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眼精疲労が自律神経と腸を壊す?スマホ時代の「脳腸相関」と整え方【内科医解説】

[2025.11.22]

「眼精疲労 → 自律神経の乱れ → 腸の不調」がつながる理由

 

 

― 脳腸相関からみた目と腸の深い関係 ―

近年、眼精疲労(目の疲れ)と自律神経の乱れ、さらに腸の不調が連鎖して起こることが注目されています。
目と自律神経、そして脳と腸が密接に影響し合う仕組みは、**「脳腸相関」**という概念で説明されます。

ここでは、
**「眼精疲労 → 自律神経の乱れ → 腸の悪化」**という流れを、わかりやすく解説します。

 

1. 眼精疲労と自律神経の乱れの関係

 

眼精疲労とは、単なる「目の疲れ」ではなく、
休息や睡眠をとってもなかなか回復しない、病的な目の疲れを指します。

 

目の症状だけでなく、

  • 頭痛

  • 首や肩こり

  • めまい

  • 吐き気

  • 全身のだるさ

といった 全身の不調を伴いやすいのが特徴です。
その背景には、しばしば 自律神経の乱れ が関わっています。

 

■ 毛様体筋の緊張と交感神経の活性化

 

ピント調節は、水晶体の厚さを変える毛様体筋の働きによって行われます。
この毛様体筋は、意識でコントロールできない自律神経によって調整されています。

  • パソコンやスマートフォン

  • タブレット

  • 細かい作業(デスクワーク・勉強など)

といった「近くを見る作業」が長時間続くと、毛様体筋はずっと収縮したまま=緊張状態が続いたままになります。

この状態が続くと、

  • 活動モードの交感神経が優位になりやすい

  • 休むモードの副交感神経が働きにくくなる

結果として、自律神経のバランスが崩れた状態が慢性的に続くようになります。

 

■ 自律神経の乱れが目に与える影響

 

交感神経が過度に優位になると、目そのものにも様々な影響が出ます。

  • 涙が減る(ドライアイ)
    交感神経が優位なときは、涙の分泌が抑えられます。
    ストレスや緊張状態が続くことが、ドライアイの一因と考えられています。

  • 瞳孔が開く
    交感神経は瞳孔を開きます。
    ブルーライトを長時間浴び続けることも交感神経を刺激し、
    目の疲労感やピントの合わせにくさにつながります。

  • 全身症状の引き金に
    慢性的な眼精疲労は、目の周囲の筋肉だけでなく、首・肩の筋肉の緊張も強めます。
    その結果、

    • 首・肩こり

    • 頭痛

    • めまい

    • 吐き気

    • 全身倦怠感
      など、全身の不調としてあらわれることがあります。

 

2. 自律神経の乱れと「腸の悪化」の関係

 

眼精疲労から始まった自律神経の乱れ(交感神経優位)は、
**「脳腸相関」**を介して腸の働きにも大きな影響を与えます。

 

■ 腸の動きは自律神経がコントロールしている

 

腸の

  • 蠕動(ぜんどう)運動

  • 消化液の分泌

  • 血流

は、すべて自律神経によってコントロールされています。

  • 副交感神経が優位
    腸の動きは活発になり、消化・吸収がスムーズに進む

  • 交感神経が優位
    腸の動きが抑えられ、消化機能が落ちる

眼精疲労やストレスで交感神経優位の状態が続くと、

  • 腸の動きが鈍る

  • 消化機能が低下する

  • 腸の不調が出やすくなる

といった影響が表れます。

 

■ 代表的な腸のトラブル

 

  • 消化管の機能異常
    ストレスや交感神経の過剰な活性化により、
    腸の動きが乱れ、便秘や下痢を繰り返すことがあります。

  • 過敏性腸症候群(IBS)
    腹痛やお腹の張り、便通異常(下痢・便秘・その両方)が続く機能性腸疾患です。
    自律神経の乱れやストレスが、IBSの発症・悪化に関わるとされています。

  • 腸内細菌バランスの乱れ
    ストレスや自律神経の乱れは、腸内フローラ(腸内細菌叢)のバランスを崩し、
    悪玉菌が増えやすい環境をつくる可能性があります。
    これがさらに便通異常やお腹の張り、全身の不調につながることがあります。

 

3. 腸内環境の悪化が、再び「目」にも跳ね返る

 

腸内環境が悪くなると、単に「お腹の調子が悪い」だけでなく、
全身の炎症や栄養状態、メンタルの不調にもつながり、それが再び目にも影響しうると考えられています。

 

■ 栄養吸収の低下

 

腸内環境が乱れると、

  • ルテイン

  • ビタミンA

  • 亜鉛

  • そのほかの抗酸化物質

など、目の健康を支える栄養素の吸収効率が落ちてしまう可能性があります。
その結果、目の乾きや疲れ、見えにくさなどの症状が悪化しやすくなります。

 

■ 全身の慢性炎症リスクの増加

 

腸のバリア機能が弱くなると、
腸の中にある有害物質が体内に漏れ出す(リーキーガットと呼ばれる状態)ことがあり、
これが全身の慢性的な炎症につながる可能性が指摘されています。

この慢性炎症は、

  • 血管や神経

  • 目の組織

にも悪影響を与えると考えられており、
将来的な目の病気リスクとの関連も検討されています。

 

■ 目の病気との関連が報告されているもの

 

腸内環境の乱れは、

  • ドライアイ

  • ぶどう膜炎

  • 加齢黄斑変性症

  • 緑内障

などの目の病気との関連が報告されているものもあり、
「腸と目」をつなぐ**“腸‐眼軸(eye–gut axis)”**という概念も提唱されています。

 

■ セロトニンとメンタル・自律神経への影響

 

腸は**「第二の脳」**とも呼ばれ、
セロトニン(幸せホルモン)の約90%が腸でつくられているとされています。

腸内環境が悪化すると、

  • セロトニン分泌の低下

  • 不安・イライラ・抑うつ気分

  • 自律神経のさらなる乱れ

といったメンタル面の不調が重なり、
結果として「目の疲れ」「頭が重い」「やる気が出ない」といった症状が強くなることがあります。

 

4. 「目 → 自律神経 → 腸」の負のスパイラルを断ち切るために

 

このように、長時間の視作業やデジタル機器の使いすぎによる眼精疲労は、

  1. 自律神経バランスの乱れ

  2. 腸の機能低下・腸内環境の悪化

  3. 栄養状態・メンタル・全身炎症の悪化

  4. さらに目や全身の不調が悪化

という負のスパイラルを形成する可能性があります。

 

5. まとめ(イメージ)

 

この連関は、たとえるなら…

カメラのシャッター(=目)を長時間開けっぱなしで酷使した結果、
それを動かしている電力システム(=自律神経)が過熱・暴走し、
その影響が家の土台(=腸)にひびを入れ、
最終的に家全体(=全身)がグラグラと不安定になる

ようなイメージです。

目という一見「局所」の疲れが、自律神経を介して腸や全身の不調につながる——
そのことを知っておくだけでも、日常生活の見直し方が変わってきます。

 

気になる症状が続くときは

 

  • 目の疲れが取れない

  • お腹の調子がずっと悪い

  • なんとなく体も心もだるい

このような状態が続くときは、
「年のせい」「仕事のせい」と決めつけず、一度ご相談いただくことをおすすめします。

きだ内科クリニックでは、

  • 自律神経の乱れを背景とした不調

  • 腸の不調(便秘・下痢・お腹の張りなど)

  • 生活習慣やストレスと関連した症状

について、総合的な視点から診察・検査・生活指導を行っています。
お困りの症状があれば、お気軽にご相談ください。

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