【ラズベリー腫瘍って何?】ピロリ未感染の胃にできる低悪性度腫瘍をやさしく解説
【ラズベリー様胃腫瘍とは?】ピロリ菌未感染でも見逃せない新しい胃の腫瘍
胃がんのリスクといえば、これまで主にヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)感染が注目されてきました。しかし近年、ピロリ菌に感染していない人でも発生する胃腫瘍が報告され、その代表が**「ラズベリー様腺窩上皮型胃腫瘍(FGA-RA)」**です。
この記事では、見た目も特徴的なラズベリー様腫瘍の正体、内視鏡診断のポイント、治療の必要性についてわかりやすく解説します。
🔍 ラズベリー様腺窩上皮型胃腫瘍とは?
ラズベリー様胃腫瘍は、**腺窩上皮型(foveolar-type)**と呼ばれる胃粘膜由来の良性上皮性腫瘍です。
その名の通り、鮮紅色で顆粒状の小さな隆起がラズベリーに似ていることからこの名称が付きました。特に**H. pylori未感染の健康な胃粘膜(非萎縮性)**に発生することが多く、従来の胃がんとは発生経路が異なります。
胃のどこにできる?
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胃体部・穹窿部(胃の上部)
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萎縮のない胃底腺粘膜に多発
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腫瘍サイズは1〜6mm前後と非常に小さく、5mm以下が多数派
🧪 なぜ見逃せないのか?診断とリスク
✅ 診断のポイント(内視鏡所見)
項目 | 特徴 |
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色調 | 鮮やかな赤色(発赤調) |
表面構造 | 顆粒状または乳頭状(脳回様) |
white zone | 明瞭だが菲薄(薄い)ことが多い |
血管像 | 拡張した異常血管を伴うことが多い |
位置 | 胃の皺襞の間に隠れていることもあり注意が必要 |
NBI(狭帯域光)を用いた拡大観察が非常に有用で、他のポリープや過形成性病変との鑑別にも役立ちます。
✅ 病理・組織像の特徴
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腺窩上皮細胞に類似した上皮内腫瘍
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多くは低異型度腺腫(low-grade dysplasia)
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浸潤性や転移の報告はなし
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MUC5AC陽性、MUC2・CD10陰性など胃型腫瘍の特徴を示す
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Ki-67が高値(細胞増殖活性の指標)
これらの所見から、潜在的な悪性度を持つ良性腫瘍として、日本では「胃がん」と診断されるケースが多いのが現状です。
🧩 他の病変との違いは?|過形成性ポリープとの鑑別ポイント
鑑別項目 | ラズベリー様腫瘍 | 過形成性ポリープ |
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色調 | 鮮やかな発赤 | 淡い・不均一なことも |
表面構造 | 乳頭状・脳回状 | 管状や不規則構造 |
white zone | 明瞭・薄い | 厚くはっきりしている |
demarcation line | 明確に確認できる | 一部で不明瞭なことも |
💡 誰に多いのか?|FGA-RAの臨床像
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中高年男性にやや多く(平均年齢 約57歳)
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H. pylori未感染者の胃腫瘍の約7割を占める
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喫煙・飲酒歴がある人にやや多い傾向
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癌の家族歴や既往歴との関連は乏しい
💊 治療は必要?予後は?
✅ 現時点の治療方針
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腫瘍の大きさが小さいため、内視鏡的切除(EMR)で完治が可能
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転移や浸潤のリスクはほぼないとされる
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ただし、自然経過がまだ完全に解明されていないため切除が基本
✅ 今後の展望
ピロリ菌感染者の減少により、FGA-RAのような未感染胃腫瘍は今後さらに増加が見込まれています。
低悪性度で経過も良好と考えられますが、確定診断とリスク管理のためにも内視鏡医の注意深い観察が不可欠です。
✅ まとめ|H. pylori未感染でも“赤い小さな隆起”には注意
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ラズベリー様腫瘍(FGA-RA)は、ピロリ菌に感染していない胃にできる新たなタイプの腫瘍
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色・形・構造が特徴的で、NBI拡大観察で発見しやすい
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現在のところ転移のない良性腫瘍に近い性質だが、日本ではがんと診断されることも
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内視鏡的切除で治療が完結可能