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食道カンジダ症|原因・発症要因・免疫低下との関係を専門医が解説

[2025.08.10]

 

食道カンジダ症の治療と治療の必要性|症状・診断・再発予防まで解説

 

食道カンジダ症とは

 

食道カンジダ症は、人の皮膚や口腔内などに常在するカンジダ属真菌(カビの一種)が、食道粘膜で異常増殖することで発症する感染症です。
カンジダ菌は湿潤な環境を好むため、食道は繁殖に適した部位といえます。

主な発症要因は免疫機能の低下であり、特に以下のような方で日和見感染としてよく見られます。

  • 高齢者

  • 糖尿病患者

  • HIV感染症患者

  • 悪性腫瘍や血液疾患のある患者

  • 臓器移植後の免疫抑制状態にある患者

また、**ステロイド薬、抗菌薬、H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬(PPI)**などの薬剤使用も誘因となります。さらに、強いストレスや慢性的な疲労による免疫力低下が発症を後押しすることもあります。

 

食道カンジダ症の治療は必要か?

 

無症状・軽症の場合

 

近年、胃カメラ検査で偶然発見された軽度の食道カンジダ症に対して、症状や免疫状態を十分に評価せずに抗真菌薬が処方されるケースが少なくありません。
しかし、国内外のガイドラインや複数の臨床研究では、免疫機能が保たれている人の軽症例(Kodsi分類 Grade I程度)では、多くが自然軽快し、抗真菌薬治療は不要と報告されています。

 

不必要な治療がもたらすデメリット

  • 耐性菌の増加:抗真菌薬の乱用は耐性カンジダ菌の出現を促します。

  • 薬剤副作用:肝機能障害や胃腸症状などの副作用リスクがある。

  • 医療費負担:必要のない薬剤処方により医療コストが増加。

  • 患者心理への影響:軽度で自然に治る可能性が高いにもかかわらず、「重大な病気」との印象を与え不安を増大させる。

 

適切な対応のポイント

  • 無症状かつ免疫正常な軽症例では、経過観察を第一選択とする。

  • 症状がある場合や免疫低下例、重症例に限って治療を行う。

  • 背景疾患や服薬状況を確認し、再発リスクの評価を行った上で方針を決定。

 

治療が必要なケース

 

以下の場合は、放置すると症状悪化や合併症のリスクがあるため、積極的な治療が推奨されます

  • 嚥下痛、嚥下困難、胸の違和感、胸焼け、心窩部痛、吐き気・嘔吐などの症状がある場合

  • Kodsi分類 Grade II以上

  • HIV感染症、糖尿病、がん、血液疾患、臓器移植後、長期ステロイド・抗菌薬・PPI使用中などの高リスク患者

重症化すると真菌血症や播種性カンジダ症に進行することもあり、命に関わる場合があります。

 

診断方法

 

診断の中心は胃内視鏡(胃カメラ)検査です。

  • 白い苔状や酒粕様の白斑が特徴的

  • 必要に応じて生検や培養検査を実施し、菌種や薬剤感受性を特定

  • 血液検査のβ-D-グルカンは診断には有用ではありません

 

食道カンジダ症の治療方法

 

第一選択薬:フルコナゾール(Fluconazole, FLCZ)

  • 商品名(日本):ジフルカン®(ファイザー)、フルコナゾール®(後発品多数)

  • 作用機序:エルゴステロール合成阻害により真菌の細胞膜を破壊

  • 投与量:200〜400mg/日(経口または静注)、14〜21日間
    ※腎機能低下例では投与量調整が必要

  • 対象菌種Candida albicansに高い有効性。C. tropicalis, C. parapsilosisにも有効。ただしC. glabrata, C. kruseiは耐性や低感受性あり

  • 利点

    • 経口・静注いずれも可能で吸収が安定

    • 安全性が比較的高く、副作用も少なめ

    • 血中・組織移行が良好で食道粘膜に十分到達

  • 問題点

    • 長期使用や反復使用で耐性菌出現リスク(特にHIV患者や免疫抑制患者)

    • 肝機能障害の可能性(定期的な肝機能検査が必要)

    • 薬物相互作用(ワルファリン、フェニトイン、シクロスポリンなどのCYP450阻害作用による血中濃度上昇)

    • 妊娠中の高用量長期投与で催奇形性報告あり(短期低用量では影響は少ないとされる)

 

代替薬・特定条件での選択薬

 

1. イトラコナゾール内用液(Itraconazole oral solution, ITCZ)

  • 商品名(日本):イトリゾール®内用液1%

  • 特徴

    • FLCZと同等の治療効果が期待できるが、カプセルは吸収不良のため推奨されない

    • 食直前または酸性環境で吸収が良くなる(制酸薬併用は避ける)

  • 問題点

    • CYP3A4阻害作用が強く、多くの薬と相互作用

    • 心機能抑制のリスク(うっ血性心不全既往例は注意)

 

2. ボリコナゾール(Voriconazole, VRCZ)

  • 商品名:ブイフェンド®

  • 特徴

    • FLCZ耐性のC. glabrataC. kruseiにも有効

    • 経口・静注可能

  • 問題点

    • 視覚異常(色覚変化、光視症)や肝障害の副作用

    • 薬物相互作用が非常に多い(CYP2C19, 2C9, 3A4阻害)

    • 日光過敏症や皮膚がんリスク(長期使用例で報告)

 

3. キャンディン系(Caspofungin, Micafungin, Anidulafungin)

  • 商品名

    • ミカファンギン:ファンガード®

    • カスポファンギン:カンサイダス®

    • アニデュラファンギン:エラキュラス®

  • 特徴

    • 静注専用

    • FLCZ耐性菌や重症例、経口不可例で有効

    • 免疫抑制患者の初期治療にも使用

  • 問題点

    • 経口剤がないため外来継続は困難

    • 高額(FLCZより数倍〜十倍の薬価)

    • 肝障害・アレルギー反応に注意

 

4. アムホテリシンB(Amphotericin B, AMPH-B)/リポソームアムホテリシンB(L-AMB)

  • 商品名

    • アムビゾーム®(リポソーム型)

    • ファンギゾン®(従来型)

  • 特徴

    • 広域抗真菌活性、耐性菌にも有効

    • L-AMBは腎毒性が軽減

  • 問題点

    • 従来型AMPH-Bは強い腎障害・電解質異常が高頻度

    • 点滴投与のみ

    • 高額(特にリポソーム型)

治療のポイント

  • 経口が困難、耐性菌が原因、重症例では点滴治療を優先

  • 原因菌が感受性ありと判明したら経口FLCZへのステップダウン治療

  • 治療期間は症状や免疫状態によって調整

  • 不必要な長期投与は耐性化リスクあり

 

再発防止と生活習慣改善

 

食道カンジダ症は再発しやすいため、免疫力の維持と原因除去が重要です。

  • 医師指示に従い治療を完遂する

  • 糖尿病やHIVなどの基礎疾患を適切に管理

  • 栄養バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動

  • 口腔内清潔の維持(義歯の消毒も含む)

  • 抗菌薬やステロイド薬の不必要な使用を避ける

 

まとめ

 

食道カンジダ症は、免疫力が低下したときに発症しやすく、放置すると重症化や合併症のリスクがある疾患です。
免疫機能が保たれていて症状がなく、軽度(Kodsi分類 Grade I)の場合は、自然に軽快することもあり経過観察が可能です。
しかし、嚥下痛や嚥下困難などの症状がある場合や重症例では、フルコナゾールなどの抗真菌薬による適切な治療が必要になります。

また、再発予防のためには、生活習慣の見直しや基礎疾患の適切な管理が不可欠です。バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレス対策、口腔ケアの徹底、そして不要な薬剤の乱用を避けることが重要です。

もし、のどや胸の違和感、飲み込みにくさなどの症状がある場合は、早めに胃カメラ検査を受け、医師の診断を受けましょう。早期の正確な診断と適切な対応が、健康回復への近道です。

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