
筋肉量が少ない人(例:高齢者・寝たきり・やせ・多くの女性)
→ Crが低めに出やすく、eGFRcrは実際より高く見積もる可能性 -
結果が体感と合わない/数値の整合性が悪いとき
→ eGFRcysで補正し判定精度を向上
ポイント:シスタチンCは全身の細胞で産生され、筋肉量の影響を受けにくいため、eGFRcrの弱点を補う目的で用います。
2-2. eGFRcys(cys-GFR)の解釈
-
意味:糸球体が1分間にろ過する血液量の推算(シスタチンCベース)
-
読み方:数値が低いほど腎機能低下。**CKDステージ(G1~G5)**の判定にも使用可
-
実務上のコツ:**eGFRcr と eGFRcys の“平均”**を用いると、単独値より腎機能を正確に反映しやすいとされます
2-3. 介入評価にも使える
-
運動療法や減塩、薬物治療などの介入前後で、eGFRcr/eGFRcysを追跡
-
**低下率の改善(例:低下率30%以上の軽減)**が目標の一つ
2-4. シスタチンCの注意点(値に影響する因子)
-
甲状腺機能、喫煙、炎症、脂肪量、妊娠、免疫抑制薬 などで値が変動することがあります
→ 解釈は臨床背景と合わせて行い、担当医と相談を
3. 腎機能低下(CKD)の主な原因とリスク因子
-
生活習慣病:
糖尿病(透析導入最大要因)/高血圧(糸球体高圧で障害進行)/肥満・メタボ -
加齢・遺伝:加齢で緩やかに低下。**多発性嚢胞腎(ADPKD)**など遺伝性も
-
その他:慢性腎炎(IgA腎症など)/薬剤(NSAIDs・一部抗生物質・造影剤)/喫煙
4. 「要精査」を指摘されたら——放置せず踏むべきステップ
4-1. まずは再確認(かかりつけ医での再検)
-
血液・尿を再検査(一過性変動の除外)
-
尿蛋白は朝一尿で評価精度UP
-
eGFRcrの妥当性に疑問があればeGFRcysを追加
4-2. 腎臓内科への紹介が推奨される目安
-
eGFR<45 mL/分/1.73㎡
-
eGFR≦44 は蛋白尿の有無にかかわらず紹介
-
尿蛋白 1+以上/2+以上、または尿蛋白+尿潜血 陽性
-
3か月以内にeGFRが30%以上低下(急速進行)
-
画像で嚢胞多数(両側5個以上 → ADPKD疑い)
5. 専門医療機関で行う主な精密検査
-
血液:シスタチンC、電解質(K・P)、酸塩基、貧血など
-
尿:尿蛋白定量(1日排泄量/ACR:アルブミン/Cr比)
-
画像:腎エコー(大きさ・形・結石・嚢胞)
-
腎生検:原因特定(主に腎炎)に必要時実施
-
総合判定:eGFRcr+eGFRcysの平均で腎機能を評価し、治療方針を最適化
6. 透析を遠ざける「保存療法」— 食事・運動・薬物
(1)食事療法:まず減塩が最優先
| 調整項目 | 目的 | 目標量の目安 |
|---|---|---|
| 塩分 | 高血圧予防・腎負担軽減 | 6g/日未満 |
| タンパク質 | 老廃物(尿素窒素)増を抑える | G3a:0.8–1.0 g/kg/日/G3b以降:0.6–0.8 g/kg/日 |
| エネルギー | 低栄養・筋分解を防ぐ | 25–35 kcal/kg/日 |
| カリウム | 高K血症(不整脈)防止 | G3b以降:~2,000 mg/日(茹でこぼし活用) |
ステージや併存症で個別化が必須。管理栄養士の指導を受けましょう。
(2)運動療法:腎臓リハで進行抑制
-
有酸素(ウォーキング等)+レジスタンス(スクワット等)
-
会話可能な強度/週3回×30分を目安(息切れ・痛みが出ない範囲)
(3)薬物療法・生活改善
-
RAS阻害薬(ACE/ARB):血圧・蛋白尿改善、腎保護
-
SGLT2阻害薬:CKD進行抑制に有用(糖尿病の有無を問わず適応拡大の潮流)
-
禁煙・血圧/血糖最適化、NSAIDs乱用回避、造影検査は主治医と事前相談
7. 今日からできるチェックリスト
-
再検予約(朝一尿/必要ならシスタチンC)を入れた
-
家庭血圧を測り記録開始(朝夕)
-
塩分6g/日未満に挑戦(食品表示の食塩相当量を確認)
-
水分は適量(心不全・低Na既往は医師指示に従う)
-
NSAIDs常用の見直し(市販薬含む)
-
禁煙支援を相談
-
腎臓内科紹介基準に該当しないか再チェック
よくある質問(FAQ)
Q1. eGFRは一度下がると戻らない?
A. 脱水・感染・薬剤などの急性因子なら改善で回復します。慢性低下は進行抑制が主目的です。
Q2. eGFRcrとeGFRcysのどちらを信じる?
A. 体格・筋肉量の影響を踏まえ、両者の平均が実臨床で有用です。判断は臨床背景込みで。
Q3. 血圧目標は?
A. 一般に130/80mmHg未満が候補。糖尿病や蛋白尿の有無で個別化します。
受診のご案内(山形県米沢市|きだ内科クリニック)
当院では、再検(血液・朝一尿)→eGFRcys追加→精密検査まで一貫対応。管理栄養士の食事指導、SGLT2/RAS阻害薬の最適化、運動処方で透析を遠ざける戦略をご提案します。
eGFR<45/尿蛋白1+以上/3か月でeGFR30%以上低下などは早期受診を推奨します。
