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脳梗塞・心筋梗塞は防げる!“血管を10歳若返らせる”生活習慣【医師解説】

[2025.11.02]

脳梗塞・心筋梗塞を防ぐための「血管の若返り習慣」

 

 

血管の健康は、私たちの健康と寿命の鍵を握っています。血管が硬く狭くなる「動脈硬化」は、細胞に栄養や酸素を運び老廃物を回収する血液と血管の働きを損ない、最終的に脳梗塞や心筋梗塞など命に関わる重大な病気を引き起こします。動脈硬化は自覚症状なく進行する「静かな殺し屋(サイレントキラー)」ですが、生活習慣を見直すことで、老化した血管でも若返らせることが可能です。

動脈硬化は一度なってしまうと元の状態には戻りませんが、生活を改善することでその進行を遅らせることができます。若々しく柔軟な血管とサラサラな血液を取り戻すためには、「食事」「運動」「睡眠」を含む生活習慣の包括的な見直しが基本となります。

 

1. 食事:血管を強化し、血液をサラサラにする食習慣

 

動脈硬化性疾患の予防において、食事療法の改善は基本中の基本です。

 

栄養バランスと目標値の管理

  • 総エネルギー摂取量を制限し、特に肥満者においては減量して適正な体重を維持することが血清脂質の改善に推奨されます。
  • 食事は、適切なエネルギー量と、三大栄養素(たんぱく質、脂質、炭水化物)、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取することが重要です。
  • コレステロール摂取量は200 mg/日未満を目標とし、飽和脂肪酸エネルギー比率を7%未満に抑えましょう。
  • 塩分摂取量は6 g/日未満を目指し、減塩を徹底します。塩分の摂り過ぎは血液中のナトリウム濃度を高め、高血圧を引き起こし血管に負担をかけます。

 

積極的に摂取すべき食品・栄養素

  • 日本食パターン:肉の脂身、動物脂(牛脂、ラード、バター)、加工肉を控え、大豆野菜海藻きのこ果物未精製穀類を取り合わせた減塩した日本食パターンの食事が推奨されます。このパターンは脂質代謝を改善し、動脈硬化性疾患の予防が期待されます。
  • n-3系多価不飽和脂肪酸(EPA・DHA):魚の摂取を増やし、n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取を増やします。
    • EPA血小板凝集抑制作用が強く、「血液サラサラ」機能を有します。
    • DHAは細胞膜の流動性を高め、赤血球の変形能を高めることで、血管の柔軟性や毛細血管での血行促進作用を高め、全身の細胞への酸素供給を改善します。
    • DHA・EPAの摂取は血圧を下げ、慢性疾患の発症率を低下させる可能性が示されています。
    • 魚料理を週2回、あるいは刺身を毎日食べることを意識すると良いでしょう(缶詰でもOKです)。
  • 食物繊維:食物繊維(目標25 g/日以上)の摂取を増やすことは、血清脂質の改善に推奨されます。全粒穀物、野菜、果物の摂取も心血管疾患や脳卒中の予防のために提案されています。
  • カリウム:カリウムを多く含む野菜や果物(例:納豆、豆腐、かぼちゃ、ほうれん草、りんご、バナナなど)を積極的に摂ると、体内の余分な塩分を排出する効果が期待できます。ただし、果物の過剰摂取はトリグリセリド(TG)や尿酸の上昇の可能性があるため控えましょう。また、果物は新鮮なものを摂取することが望ましいです。
  • 抗酸化成分:活性酸素は血管を傷つけ、老化を進行させるため、抗酸化作用を持つ食品の摂取が脳卒中予防に効果的です。緑黄色野菜や果物に含まれる抗酸化成分(例:トマト、にんじん、かぼちゃ、ほうれん草)を摂取し、血管の酸化を防ぎましょう。

 

2. 運動:柔軟な血管を取り戻すための活動習慣

 

運動は、動脈硬化の予防に有効であり、血圧を下げ、脂質代謝を改善し、血管内皮機能の改善につながります。特にHDLコレステロールの増加は運動に特有の効果として知られています。

 

推奨される運動の種類と量

  • 有酸素運動:中強度(3 METs以上)の有酸素運動を中心に、習慣的に行うことが推奨されます。
    • 具体的には、速歩、ジョギング、サイクリング、水泳、ダンスなどが推奨されます。
    • 頻度と時間:1日合計30分以上週3回以上(可能であれば毎日)、または週に150分以上実施することを目標とします。30分間連続で行う必要はなく、10分間ずつ3回に分けても効果があります。
  • レジスタンス運動(筋トレ)や柔軟運動:有酸素運動の他に、レジスタンス運動(筋トレ)や柔軟運動も実施することが望ましいとされています。レジスタンス運動は筋力向上やQOL向上に繋がる可能性があります。
  • 座位行動の削減:日常生活の中で、座位行動(座位および臥位におけるエネルギー消費量が1.5 METs以下の全ての覚醒行動)を減らし、活動的な生活を送るように注意を促します。

 

血管を柔らかくするストレッチ

「体の硬さ」は「血管の硬さ」と正比例することが研究で示されています。ストレッチは血流を促進し、血管内皮細胞から血管拡張物質である**一酸化窒素(NO)**を分泌させることで、血管を広げ、柔らかくすることができます。柔軟性が10cm増えると、血管年齢が約9歳若返る可能性も示唆されています。

  • 実施方法:「血管のばしストレッチ」は、高血圧の方にも推奨されています。
    • ストレッチは30秒間行い、**30秒間の休憩(インターバル)**を挟むことがコツです。
    • 太い血管が通る前ももふくらはぎのストレッチが特に効率的です。
    • 行う際は、血圧が上がるのを防ぐため、呼吸を止めずに行いましょう。

 

3. 睡眠と精神的健康:ストレスを管理し血管を再生する

 

睡眠は、血管年齢を若返らせるための重要な要素です。

 

質の高い睡眠の確保

  • 睡眠時間毎日7時間は眠るような生活を始めましょう。質の良い睡眠はストレスを軽減し、血圧を安定させるために重要です。
  • 睡眠不足のリスク:睡眠不足はストレスホルモンの分泌を促し、交感神経を活発にするため、血圧上昇の原因となります。5時間未満の睡眠時間のグループでは、動脈硬化の要因となる石灰化が27%も見られたという研究結果があります(7時間以上ではわずか6%)。
  • 血管の再生:毛細血管の健康を保つためには、睡眠中に血管が新しく作られること(血管新生)が大切です。良質な睡眠をとることで、血管新生に重要なホルモンが活躍します。
  • 安眠の秘訣:就寝の30分以上前までに歯磨きを済ませる(刺激を避ける)。また、ブルーライトや電磁波が睡眠ホルモン(メラトニン)を減少・破壊するため、テレビやパソコン、スマートフォンをベッドに持ち込まないことが原則です。

 

精神的な充実感(ポジティブな感情)

  • ストレス管理:過剰なストレスは交感神経を過剰に刺激し、血圧上昇や血液循環の悪化を招き、血管に負担がかかります。適度な運動やリラックスする時間を作ることで、高血圧を予防できます。
  • 人生の目的:「人生における意味や目的の感覚(ユーダイモニア・ウェルビーイング)」が高いレベルにある男性は、動脈硬化が抑制されていることが示されており、その効果は5年経過しても持続します。人生の充実感を高めることは、循環器疾患や寝たきりの予防に役立つ可能性があります。

 

4. 喫煙と飲酒:血管に負荷をかける要因の回避

 

動脈硬化性疾患の予防の根幹は生活習慣の改善であり、中でも禁煙は最も介入が必要な因子です。

  • 禁煙:動脈硬化性疾患の一次・二次予防のため、喫煙者は禁煙することを推奨します。喫煙本数を減らすことではリスク低下は見られず、禁煙が必須です。また、受動喫煙も冠動脈疾患や脳卒中のリスクを上昇させるため、回避することが推奨されます。
  • 節酒:多量飲酒は避け、アルコール摂取量はエタノール換算で1日25 g以下にとどめることが推奨されます(日本酒1合程度に相当)。また、休肝日を設けるようにしましょう。

 

結論

脳梗塞や心筋梗塞の原因となる動脈硬化の予防は、若いうちから生涯にわたる生活習慣の包括的な管理が基本です。これは、汚れが溜まった水道管を掃除し、流れを良くするのにも似ています。食事、運動、睡眠、精神的な健康、そして禁煙・節酒という主要な生活習慣の柱を日々の努力で改善し、血管の若々しさを保つことが、健康長寿への確かな道となります。

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