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大腸メラノーシス(腸の日焼け)とは?刺激性下剤の使いすぎサインと治し方を専門医が解説|きだ内科クリニック

[2025.11.22]

【腸の日焼け?】大腸メラノーシスとは|刺激性下剤の“使いすぎサイン”を専門医が解説

 

 

**大腸メラノーシス(Melanosis Coli)**は、大腸内視鏡で見つかることの多い所見のひとつで、
刺激性下剤の長期使用と深く関係しています。

見た目が“黒ずみ”のため驚かれることもありますが、
良性で可逆的な変化であり、適切な治療により元に戻すことができます。

 

この記事では、
● 原因
● 仕組み
● 大腸がんとの関係
● 下剤の切り替え
● 治療と予後
を、専門的な情報をわかりやすく整理して解説します。

 

1. 大腸メラノーシスとは?(定義と正体)

 

大腸粘膜が黒色〜茶褐色に見える状態を指します。

 

✔ 色素の正体はメラニンではない

名称に「メラノーシス」とありますが、
沈着しているのは リポフスチン(老廃物) であり、メラニンではありません。

そのため、
偽メラノーシス(Pseudomelanosis coli)
大腸黒皮症
などとも呼ばれます。

 

✔ 良性で可逆的

がんや炎症ではなく、
原因となる刺激性下剤をやめれば 数か月〜1年ほどで改善 することが多い良性の所見です。

 

2. なぜ起こる?(原因とメカニズム)

 

最も多い原因:アントラキノン系刺激性下剤の長期使用

代表例

  • センナ(センノシド®、プルゼニド®、アローゼン®など)

  • 大黄(ダイオウ)配合の漢方薬(防風通聖散、麻子仁丸、大黄甘草湯など)

  • カスカラ

  • アロエ

  • キャンドルブッシュ(ダイエット茶に多い)

 

食品・健康食品にも注意

市販の“便秘茶”“スッキリ茶”などにも含まれることがあります。

どのくらいでできる?

  • 毎日服用 → 4〜6か月程度

  • 断続的でも → 9か月〜1年

 

どのように黒くなる?

  1. 刺激性下剤 → 大腸粘膜細胞を傷つける

  2. 細胞がアポトーシス(細胞死)を起こす

  3. マクロファージ(免疫細胞)が死んだ細胞を貪食

  4. その中に リポフスチンが蓄積
    → 粘膜固有層に沈着して黒く見える

 

3. 症状は?(自覚症状はほぼゼロ)

 

大腸メラノーシスは 痛み・下痢・出血などの症状をほとんど伴いません。
大腸カメラを受けた際に偶然見つかるケースがほとんどです。

 

4. 診断方法(内視鏡で一目瞭然)

 

✔ 大腸内視鏡

  • 粘膜が ヒョウ柄・蛇の皮(スネークスキン)状 に黒褐色を呈する

  • 正常粘膜のピンク色とコントラストが強い

 

✔ 生検

顕微鏡では、
リポフスチンを含むマクロファージが粘膜固有層に沈着しているのが確認できます。

 

5. 大腸メラノーシスは危険なの?(大腸がん・ポリープとの関係)

 

★ 大腸がんになるのか?

 

直接的な発がん性は確認されていません。
大腸メラノーシスそのものががんに変化するわけではありません。

ただし、
刺激性下剤の長期使用は便秘の悪化や腸機能低下を招くため、
別の健康リスクを増やす可能性があります。

 

★ むしろポリープは見つかりやすくなる?

 

黒く染まった周囲の粘膜に対し、
ポリープは色素沈着がない=白く目立つため、
「コントラスト効果」で発見されやすいという報告があります。

 

6. 刺激性下剤の長期使用が招く“本当の問題”

 

メラノーシスそのものより重要なのは、
刺激性下剤の慢性使用が大腸の運動を弱らせるという点です。

 

  • 大腸の神経細胞が疲弊

  • 大腸が“伸びたゴムホース”のようになり弛緩

  • 便が出にくくなり、
    → 下剤依存(下剤をやめられない体質)
    に陥ることがあります。

これは「重症便秘」へ進む代表的な悪循環です。

 

7. 治療(最も大切なのは下剤の見直し)

 

✔ 根本治療:刺激性下剤を中止または減量

アントラキノン系下剤は

  • 一時的なレスキュー薬(頓用)
    としては有用ですが、
    毎日飲む薬ではありません。

✔ 非刺激性下剤への切り替え

以下は大腸メラノーシスを起こさない便秘薬です:

  • 酸化マグネシウム(腸をやわらかくする)

  • ルビプロストン(アミティーザ®)

  • リナクロチド(リンゼス®)

  • エロビキシバット(グーフィス®)

  • ラクツロース

 

※便秘のタイプによって適切な薬は異なるため、医師の判断が必要です。

 

8. 予後(治る?)

 

治ります。
刺激性下剤を止めれば、
リポフスチンは徐々に排除され、
数か月〜1年ほどで粘膜は元のピンク色に戻ります。

 

腸の動きが改善する方も多く、
長期的な便秘治療の“リセット”にもなります。

 

9. きだ内科クリニックからのアドバイス

 

大腸メラノーシスは、
からだからの 「刺激性下剤を使いすぎています」 という警告です。

  • 市販薬を長く使っている

  • 漢方薬(大黄入り)を続けている

  • ダイエット茶で毎日スッキリしている

  • 下剤がないと出なくなってきた

こんな方は便秘治療の見直しのサインです。

 

当院では、
● 大腸カメラでの精密評価
● 便秘タイプ診断
● 下剤の適正化
● 食事・腸活アドバイス
を総合的に行っています。

気になる方はお気軽にご相談ください。

 

執筆・監修:山形県米沢市 きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)

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