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頸動脈エコーでプラーク・狭窄と言われたら|放置NGの危険サインと次の検査・治療を医師が解説

[2025.11.23]

頸動脈エコーでプラーク/狭窄が見つかったとき

 

一般内科医が押さえておきたい評価基準と次の一手

 

0. 全体像:まず何を整理するか?

 

頸動脈エコーで異常を見たら、
頭の中で次の3つをチェックしておくと迷いにくくなります。

 

  1. 症候性か無症候性か

    • 過去6か月以内に TIA/脳梗塞/一過性の片麻痺・失語・一過性黒内障 などがあるか。

  2. 狭窄の程度(NASCET 狭窄率のイメージ)

    • 軽度 <50%

    • 中等度 50–69%

    • 高度 ≥70%

  3. プラークの性状

    • 安定(線維性・高エコー)か

    • 不安定(低エコー・潰瘍・可動性 など)か

この3点で「どこまで内科で診るか・いつ脳外/脳血管内治療へ紹介するか」を決めていきます。

 

1. 頸動脈エコーで見るべきポイント

 

1-1 IMTとプラーク

 

  • IMT(内膜中膜複合体厚)
    一般に 1.1mm 以上の限局性隆起を プラーク と呼びます。

  • びまん性肥厚:全身動脈硬化の指標として評価。

  • 局所隆起(プラーク)
    厚さ・長さ、血管内腔側への張り出し率(短軸での占有率)をチェック。

 

1-2 狭窄率と血流(PSV)

 

NASCET 法(血管造影ベース)の狭窄率を、エコーでは主に PSV(収縮期最大血流速度) で推定します。

  • 軽度狭窄(おおよそ <50%)

    • PSV < 150 cm/s 程度

  • 中等度狭窄(50–69%)

    • PSV ≧ 150 cm/s

  • 高度狭窄(70%以上)

    • PSV ≧ 200–230 cm/s 目安

※実際は施設ごとのカットオフに従うのが安全です。

 

短軸像で内腔の 50% 以上をプラークが占めるようなら、
必ずドプラで流速を測り、狭窄率を推定するクセをつけておくと良いです。

 

1-3 プラークの性状

 

  • 安定プラーク

    • 高エコー、均一、石灰化が主体、表面平滑

  • 不安定プラーク

    • 低エコー/不均一

    • 潰瘍形成

    • 可動性成分あり

    • 脂質コアが大きそうな外観

→ 不安定プラークほど、血栓塞栓を起こしやすく脳梗塞リスクが高いと考え、慎重に扱います。

 

2. 追加で行うべき検査

 

2-1 CTA/MRA

 

  • 目的

    • 狭窄率をより正確に評価

    • 病変の長さ・石灰化の程度

    • 反対側や頭蓋内の血管評価

  • タイミング

    • 中等度以上の狭窄が推定される場合

    • 外科的治療(CEA/CAS)を検討すべきか迷うケース

 

2-2 プラーク画像(MRI など)

 

  • 不安定プラークが疑われる場合に、
    MRI プラークイメージングで脂質コアや潰瘍の有無を評価することがあります。

 

2-3 脳画像・脳血流

 

  • 症候性/高度狭窄例では

    • 頭部 MRI(DWI・MRA)

    • 必要に応じて脳血流 SPECT など
      を行い、虚血の程度や側副血行を評価します。

 

3. すべての患者に共通する「基本治療」

 

狭窄の程度にかかわらず、動脈硬化の全身管理が治療のベースです。

 

3-1 生活習慣・リスクファクターの是正

  • 血圧:ガイドラインに沿ったコントロール

  • 糖尿病:HbA1c 目標設定と薬物調整

  • 脂質異常症:特に LDL 管理(スタチンが基本)

  • 禁煙指導

  • 体重管理・運動療法

 

3-2 薬物治療

  • 抗血小板薬

    • 症候性例:アスピリン or クロピドグレルの単剤が標準。

    • 無症候でも中等度以上の狭窄や不安定プラークがあれば内服を検討。

  • スタチン

    • 脂質異常を伴う患者では必須レベル。

    • プラークの安定化・IMT 進展抑制も期待できます。

 

4. 無症候性の頸動脈狭窄:どう対応する?

 

4-1 軽度~中等度(NASCET <60%程度)

 

  • 原則 内科的治療のみ

  • 抗血小板薬+スタチン+危険因子管理

  • エコーフォロー:

    • 1年に1回程度で十分なことが多い

 

4-2 高度狭窄(NASCET 60–99%)で無症候

 

  • まずは最善の内科治療をきっちり

  • そのうえで、以下の要素があれば 血管外科/脳外科へ相談

 - 狭窄率 70%以上
 - 不安定プラーク(低エコー・潰瘍・可動性)
 - 反対側も高度狭窄/閉塞
 - 高度冠動脈疾患など全身のイベントリスクが高い

  • 外科的治療(CEA/CAS)は

    • 術者の周術期イベント率(脳梗塞・死亡)が十分低い施設

    • 平均余命 5年以上が見込める患者
       で慎重に検討、というイメージで持っておくと良いです。

 

5. 症候性頸動脈狭窄:優先度が一気に上がる

 

症候性の定義

  • 過去 6か月以内

    • 一過性黒内障

    • 片麻痺・失語などの脳梗塞症状

    • TIA
      を起こしている場合。

 

5-1 狭窄率ごとの方針(“紹介レベル”のイメージで)

 

NASCET狭窄率 一般内科医としての基本方針
70–99% できるだけ早く(理想は発症14日以内)CEA/CAS 検討のため専門施設へ紹介
50–69% 多くは 血行再建を検討するグレーゾーン → 脳卒中専門医に紹介して判断を委ねる
<50% 原則は内科治療。再発リスク評価・他の原因(心房細動など)の検索を優先

症候性であれば、
「中等度以上の狭窄があれば、とりあえず専門医に相談」
と覚えておくとシンプルです。

 

6. CEA と CAS:紹介する側が知っておく程度のポイント

 

6-1 CEA(頸動脈内膜剥離術)

 

  • 頸動脈を直接開いてプラークを削り取る手術。

  • エビデンスの最も厚い「標準治療」。

  • 高齢でなければ、症候性高度狭窄では第一選択になりやすい。

 

6-2 CAS(頸動脈ステント留置術)

 

  • 鼠径などからカテーテルでアプローチし、ステントで拡張。

  • 一般には CEA ハイリスク症例 の選択肢:

    • 高齢(80歳以上)

    • 全身麻酔ハイリスク

    • 既往の頸部手術/放射線照射

    • CEA後の再狭窄 など。

一般内科医としては、
「症状あり+中等度~高度狭窄 → 速やかに脳外/血管内治療チームへ」
と覚えておけば十分です。

 

7. フォローアップの間隔の目安

 

無症候性

  • 軽度(<50%):1–2年ごと

  • 中等度(50–69%):6–12か月ごと

  • 高度(≥70%)で内科治療のみ選択:6か月ごと程度

 

術後(CEA/CAS)

  • 多くの施設で

    • 術後 6か月

    • 以後 6~12か月ごと
      にエコーで再狭窄の有無をチェック。

 

8. 一般内科医として「ここまでやればOK」というライン

 

  1. エコー所見を以下の3点で整理できること

    • 軽度・中等度・高度のいずれか

    • プラークが安定か不安定か

    • 両側か片側か

  2. 症候性か無症候性かを必ず確認すること

  3. 全例にリスクファクター管理+抗血小板薬・スタチンをきちんと行うこと

  4. 以下の場合は迷わず専門医へ紹介すること

    • 症候性で 50%以上の狭窄が疑われる

    • 無症候でも高度狭窄+不安定プラーク

    • 急速な進行や新たな神経症状が出てきた

    • CEA/CAS 適応の可否に迷うケース

ここまで出来ていれば、
一次医療として「拾い上げるべき危険病変」をかなりの確率でカバーできていると思います。

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