大腸メラノーシス(腸の日焼け)とは?刺激性下剤の使いすぎサインと治し方を専門医が解説|きだ内科クリニック
【腸の日焼け?】大腸メラノーシスとは|刺激性下剤の“使いすぎサイン”を専門医が解説
**大腸メラノーシス(Melanosis Coli)**は、大腸内視鏡で見つかることの多い所見のひとつで、
刺激性下剤の長期使用と深く関係しています。
見た目が“黒ずみ”のため驚かれることもありますが、
良性で可逆的な変化であり、適切な治療により元に戻すことができます。
この記事では、
● 原因
● 仕組み
● 大腸がんとの関係
● 下剤の切り替え
● 治療と予後
を、専門的な情報をわかりやすく整理して解説します。
1. 大腸メラノーシスとは?(定義と正体)
大腸粘膜が黒色〜茶褐色に見える状態を指します。
✔ 色素の正体はメラニンではない
名称に「メラノーシス」とありますが、
沈着しているのは リポフスチン(老廃物) であり、メラニンではありません。
そのため、
偽メラノーシス(Pseudomelanosis coli)
大腸黒皮症
などとも呼ばれます。
✔ 良性で可逆的
がんや炎症ではなく、
原因となる刺激性下剤をやめれば 数か月〜1年ほどで改善 することが多い良性の所見です。
2. なぜ起こる?(原因とメカニズム)
最も多い原因:アントラキノン系刺激性下剤の長期使用
代表例
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センナ(センノシド®、プルゼニド®、アローゼン®など)
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大黄(ダイオウ)配合の漢方薬(防風通聖散、麻子仁丸、大黄甘草湯など)
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カスカラ
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アロエ
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キャンドルブッシュ(ダイエット茶に多い)
食品・健康食品にも注意
市販の“便秘茶”“スッキリ茶”などにも含まれることがあります。
どのくらいでできる?
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毎日服用 → 4〜6か月程度
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断続的でも → 9か月〜1年
どのように黒くなる?
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刺激性下剤 → 大腸粘膜細胞を傷つける
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細胞がアポトーシス(細胞死)を起こす
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マクロファージ(免疫細胞)が死んだ細胞を貪食
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その中に リポフスチンが蓄積
→ 粘膜固有層に沈着して黒く見える
3. 症状は?(自覚症状はほぼゼロ)
大腸メラノーシスは 痛み・下痢・出血などの症状をほとんど伴いません。
大腸カメラを受けた際に偶然見つかるケースがほとんどです。
4. 診断方法(内視鏡で一目瞭然)
✔ 大腸内視鏡
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粘膜が ヒョウ柄・蛇の皮(スネークスキン)状 に黒褐色を呈する
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正常粘膜のピンク色とコントラストが強い
✔ 生検
顕微鏡では、
リポフスチンを含むマクロファージが粘膜固有層に沈着しているのが確認できます。
5. 大腸メラノーシスは危険なの?(大腸がん・ポリープとの関係)
★ 大腸がんになるのか?
➡ 直接的な発がん性は確認されていません。
大腸メラノーシスそのものががんに変化するわけではありません。
ただし、
刺激性下剤の長期使用は便秘の悪化や腸機能低下を招くため、
別の健康リスクを増やす可能性があります。
★ むしろポリープは見つかりやすくなる?
黒く染まった周囲の粘膜に対し、
ポリープは色素沈着がない=白く目立つため、
「コントラスト効果」で発見されやすいという報告があります。
6. 刺激性下剤の長期使用が招く“本当の問題”
メラノーシスそのものより重要なのは、
刺激性下剤の慢性使用が大腸の運動を弱らせるという点です。
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大腸の神経細胞が疲弊
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大腸が“伸びたゴムホース”のようになり弛緩
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便が出にくくなり、
→ 下剤依存(下剤をやめられない体質)
に陥ることがあります。
これは「重症便秘」へ進む代表的な悪循環です。
7. 治療(最も大切なのは下剤の見直し)
✔ 根本治療:刺激性下剤を中止または減量
アントラキノン系下剤は
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一時的なレスキュー薬(頓用)
としては有用ですが、
毎日飲む薬ではありません。
✔ 非刺激性下剤への切り替え
以下は大腸メラノーシスを起こさない便秘薬です:
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酸化マグネシウム(腸をやわらかくする)
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ルビプロストン(アミティーザ®)
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リナクロチド(リンゼス®)
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エロビキシバット(グーフィス®)
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ラクツロース
※便秘のタイプによって適切な薬は異なるため、医師の判断が必要です。
8. 予後(治る?)
➡ 治ります。
刺激性下剤を止めれば、
リポフスチンは徐々に排除され、
数か月〜1年ほどで粘膜は元のピンク色に戻ります。
腸の動きが改善する方も多く、
長期的な便秘治療の“リセット”にもなります。
9. きだ内科クリニックからのアドバイス
大腸メラノーシスは、
からだからの 「刺激性下剤を使いすぎています」 という警告です。
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市販薬を長く使っている
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漢方薬(大黄入り)を続けている
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ダイエット茶で毎日スッキリしている
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下剤がないと出なくなってきた
こんな方は便秘治療の見直しのサインです。
当院では、
● 大腸カメラでの精密評価
● 便秘タイプ診断
● 下剤の適正化
● 食事・腸活アドバイス
を総合的に行っています。
気になる方はお気軽にご相談ください。
執筆・監修:山形県米沢市 きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)
